東京都に続いて川崎市で条例が可決された、住宅メーカーに一定量の太陽光パネルの設置を義務付ける取り組みについて続報です。
川崎市が測量事業者に昨年度委託していた「太陽光発電設備導入ポテンシャル調査業務実施報告書」を資料請求し、確認したところ驚きの事実が明らかになりました。
結論からいえば、川崎市で太陽光パネルの設置が可能な(十分に日射量を確保できる)住宅数や屋根面積、条例による適正な義務化率などは今回の委託調査では明らかになりませんでした。
この調査によって「川崎市内の義務化率が本当に市内一律70%で良いのか」など具体的なことがわかると説明を受けてきたので、開いた口が塞がらないという感じです。
義務化にあたって重要な義務化率などの細かな制度設計は、条例可決後に、議決を必要としない規則で決定することになっていて、
その決定にあたっては、ポテンシャル調査の結果や専門家などの意見を参考にするとされてきました。まさにこの調査結果が制度設計に肝になるはずでした。
私としては、そもそもポテンシャル調査を行わずに議論を進めることはできないと考えていたため、条例可決そのものに反対しましたが、
残念ながら、今回の調査結果は、規則でどのような数値設定を行うことが適切なのかを判断する材料としては不十分なものと言わざるを得ません。
これで唯一残された判断材料は、東京都のマネをするということなのだろうと推測します。
誤解のないように補足しておきたいのは、委託先の事業者さんは私が期待していたような調査報告書をつくるノウハウは十分に持っています。
例えば、京都市からの委託調査では、下記のように3Dモデルを用いて太陽光パネルの設置が可能(一定量の日射量を確保できる)な建物を非常に細かく示していて、
その結果、京都市では「中京区、下京区では5~6割程度の建物が設置可能であるのに対して、(中略)伏見区や山科区では7~8割程度にのぼる」という調査結果を公表しています。
この割合は、東京都・川崎市で事業者ごとの義務量を算定するときに用いられる義務化率(算定基準率)を決定するときに非常に参考になるものです。
今のところ、川崎市は全市一律7割で規則をつくる方針を示していますので、
もし今回の委託調査で、京都市同様の調査が行われた上で「全市で7割程度が設置可能」という調査結果だったのであれば、
市の方針の正当性を裏付けることができましたが、残念ながらそうはなりませんでした。
ちなみに今回の委託調査でわかったのは、
①:過去数年間の川崎市内の太陽光パネル設置状況
②:①のうち、建築面積と設置面積の比率
③:条例施行後のパネル設置見込量
などが主なところです。
報告書の目次には「適正義務量の検討」という記載はあるのですが、そこで行われているのは1棟あたりのワット数に関する考察のみでした。
そこでは1棟あたりの義務量については3つのパターンが示されていますが、先ほどの義務化率(算定基準率)は7割に固定して試算されていました。
京都市とは違う思想で行われた調査だと言えばそれまでですが、繰り返しになりますがこの調査結果で規則の正当性を十分に主張していくのは難しいだろうと思います。
一方で私としては、今回の委託調査報告書から収穫が一つだけありました。
それは②に関連して、私が議会で懸念事項として示したことが間違いではなかったことが確認できたことです。
その点についてはまた次回のブログでお伝えさせて頂きます。
最後までお読みいただきありがとうございました。