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↓『学校嫌い』(江川達也・山田玲司著、一迅社、2007)より引用(09)


山田:それより、『絶薬』で紹介している人たちは中卒だったりしますよ。ホームレスだっていましたしね。


江川:俺の師匠の本宮先生も中卒だった。


山田:でも、そこから勉強はじめて、あれだけのことをやっているというのは。だから中卒って、もっと誇っていいんじゃないかと思いますよ。


江川:そうだよ。だって学歴があると、「お前がこれできているのは学歴のおかげだろ!」ってなるけれど、中卒の人はそのひと自身の能力だから借り物じゃない。


(中略)


江川:だから、中卒どうのこうのよりも、学歴を頼りにせずに生きているやつはすごいよ。俺だって大学出たよ。大学出て先生もやったけれど、俺は中卒より自分のほうが偉いと思う気持ちは捨てたからね。
持っているものを捨てた人もそうだし、最初から大学行かなかった人も、学歴で生きていないやつはすごいと思うよ。


山田:確かにそれはすごい。そこを評価しようと。


江川:そう。


山田:それ、何パーセントか上がりますよね、ポイントが。


江川:学歴じゃなくて、実力で世の中を渡ることが大事なんだよっていうね。


山田:多分、親御さんは、「うちの子は勉強もできないし、スポーツもダメだし、心配だからこそ、東大というものに入っちゃえば安心じゃないか」という理論でくるじゃないですか。それに対する説得力のある理論はないですかね?


江川:東大に入ったって、幸せじゃないやつは山ほどいるからね。


山田:データとして出されたときに、たとえば、世田谷区に住んでいて、エンゲル係数がなんだかんだで、豊かだと言われる人たちの何割かは六大学出ているんですよ。そこで「東大というのは、高卒よりもはるかに有利じゃないですか?」と聞かれたとき、どうしますか?


江川:それは有利だな(笑)。


山田:あはははは。有利ですよね。


江川:有利だねえ。


山田:で、現実に子どもがアホで、だからこそ東大に入れなきゃって思ったときは?


江川:才能のないやつほど学歴つけるんだよ。


↑(引用ここまで)
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「やっぱり大学くらい出てないと、就職に不利でしょ?」といった学歴偏重。
「東大入ったって、偉くもなんともないよ!」といった無学歴偏重。
学歴偏重にも、無学歴偏重にも、そのどちらにも偏らないバランスのとれた意見、「そもそも学問とは何か?」という本質的なところから発せられた洞察力のある意見には、あまりお目にかかれません。


そもそも「学校(スクール)」の起源は、紀元前387年にプラトンが建てた「アカデメイア」にあると言われていて、すべての私生活・衣食住に関する雑務を奴隷に任せ、暇(スコレー)を持て余した主人たる「自由人」たちが、幾何学や天文学を学び、お互いに知性や人間としての幅を高め合い、競い合ったと言います。
古代ギリシアでは、現代で言うところの「就職」や「衣食住」、つまり「メシの種」や「日々の生活」にあくせくするのは奴隷の仕事なのであって、その真逆とも言える「暇(スコレー)」を有効に使って、自己の人間性をより豊かにすることこそが「学問」の学問たる所以だったのです。
「どうして勉強なんてしなくちゃいけないの?」ではなく、「自分の人間性を高め、鍛えることこそが”勉強”である」という「主人」たる姿勢こそが、「学問」の起源なのです。
奴隷制度の可否はここでは置いておくとして、つまりは「学歴が必要」と言う輩も、「学歴なんて関係ない」と言う輩も、「何が”豊か”であるか」という視点ぬきにして語られる時点で、「奴隷的な人間の発想」だと言わざるを得ません。
民「主」主義だなんて言いながら、ちっとも「主人」的ではない発想だと思うのです。


対談の後半でもお二人が言っているように、世論が「学歴なんて関係ない」と言いつつも、いまだに「高学歴」が「高収入」につながる割合の高さは、一定の比率を保っているのが現実でしょう。
しかし、大学やらで「学問」「豊かさ」とその人がどう向き合って、どんな視点や切り口を持った「主人」的な人間になっているのかは語られないままです。
「大学行って、どんなおもろいことを学んできたの? 聞かせておくれよ」と。


かといって、中卒・高卒の人たちの方が人間的に「豊か」なのか、というのは別問題です。
大学に行かなくても、いろいろな本を読んだり、様々な視点や考え方の切り口を持つよう自分を高めていなければ、そんな人も、日々の生活にあくせくと追われるだけの「奴隷的」人間だと言わざるを得ません。
「大学行かないで、どんなおもろいことを学んできたの? 聞かせておくれよ」と。


「学歴云々ではなく、その人がどんな人か」と、言ってしまえば当たり前のことなのですが、「学歴」「学問」「豊かさとは?」に関して思い込みや不勉強が横行していると感じ、今回こう書きました。


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