ここ1~2年は水道(上水)事業について、かなりの時間を割いて調査を進めてきました。
きっかけは工業用水道(工水)事業の異変です。
臨海部の大企業が事業をストップすることに伴って、工水の需要が大幅に減少し、工業用水道事業の経営が著しく悪化することが想定されました。
上水は飲める水。工水は飲めない水。上水は浄水処理が必要になるので、その分だけ割高な水です。
工場などで冷却水のように大量に使用される水は飲み水である必要がないので、専用の水として、工業用水道(工水)が供給されています。
上水と工水の経営は完全に分離されているので、本来であれば、工水の経営悪化が上水に影響を与えることはないはずなのですが、
川崎市では工水の需要が爆発的に増加した時代を契機として、上水の一部を工水に対して融通・販売をしてきました。
今回、工業用水道事業の経営悪化が想定されたことを受けて、上記の融通・販売単価を引き下げることが検討されています。
そしてその正式な決定に必要な条例改正が9月議会で予定されています。この融通・販売単価が引き下げられれば、上水の収入が減ることになりますので、
上水はその減少分を補うために、市民が使用している水道料金の値上げを行う可能性が非常に高いです。
そんなこともあって、ここ1~2年は本当に水道料金の値上げを行う必要があるのかについていろいろと調査をしてきました。
川崎市の想定では、水道事業を取り巻く環境として、工水への融通・販売単価引き下げによる収入減が年間約12億円、物価・燃料費の高騰などによる費用増が年間約15億円。
これらによって、水道事業は急激に赤字が進み、料金水準の変更が不可避であるという市側のストーリーが出来上がりつつあります。
確かに永久に現在の料金水準を維持することは難しいように思います。しかし、私としては、今すぐの変更が必要なのかどうかは、まだ完全に示されていないと考えています。
なによりも問題なのは、市が示している水道事業の収支シミュレーションの精度が著しく低い点です。
今回の議会でも明らかにしましたが、前中期計画では、累積資金(内部留保)の減少を見込んでいましたが、実際には大幅に増加しました。
そして現在の中期計画でも、初年度である令和4年度にさっそく約40億円も上振れしました。
こういうことが市民に知らされることなく、水道管の老朽化や物価高騰などの一般論が用いられ、水道料金の値上げが市議会で承認される可能性があると考えると、恐ろしさすら感じます。
そしてその初めの一歩が、9月議会で賛否が問われる工水への融通・販売単価の引き下げだと言えます。
これについては現状としては、まだ議決前であるにもかかわらず、
ほぼ既定路線であるかのように、収支シミュレーションなどの資料にすでに引き下げが反映されていることにも違和感があります。
私としては、値上げの必要性を検証し続けますし、値上げされるとしても最最最小限にとどめられるよう、市に対して具体的根拠を示した上で提言を続けていきたいと思います。