科学議論はまず「知る」こと | 偕楽園血圧日記

科学議論はまず「知る」こと

 昼前のNHKの番組で、昔の白黒フィルムにAIを使って着色したものを紹介する番組の宣伝をやっていたのだが、その姿勢に呆れた。
 出てくる関係者が「正確な色がどうの」「間違った色が入ると史料の正確性がどうの」といえば、スタジオのキャスターは「色がついて過去の出来事がまるで現代のことのようにリアルになんたら」とはしゃぐ。
 馬鹿をいってはいけない。
 過去の映像に自分たちの解釈で色を付けた時点で、それはもう「史料」ではなく「作品」になっているではないか。なにを「自分たちは科学的に歴史を検証しているのだ」みたいな顔をしているのだ?

 NHKではBSでやっている「コスミック・フロント」という番組でも、本来宇宙や天体研究の最前線を紹介・解説するはずのものを変なドラマにしてしまうようなことをやっているし。
「学術」に対する姿勢というところで非常に残念な局に成り下がってしまっている。
 これでは視聴者に正しい科学知識も伝わらない。
 NHKには科学班の早急な立て直しを「受信契約者」として望みたい。今の同局の科学系番組からは、「科学のセンス」が感じられない。それどころか「数学が嫌いだから文系」といっているような人間の考え付きそうなことがボロボロ出てくる。


 さて、

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 核のごみ第1段階「文献調査」、北海道寿都町が応募 神恵内村も受け入れ表明

 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の建設立地を巡り、北海道寿都(すっつ)町の片岡春雄町長は9日、処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO、東京)を訪れ、選定手続きの第1段階に当たる文献調査への応募書を提出した。応募は2007年の高知県東洋町(後に撤回)以来13年ぶりで、17年に国が建設適地を示した「科学的特性マップ」の公表後初。神恵内(かもえない)村の高橋昌幸村長も同日、文献調査受け入れを正式表明した。
 片岡町長は9日午前、町内の調査対象エリアなどを記した応募書をNUMOの近藤駿介理事長に手渡し、「今日は入学手続きに来た。これから勉強をスタートする。ご指導いただきたい」と述べた。これに対し、近藤理事長は「勇気ある取り組みに心から敬意を表したい」と応じた。
 その後、片岡町長は経済産業省で梶山弘志経産相と会談し、応募を報告。梶山経産相は「ご理解いただくための最大限の努力をしたい」と歓迎姿勢を示した。片岡町長は会談後、年内にも周辺自治体への説明を実施する方針を明らかにし、文献調査受け入れに伴う最大20億円の交付金の使い道については「構想はあるが、まずは勉強が大事で、二の次」と明言しなかった。

 神恵内村では9日、経産省の小沢典明・首席エネルギー・地域政策統括調整官が文献調査の実施を申し入れ、高橋村長が受諾した。高橋村長は受諾後の記者会見で「国の政策に地方自治体として協力できることがあれば協力するというスタンス。文献調査の中で理解を深めていけたら」と述べた。小沢統括調整官は申し入れ後、「村議会で誘致の請願が採択され一定の理解が広がっていると>考え申し入れた。手を挙げる方式は自治体に負担が重いので、国が主体的に申し入れた」と説明した。
 今後の手続きでは、NUMOが2町村での文献調査に関する事業計画の認可を国に申請し、認可を得た上で調査に移行する。【荒木涼子、源馬のぞみ】
 毎日新聞 10/9(金) 20:09

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 北海道の二つの市町村が、いわゆる「核ゴミ」の地層処分場受け入れのための調査第一段階に名乗りを上げた。

 これを受けて「左側」マスメディアが大騒ぎ。

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 文献調査、交付金のうまみ 核ごみ立地2町村名乗り 阻めなかった北海道

 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場の建設立地を巡り、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が8日、選定手続きの第1段階となる文献調査の受け入れを表明した。国は来年前半にも2町村での調査作業を開始したい考えだが、第2段階の概要調査、第3段階の精密調査を経て最終処分場の建設地を決定するまでには約20年を要する。2町村が文献調査を経て概要調査に進むのか、最終的に建設地になるのかどうかは現時点で見通せない。
(2214文字略)
 経産省のある幹部は「今回は適地いかんではなく、住民と議論する機会が得られたのが大きい。(2町村内には反対意見もあり)一時は切羽詰まっていたので本当によかった」と明かす。
 原発では、二つの自治体にまたいで建設された所もある。伴氏は「隣接の市町村にまたがることがありえる」という。その場合、NUMOの担当者は一般論とした上で「原発同様に、またがる市>町村が立地自治体となるので、建設には両自治体とも調査をする必要がある」と話した。【荒木涼子】
 毎日新聞 2020/10/08 19:46


 核のごみ問題で過疎の町に「最大20億円」財源の魅力 識者「札束で頬を叩くのはやめるべき」〈AERA〉


(写真、AERAより。核のごみの最終処分場の応募検討を表明した、北海道寿都町。カキの養殖やホッケ漁などの漁業が基幹産業だ(寿都町提供))

 風光明媚な北海道の小さな町と村が、「核のごみ」で大きく揺れている。8日、北海道寿都町は国の選定プロセスの第1段階「文献調査」に応募すると発表した。だが、その元となる使用済み核燃料も、すでに「満杯」に近づいている。 AERA 2020年10月12日号で掲載された記事を紹介する。
(後略)
 AERA dot. 10/9(金) 8:00

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「札束で顔をはたくやり方だ!」と連呼している。

 確かに今回、寿都町の町長は交付金のことを口にしているが、ではこれが「ただ必要だと私が判断したから」という首長が出てきたら、彼らはその判断を尊重して「話し合いは大切だ」などといってくれるだろうか?

 とんでもない。

 やはり、

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 核のゴミ処分場「調査」応募控えた町長宅に火炎瓶か…網戸焦げる、70代男から事情聞く

 8日午前1時半頃、北海道寿都(すっつ)町新栄町の片岡春雄町長(71)宅で、窓ガラスが割れて網戸が焦げていると町長から寿都署に通報があった。けが人はいなかった。同署は現住建造物等放火未遂容疑で町内の70歳代の男から事情を聞いている。
 片岡町長は、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定を巡り、8日にも立地調査の第1段階にあたる「文献調査」への応募を表明する予定。捜査関係者によると、男は「表明をじゃましたかった」と話しているという。
 片岡町長は「火炎瓶のようなものが投げ込まれ、すぐに水をかけた。(選定を巡る議論を)冷静に受け止めてほしい」などと話した。
 読売新聞オンライン 10/8(木) 7:37

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 こういう輩は出てくるだろうし、メディアもこういう行為を「大問題」だとして連日評論することをしないのは見えている。

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 迫られた苦渋の選択 核ごみ調査、地元に亀裂 役場に中傷も・北海道2町村

 長く停滞していた高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分地選定をめぐり、北海道寿都町が8日、文献調査への応募を表明した。
 同じ道内の神恵内村も9日に応募を決定する。いずれも背景にあるのは、急速に進む過疎化への危機感だ。人口が減少し産業が衰退する中、最大20億円の交付金への期待もあり苦渋の選択を迫られた。ただ、反対派住民は反発を強めており、それぞれの地域内に深い亀裂を残した。
(後略)
 時事通信 10/9(金) 7:11


 核ごみ処分場、反対の声届かず 住民投票「議会に失礼」

 国の「核のごみ(原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分場を巡り、北海道神恵内村議会の委員会が2日、国の選定プロセスへの応募検討を求める請願を採択した。9月11日に村商工会の請願が明らかになってわずか3週間余り。「住民の理解を得た」と繰り返す村議や村長の下で、応募に向けた動きが着々と進む。(原田達矢、佐久間泰雄、伊沢健司、斎藤徹)
 請願を審査する村議会総務経済委員会は、2日午前10時から始まった。請願提出直後の先月16日の同委では、応募に慎重な村議らの声を受けて継続審査になっており、この日は「仕切り直し」だった。
 委員会は8人の村議全員がメンバーだ。請願を出した商工会関係者が4人を占め、明確に慎重派とされたのは2人。採決されれば、請願が採択されるのは確実だった。
 この日の委員会では、議会の求めで住民説明会を行った国などの報告の後、審査に入った。関係者によると、賛成派の議員からは「(応募を検討する選定プロセスの第1段階の)文献調査では、異論を唱える有識者の意見も十分に反映させる」「文献調査中も村民への十分な説明と情報提供を国に求める」など、まるで応募が前提となっているような意見が相次いだという。
 反対派の議員からは「拙速ではないか」「調査に入る前に時間をかけ住民の不安を解消していくべきでは」などの意見が出た。だが午前11時40分ごろ、本間俊介委員長が「意見は出尽くした」として、「もうそろそろ採決してよいか」と提案。委員長を除く挙手による採決で、賛成5、反対2と賛成多数で採択された。
(後略)
 朝日新聞デジタル 10/3(土) 6:00

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地元に亀裂」? 「反対の声届かず」?

 こういう話があるとどこからかやってきて住民分断を作るのは、いつもこの火炎瓶を投げた人間の側の勢力ではないか。
「賛成の声」が表に出てこないような報道ばかりをしているのは、いったい誰であろうか、朝日新聞さん。
 今回北海道の2町村が声を上げてくれたことは、まさに毎日新聞の記事にある「今回は適地いかんではなく、住民と議論する機会が得られたのが大きい」というところで意義がある。今まではこういう勢力が「話すこと」から妨害し、潰してきたのだから。

 おかげでこれが「どういうことをするものなのか」が広まらないのだ。

 この地層処分についてはまず議論の大前提になる「知識」が広まっておらず、いまだに「犬が拾ってきた靴を穴掘って埋める」程度のものだと思い込み、そのレベルで反対している者が大勢いる。
 だから「ならばお前の家の庭に埋めてみろ」といえば相手を封じられると考える浅はかな者が後を絶たないのだ。
 実際のところ地下300メートル以深まで穴を掘るにはそれなりの広さの土地がなくてはならないし、そんなことを都市のど真ん中とか住宅地でできるはずがない。(NUMO 「Q.なぜ地層処分なのですか?」)に書かれていることぐらいは、議論する人の基礎知識にならなくては。
 アエラは「きれいな風景」の写真を貼って「まるでこの風景が汚される」かのようなイメージを作ろうとしているが、その深さのものが地表に露出するほどの地殻大変動が起こったら、核以前に「こんな風景」などなくなる。
「10万年監視だー人類の責務がー」とかいう者もいるが、そもそもその「10万年」というのが大げさな話だということは別としても、地層処分の利点はその「監視」とやらをしなくてもいいというところにある。
 テレスドンなりギラドラスなりでもいれば別だが、そんな深さまで穴を掘って地下のものを持ち出してくるような生物などこの地球にはいないし、将来人類が滅んだ後にそういうことができるものが現れたとしても、科学技術を発展させた存在ならば「そこに強い放射線源がある」ということを計ることができることだろう。

 そういうことを皆がきちんと知ったうえで、「地層処分を認めるか否か」という話ができるようにならなくては。
「金に目がくらんだ」と罵ったり、火炎瓶という暴力で黙らせようとしたりするようなことをしていても、事態は改善しないのだ。

 そのための知識を広める責務を負っているのが「公共放送」というものなのだが……冒頭書いたように今のNHKはなぁ(ため息)。


 本日の落書き。

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 バンクシーのメッセージ感じて 大阪で展覧会が開幕


(写真、朝日新聞デジタルより。バンクシーのスタジオを再現したインスタレーション「アーティスト・スタジオ」=2020年10月8日、大阪市住之江区、浅沼愛氏撮影)

 オークションで落札された自身の絵を額に仕掛けたシュレッダーで細断したり、地下鉄の車内にマスク姿のネズミを描いたり。何かと注目を集める正体不明のアーティスト、バンクシーの活動を紹介する「バンクシー展 天才か反逆者か」が9日、大阪市住之江区の「大阪南港ATC Gallery」で始まった。来年1月17日まで。
 コレクターから集めた70点以上の作品を、「政治」「抗議」「消費」などのテーマごとに展示。これまで世界6都市で開催し、100万人以上を動員したという。バンクシー作品は真贋(しんがん)が論争になることが多いが、主催者側は「認証機関から本物と保障されたものだ」としている。
 紛争が続くパレスチナ自治区ベツレヘムの建物に、火炎瓶の代わりに花束を投げようとする男性を描いた「ラブ・イズ・イン・ジ・エア」。国会議員の経費乱用問題で国民の不満が高まる中、英国の議事堂に集う議員をサルの姿で表現した「モンキー・パーラメント」といった有名作品も展示されている。
 キュレーター兼プロデューサーのアレクサンダー・ナチケビアさんは「バンクシーは言葉や職業を超え、明確でタイムリーなメッセージを伝えてくれる偉大な芸術家。自分の目で見て感じて欲しい」と話している。(浅沼愛)
 朝日新聞デジタル 10/9(金) 16:00

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「バンクシーのメッセージ」ねぇ。

 私には「ただのいきった落書き野郎」としか思えないけど。「なにかに反抗する俺かっこいー」という。
 その基本的な価値観がまた「白人の思想」丸出しになっているし。
「パレスチナに花束」? そもそもその問題を作りだした元凶はどこの国だと思っているのだ?

 あれを見ているぐらいならば、日本各地の路傍にある道祖神の御顔で見見ていた方が心安らかになるよ。