その時、歴史は動いた「ブログ・うねり閉鎖事件」 | 偕楽園血圧日記

その時、歴史は動いた「ブログ・うねり閉鎖事件」

(NHKの松平定知アナウンサーの声でお読みください)

2005年四月、中国社会は一つのブームに沸いていました。「反日デモ」です。

 発端は東シナ海のガス田開発でした。1970年代中盤、国連天然資源委員会は、日本の尖閣諸島付近に膨大な天然ガス埋蔵の可能性があることを指摘そのときから、中国はいきなり尖閣諸島を自国領だといい始めました。事実上一種類しか許されない学校の教科書に尖閣は自国領と大書され、中国国民はそれを信じ込まされました。
 日本が、強い抗議を行わなかったのがよくなかったのでしょう。やがて中国は海洋法を無視。南西諸島近くまですべての海洋棚が自国のものだと言い出します。
 日本は、いわゆる二百海里の経済水域を決めた国際法を持ち出し、日中の二百海里が重なったところは中間で区切るという至極まともな提案をしましたが、中国側はそれを認めず、東シナ海でガス田の試掘を始めます。実はこの試掘、日本が提案した中間線のわずか五キロ中国寄りの所でなされているというところに、中国の嫌らしさが現れていました。
 中国も日本の中間線が国際的な正当性を持つことが分かっていたのです。それが、この五キロに現れています。
 しかし同時にこの場所は、ガス田が中間線にまたがっていると推察される非常に微妙な所でした。しかも、地下の分布状況は日本側のほうに多く偏っているというデータが示されていたのです。

 日本はあわてました。このままでは、日本領内の天然ガスまでも中国に吸い取られてしまう。
 遅きに失した感はあったものの、2005年三月、日本も中間線の自国側でも試掘開始許可を、民間の開発業者に与えます。

 中国は怒りました。「これは、わが国に対する重大な挑発だ」と。

 同時期、国際連合は常任理事国制度の改革でもめていました。いつまでも第二次世界大戦の戦勝国が権力を独占していてもいいのか。加盟国が二百に迫る現在、安保理の拡大は必至ではないのか。
 この拡大路線に乗って、ブラジル、ドイツ、インド、日本が名乗りを上げました。いずれも劣らず、世界の主要国です。特に日本とドイツは、第二次大戦の敗戦国の立場を覆して世界の主要国になった国です。国連の運営にかかる負担金も、この二国で30%近くを賄う、まさに国連の立役者でありました。

 中国は、この動きが面白くありませんでした。

 日本とは、東シナ海で争っている。将来太平洋に抜ける海洋国家になろうとするときにも、中国の進路に蓋をする形の日本は邪魔な存在だ。
 日本を常任理事国にしてはならない。中国と対等な発言力を持たせるわけにはいかない
 中国は、いかに日本がリーダーにふさわしくないか、ネガティブキャンペーンを張るようになりました。そこに使われたのが、インターネットです。中国のインターネット事情は、ネット人口がアメリカに告ぐ世界第二位でしたが、そこには自由主義国にはない色々な制約がありました。

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 11機関で徹底規制

【ニューヨーク=大塚隆一】中国政府は世界で最も進んだインターネットの検閲体制を築き上げ、年々手の込んだものに進化させていることが米国などの大学がまとめた調査報告書でわかった。検閲には最先端のネット技術、法律による規制、官民による監視などを総動員しており、政府に都合の悪いサイトの多くをアクセス不能にしているという。調査チームはネット普及が民主化を促進するという楽観論は中国では通用しないかもしれないと指摘している。
 報告書をまとめたのは米ハーバード大、英ケンブリッジ大、カナダ・トロント大の合同チーム「オープンネット・イニシアチブ」。それによると、アクセスを規制しているのはポルノや宗教>に関するサイトのほか、台湾、チベット、法輪功、ダライ・ラマ、天安門事件など当局が政治的に神経をとがらせている問題を扱うサイト。掲示板やメールでこれらに触れた場合も削除する体制ができている。欧米メディアも規制対象で、BBCはアクセスできなかったという。
 情報統制が厳しい他の国でもネット検閲はあるが、調査チームのパルフリー米ハーバード大教授によると、中国は「ずっと巧妙で手が込んでいる」という。
 具体的には「天安門」「法輪功」などのキーワードを監視対象にし、これらを検出できる装置やソフトをネット回線の“関所”にあたる部分に配置。さらに政府が認可した少数のプロバイダーに独自の検閲をさせている。またグーグル中国版などネット検索サイトには問題のあるサイトの掲載はさせていないという。
 このほかネットカフェには利用者の記録を60日間保存することを義務づけ、反政府的なサイトへのアクセスを牽制している。
 ネット検閲を支えているのは米国のIT(情報技術)企業の技術だ。例えば、シスコシステムズのウイルス検出技術はキーワードの発見、除去に使われている可能性がある。
 報告書によると、こうしたネット検閲には確認できただけで11の政府機関が関わっていた。そのスタッフは官民合わせて数千人規模とみられるという。
 中国政府は広範なネット検閲を行っていること自体を認めておらず、アクセスを不可能にしているサイトのリストも明らかにしていない。このためネット利用者は「何を知らされていないか分からない」(パルフリー教授)という。
 中国のネット人口は1億人近くで、世界1位の米国を追い抜く勢いだ。報告書はこうしたネット大国で「広範な検閲が行われていることは世界中のネット利用者にとって懸念すべき問題だ」と指摘。他の情報統制国家の検閲のモデルになりかねないと危惧している。
 (2005/4/19 読売新聞)
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 中国のネットには自由がなかったのです。自由に情報を得られるはずのインターネットが、政府の人民操作の手段になっていたのでした。

 中国政府はこのインターネットの反日サイトを使って、日本の常任理事国入り反対デモを行うように仕向けます。1990年代からの反日教育の徹底で、その下地は十分にできていました。一般的な中国人は、戦後日本が中国に行ってきた貢献はまったく知らされず、戦時中のことを捏造交じりの誇張で教え込まれています。自国が行った虐殺も、日本軍のせいにされていますし、現在の北京政府が、日本軍と戦ったのではなく、自国の国民党軍に対するゲリラに過ぎなかったことも、隠されています
 デモは成功したように見えました。一万人に達する人々が日本に対する反対の声を上げたのは、企画したとおりでした。しかし、普段から共産党の圧力に対して溜まっていた国民の鬱憤は、デモを予想以上の暴徒とし、日本料理店や日本の車の襲撃、果ては日本大使館や領事館への投石にまで発展してしまったのです。

 やりすぎだ。国際的に非難が集まる。

 そうは思ったものの、ここでやりすぎたと日本に謝罪することは、共産党政府の権威失墜を招き、デモの矛先を自分たちに向けることになる。
 中国政府はいつものように「日本が悪いからこうなった」という姿勢を崩さず、国内の火消しに走りました。
 報道規制、ネット規制を強化したのです。

 そして2005年4月19日。いよいよ、その時がやってきます。
 「ブログ・うねり閉鎖事件」の発生です。

「ブログ・うねり」は、上海在住のwowow氏が管理人のブログサイトで、中国の風俗から国内の動きまでを、日本人に向けて紹介する、かなりの人気のあるサイトでした。
 中国国内の動きを書いている「ブログ・うねり」は、当然この四月の上海デモについても書くことになりました。これが当局の検閲に引っかかったのです。

 当局の検閲によりサイトが削除されたとき、接続できなくなった日本のブログ仲間の間で不安が広がりました。「逮捕されたのかも」から「殺されてしまったのではないか?」まで。この不安は数日後に、場所を移してwowow氏が事のいきさつを書くまで解消されませんでした。 当局によってサイトが閉鎖される。この信じられない行為は、自由に意見を言えることが当然の日本に住むブロガーたちの怒りに火をつけました。いくつもの反中意見がブログを飾り、世界に向かって中国がいかに人権無視を平然と行う国かが発信される事になりました。

 そして、歴史は動きました。

 2005年五月。日本のブログサイトでこの言論弾圧のことを知ったアメリカでは、さらに多くのブログサイトでこのことが取り上げられ、やがてそれは中国に対する大きな反発のうねりになりました。アメリカでは、すでにブログが世論の形成に大きな影響を持っていたのです。
 当時のブッシュ大統領は、この世論を受けて中国を「反人権国家」と指定し、最恵国待遇の停止をはじめとする制裁活動を行いました。日本でも、順調に伸びていた対中国投資の減速が起こり、中国の経済発展に翳りが出ました。
 とどめをさしたのが、元の対ドル変動相場制への移行でした。中国経済は大打撃を受け、中央政府の権威は失墜。広がっていた貧富の差から各地で暴動が起きても、抑える力は発揮できませんでした。
 自体の沈静化を狙って出された国連安保理決議12345678zは、中国の拒否権発動により否決。はからずも、安保理の限界の露呈にもなりました。
 その後、中国国内はほとんど内戦状態になり、2008年北京オリンピックも中止。
 ますます求心力を失った共産党政府は、保身にはしる人間たちの間で分裂。
 そして2009年、国もまた、華北・東北・四川内陸部、華中・華南の沿岸地方の二つに分裂。チベット、新疆ウイグル自治区は独立。内蒙古自治区はモンゴル人民共和国との合併に至りました。
 同時に中国の後ろ盾を失った北朝鮮のキム政権も崩壊。しかし新たに発足した軍事政権が高麗共和国を宣言、さらに分裂した中国東北部に併合され、楽浪人民共和国を結成。大韓民国との睨み合いは続いていますが、その韓国も、常任理事国入りして自信を持った日本が簡単に言いなりにならなくなった結果、強いものには逆らわない権勢症候群に従って沈黙。前政権の反米感情のために悪化した米韓関係の修復に一縷の望みをかけている状態です。

 以前不安定さが残る東アジア情勢ですが、中国という重りと南北朝鮮の足枷が取れた日本は、媚中親韓派を掃することができ、ようやく健全な政府運営が行われるようになりました。

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 私のブックマークにも入っている「ブログ・うねり」中国政府によって強制的に閉鎖された。上海での暴動について書いた( 「うねり・中国当局によって封鎖されました」) ためだということだが、中国では言論の自由がいかに制限されているかを物語るものである。自国にとって不利なサイトは徹底的に取り締まるくせに、利用できそうな反日サイトについては……

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 「暴力」呼びかける反日サイト、完全規制は困難

【北京=佐伯聡士】民主化運動や非合法気功集団「法輪功」などインターネット上の反体制言論に対する監視の目を光らせている中国政府は、9日の北京の反日デモ以降、暴力行為など過激な行動を呼びかけるサイトを接続しにくくするなど管理を強めている。
 昨年末9400万人だった中国のネット人口は今年末には1億2千万人に達する見通しだ。ポルノや暴力など悪影響がまん延するサイトを取り締まるため、当局は、違法インターネットカフェの摘発に力を入れてきた。特に、昨年からはポルノや反体制言論などの取り締まり強化に向け、一般利用者からの通報を受け付けるウェブサイトを開設するなど躍起になっている。
 過去には、憲法改正フォーラムで急進的改革案を提唱していた知識人のサイトが閉鎖に追い込まれたほか、反体制言論をネット上で発表した作家が拘束、収監されているとの情報もある。
 ただ、当局は、反日言論サイトに対しては、これまで反体制サイトとは異なる寛容な姿勢を示してきた。こうしたネット世論が「対日外交カードになる」(中国筋)との判断からだ。
 しかし、反日デモに関しては、当局は最近、過激な暴力行為を呼びかけるネットサイトに歯止めをかけるため、キーワードでふるいにかける措置をとっている。これに対して、ネット活動家らは、文字間隔を空けるなどの作戦で当局の網をかいくぐろうとしている。
 (読売新聞) - 4月18日21時4分
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 お得意のフィルタリングで、「反日」とか「暴動」とか「抗議活動」とかで取り締まればよいのだが、そういうことはしようとしない。ソビエト連邦や東欧諸国の共産党崩壊に学んで、情報統制だけはうまくやっているようだ。ドイツが国の士気を上げるためにユダヤ人を利用したように、日本人を憎むことを子供のうちから教え込んで国民の意思の統一を図ろうとする。
 共産党政府自身は歴史を知っているのだ。そして歴史の中で体制の維持に利用できそうな悪しきところだけを再利用している。悪いところを教訓として未来をよくしようという日本とは雲泥の差があるのだ。
 こんな国に「過去を直視しろ」などと言われたくはない。本当に過去の直視が必要なのは中国政府である。

 そしてこんな国が安保理の常任理事国だといって世界の指導者面をしている国連は、まだまだ健全な組織とはいえない。改革が進まないのならば、組織維持のための経費負担をする必要はない。(もっとも中国が分裂の方向に向かうときには日本もかなりとばっちりを受けるだろうから、アメリカと国連に恩を売っておくのも悪くはない)