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↓『自分を愛する力』乙武洋匡著、講談社現代新書、2013)より引用(04)


(乙武氏が教師として小学三年生を受け持った授業中にて)


「先生、新しいページにしたほうがいいですか?」
「ここは一行空けるんですか?」


自分のノートにもかかわらず、どのように書いたら見やすいのかを自分で決められず、教師にすべてを委ねてしまうのだ。
これは危険な兆候だと感じた。
このままでは、自分で考え、自分で決断することを放棄する人間になってしまう。


だからと言って、そのことで子どもたちをなじる気にもなれなかった。
きっと彼らだって好んでそうなったわけではなく、親や教師の影響によって、「自分で決められない子」になってしまったと思うのだ。


子どもとは、本来、好奇心旺盛なものだ。
いくら親が顔をしかめようとも、あれこれとやってみたがる性質がある。
そうした子どもたちのチャレンジに対して、大人たちはどのように受けとめているだろうか。


もしも、それが大人にとって好ましい結果であれば、「よくできたね」「がんばったね」。
ところが、それがいざ大人にとって好ましくない事態に発展すると――。
「何やってるの!」
「もう、だから言ったでしょ」


感情に任せた金切り声をあげて、子どもたちを圧迫してしまう。
こうした言葉をかけられた彼らは、いったいどのように考えるだろうか。
「せっかくがんばったのに、怒られちゃった……」
「大人に言われたことだけやっていれば、きっと怒られなくてすむんだ」
「これからは、自分から何かをするのはやめよう」


世間には、「指示待ち族」と呼ばれる若者たちを揶揄する声がある。
だが、こうして指示されたこと以外をやろうとしない若者を増やしているのは、ほかならぬ大人たちの態度なのではないだろうか。


↑(引用ここまで)
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巷の母親の叱り方で私が特に気になるのは、「何やってるの!」だとか「どうして○○するの!」だとか、「行動の理由を問う」型の叱り方です。


たとえば、
子どもが食べこぼしをした → 母「何やってるの!」 → 子「……」
というやりとりになるのでしょうか。
つまり、「自分が、何をやったのか、どんな悪いことをしてしまったか」をあえて相手に答えさせようとすることで、プライドを傷つけ、再発を防止するという叱り方です。


でも、「何やってるの!」に対して「よそ見してて、こぼしました」なんて「自分が何をやったのか」をきっちり答えようとする子どもはいないですよね。…漫才の「何でやねん!」というツッコミじゃないんですから(笑)。
「何やってるの!」という攻撃的発言に委縮し(もしくは慣れっこになってしまい)、無言になってしまう子どもがほとんどではないでしょうか。…親のほうが一方的に叱り言葉を浴びせて終わるという。
これは、ダメですよね。
そもそも、「はい」と答えづらい叱り方は、子どもとしても困ると思うんです。お説教が締まりにくいというか。


子どもが食べこぼしをした → 親「よそ見しないで食べなさい」 →子「はい」
で、済む話ですよね。
もし「はい」ではなく、口答えを始めたら、一発ひっぱたいて、別室に連れて行って1対1になり、泣きやむのを待って、「ごめんなさい」と言わせてから、「食べるときは、食べることに集中しないとダメだよね?」と諭して、最終的に「はい」と言わせて、食事に戻す。
…ここまでが、「お説教」ワンセットですよね。


「この親は、口答えを許してくれないんだな」「食事中に、立ち歩いたり、よそ見をしたりしちゃいけないんだな」と、「やっていいことと悪いこと」の線引きも子どもにとってわかりやすいですし、そして何より「身の程を知る」機会になります。
そして、このワンセットを一回やっておけば、次また、食事中によそ見をしたら、黙って睨みをきかせるだけで、子どもはハッと気づいて食べることに集中するもんですよ。
いちいち金切り声をあげて「何やってるの!」なんて言う必要はありません。


「はい」「ごめんなさい」と、子どもが答えやすいように誘導する叱り方。
面倒臭くても、子どもが「身の程を知る」お説教タイムを作って(できれば1対1で)、しっかり泣かせて、しっかり謝らせる叱り方。
結局は、親の見ていないところで――保育園で、実家で、「はい」「ごめんなさい」「ありがとう」「こんにちは」が自分から言えて、周囲にかわいがってもらえる奴であるかどうかが勝負どころなのですから、親が見ていないところでも、親の睨みがきいていると子どもが感じるくらいの叱り方を、普段からしていなくちゃいけませんよね。


…少なくとも、「何やってるの!」「どうして○○するの!」と日々罵声を浴びせられて、その場しのぎでしぶしぶ言うことを聞く子どもが、外で愛想よく、かわいがられる奴にはなりづらいよなあ、と心底思うのです。


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