------------
↓『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』川口マーン惠美著、講談社、2013)より引用(02)


ある日、私が定期健診で病院に行ったら、医師が日本の福島第一原発事故のことをテーマに話しかけてきた。
私が、「現在、日本では原発がすべて止まっている。問題は電力供給だ。日本には石油もガスもない。すべて輸入に頼らなければいけないので、貿易収支がマイナスになっている。ドイツや日本のような産業国で、電気代が高騰すると致命傷だ。その点、ドイツは褐炭があるから、恵まれている」と言うと、医師は、「褐炭?」と意外な顔をしたのだ。
褐炭のことなど、考えてもみなかったという顔である。


そして、彼は次のように言った。
「日本は海に囲まれているのだから、オフショア風力発電をすれば良い」


私は、「日本の近海は北海やバルト海と違い、海底が急に深くなるところが多いので、やたらに風車を建てることはできない。
しかし、ドイツのオフショア発電だって簡単ではない。10年後に原発の分を再生可能エネルギーで代替するのは、おそらく無理だろう」と言うと、「いや、私は可能だと信じる」と、急に不機嫌になり話を打ち切られた。


しかし、この医師が特異な人というわけではない。
ドイツでは、脱原発決定から一年、脱原発の決定に大いなる誇りを持つあまり、良い面ばかりしか見なかったのである。


(中略)


これまでのように、常に全会一致のような状況は非現実的で、かえって不健康だった。
賛否両論があってこそ、地に足の着いた、良い妥協案が見つけられるに違いない。


↑(引用ここまで)
------------


TPPにせよ、集団的自衛権の問題にせよ、「全会一致」とはいかないまでも、「勢い」だけでダーッと一方に流れてしまう傾向は、いまだに日本に根強い気がします。
そしてそんな状況は、川口氏も指摘するように、『不健康』だとも思います。


「経済を活性化しないと、日本は危ないんじゃないのか?」と煽られれば、たいした考えもなしにTPPの流れに乗っかる。
「北朝鮮がミサイルで狙っているぞ!」と煽られれば、矢面に立つ自衛隊のことなど何ひとつ考えずに、集団的自衛権の行使容認に傾く。


…公明党やらが反対しているから、ちゃんと『賛否両論』あるじゃないか、って?
あんなもの、「慎重に議論が進められているように見せる」パフォーマンスに決まっているじゃないですか(笑)。
仮に、真面目に議論しようとしているなら、連立与党の公明党なんかではなくて、日本共産党や社民党あたりの言い分も、バンバン放送していいはずですよね。
安全な会議室から命令を出すだけのおっさんたちの話ばかりでなく、現場で命を張る自衛隊の人たちの意見も、バンバン取り入れてみていいはずですよね。
でもそれはあまり、というかほとんど出てこない。


「オレはそんな、日本の腐った”政治”や”経済”に興味なんてねぇし」みたいな若者だって、「今、これが流行っています」「行列のできる○○グルメ特集」みたいなメディアの煽りに、御多分にもれず洗脳されているのではないでしょうか。
メディアは「食」・「美味しいものを食べる」ことに当然誰もが興味があるのがデフォルトでしょ? 、と決めつけんばかりの様相ですが、そんなに「食」に興味がない人だって、もっといていいはずです。
「スマホの新機種」や「ケータイゲーム」に興味がない人だって、もっといていいはずです。
要するに、こういった日常的な私たちの興味でさえ、誰かの「意図」によって煽動されていて、考えなしの愚民どもはダーッとそちら側に流されてしまっている…そんなふうに思えてならないのです。
そしてそれは、気を付けて暮らしているつもりの私だって、きっと例外ではないはずです。…ちょっと油断すれば、すぐに「その他大勢」の仲間入りです。


いちいち疑問に思う、「面倒くさい」人。
「ケータイ」「ネット」「流行りもの」に背を向ける、いわゆる「頑固者」。
…もっといていいはずの、こんな人たちの少なさが、毎週毎週私にこんな文章を書かせている。そんな気がするのです。


ペタしてね