知識をもっと重視しなくては | 偕楽園血圧日記

知識をもっと重視しなくては

 夜中からずっと雨だったので朝の気温は下がらなかったのだが、昼間の気温も上がらず。
 おかげで具合もよろしくないので、今日は簡単に。


 まずは「本日の『10万ボルトだ!』」から。

 数年前に「サンマの刺身にアニサキスが!」というニュースがあった。
 それからスーパーではサンマの刺身が売られなくなってしまってさみしい。
 今年はサンマ自体がほとんど売られていない。いつもならトロ箱で売っているようなものがトレー売りで、型も小さく細い。
 しばらく前に網走に押し寄せているというものがあったから、季節がずれているのかとも思うが……。

 熊本大学が、

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 熊本大、「アニサキス殺虫装置」普及でクラファン開始 “刺身の天敵”、1億ワット電流で瞬殺

 熊本大学が“刺身の天敵”アニサキスを除去する「アニサキス殺虫装置」の普及に向け、クラウドファンディングを始めた。1口3000円から寄付を募っており、最終的に1600万円の資金獲得を目指す。
 アニサキスはサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生する寄生虫の1種。食中毒を引き起こす一因になっていることから、刺身など生食用食品にとって天敵となっている。
 アニサキスを原因とする食中毒が発生した場合、各保健所はその店舗に対し、食品衛生法に基づき営業停止処分を下すことができる。一方で食中毒を引き起こした水産加工業者の中には卸先との取引を停止になり、月間取引額が5000万円減少したケースもあるなど、アニサキス対策は喫緊の課題ともなっている。
 現在、多くの事業者は食中毒防止のため、直径1mm長さ2cmほどの小さなアニサキスを手作業で取り除いているが、加熱や冷凍以外に有効な手段がなく、手間がかかることから、将来的に生の刺身の提供ができなくなる可能性がある。

 こうした背景から熊本大学は水産加工メーカーのジャパンシーフーズ(福岡市)や国立感染症研究所の研究員らとともに、アジに1億ワット(100MW)とされる巨大電力「パルスパワー」を当て、殺虫する世界初のシステムを開発した。
 ただ、高価な装置のため、社会実装へのハードルが高いのが実情だ。クラファン実施で、商品化に向けたサプライヤーとなるメーカーを探し、サバやサンマ、サーモンなど他の魚類での活用も模索する。
 熊本大産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授は「クラウドファンディングでの賛同によって社会実装を加速させることができる。将来的にはアニサキス以外の魚介類寄生虫の殺虫や、魚介類以外の寄生虫にも本技術が活用できないか模索していくことを計画している。この技術の発展が日本のさまざまな生食文化の未来を救うと信じている」としている。
 クラファンは12月26日午後11時まで募集中。記事公開時点(11月16日午後3時)では総額662万8000円の寄付が集まっている。
 ITmedia ビジネスオンライン 11/16(木) 15:04

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 こんな技術を開発するからとクラウドファンディングを募集しているというニュースがあった。

 分野を限ったニュースなので大手マスコミよりも「専門知識」のある人間が書いていると思いたいのだが……「1億ワット電流で瞬殺」ってなんだ?
 ワットは仕事率の単位で、電流の単位はA(アンペア)である。
 雷で最大50万アンペアの電流が流れることがあるという。それが直撃した物体を思い起こせば……一億アンペアもの電流が流れたら、それはアニサキスなど生きてはいないだろうし、刺身がそのまま残っているはずもない。

 記事の中では「パルスパワー」とあるが、要は瞬間的に高電圧をかけるということなのだろうか。
 人間ならば数万ボルトの電位差でもかなりのショックを受けるが、アニサキスのような単純な生物はその値がかなり高くなる。そういう説明を受けたのに、記者が勝手に「一億ワット!」と思い込んでしまったとか?

 まあ、高電圧でも筋繊維が収縮したりといった現象は起きるので、刺身の食感に影響が出るかもしれない。
 だからそういう影響が出ないほどの短時間を見極めようとしているのだろうが、研究の結果「やはり今までの方法の方が良い」となっても、それが研究というものだから、クラファンに参加した人は怒らないで欲しいな。


 さて、「専門知識」といえば、

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 震災と原発事故「確実に風化」 学生の正答、年々低下 福島大調査


(写真、毎日新聞より。処理水の海洋放出が進められている東京電力福島第1原発=福島県で2023年10月5日午後1時48分、本社ヘリから三浦研吾氏撮影)

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に関する若い世代の知識が薄れつつある――。福島大教育推進機構の前川直哉准教授らの研究チームが、そんな状況をうかがわせる調査結果をまとめた。研究チームは「震災と原発事故の風化が確実に進んでいる」と危機感を募らせている。【尾崎修二】

◇同一の設問で「知識チェック」
 調査のもとになったのは、一般教養を学ぶ福島大の授業「ふくしま未来学入門Ⅰ」の初回で毎年実施される「知識チェック」。2019、21、22年度は同一の設問で実施された。全20問に「知らない・分からない」を含む5択の形で、3カ年で計968人(1年生が8割強)が回答した。20点満点の平均得点は19年度が9・5点、21年度が8・6点、22年度が8・1点と減少傾向が見られた。
 設問ごとの正答率を見ると、20問中10問で年々低下した。第1原発でつくられた電気の供給先について「すべて首都圏など東京電力管内に供給されていた」との正答を選んだ割合は、19年度の49・6%から22年度が33・9%に落ちた。
 19年度まで実施された県産米の全量全袋検査を巡っては、同年度に検査された約950万袋のうち基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された割合を尋ねた。正答の「0袋(0%)」を選んだ割合は19年度の45・7%から22年度には31・3%に落ちた。

 一方、
「シーベルト」の意味(=放射線の人体への影響量)や、「セシウム134の半減期」(=約2年)など4問で正答率が年々上昇した。高校までの放射線教育の効果や、震災10年の節目で増えた報道量が起因した可能性があるという。
 3カ年の出身地別の平均得点は、県出身9・4点に対し、福島以外の東北7・8点、東北以外8・1点と県内外で差があった。国外は18人と少数ながら平均8・7点だった。

◇「学校教育や社会で伝承必要」
 前川准教授は「福島が経験した被害についての設問で基礎的な知識の不足がみられた。『教訓の伝承なき復興』としないためにも、学校教育や社会全体で知識を伝えていく必要がある」と指摘する。今年度も知識チェックは実施しており、来年度以降も継続する予定だ。
 知識チェックの分析は、前川准教授が、岩手県立大の呉(う)書雅(しゅうや)准教授(元福島大特任准教授)、東北大の西村君平特任講師と実施した。共同論文は今月発行の福島大地域創造支援センターの紀要「福島大学 地域創造」に掲載する。
 毎日新聞 11/8(水) 10:30

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「福島大の学生の間で震災が風化している」という記事を毎日新聞が書いている。

 だが記事を見ると、正答率が悪かった設問は「東電の供給先は」という政治的文脈で使われることの多いもので、一方放射線に関する知識などはきちんとした理解が進んでいる結果になっている。
 彼らが「風化」と危惧するのは、震災の政治利用なのだろうか?
 そんなものなど、どんどん風化すればよい

 いつまでも福島を「反原発のアイコン」として使う。そのために「フクシマは穢れた地」であるかのようなレッテルを貼り続ける活動など、さっさと消え去った方が世のためだ。