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↓『下世話の作法』(ビートたけし著、祥伝社、2009)より引用(18)


そんなこんなで次の日、雪の降る中でロケになったの。俺の出番で、(高倉)健さんの出番はなかった。
でも健さんは差し入れを持ってきてくれるんだ。旅館の人に甘酒とかつくってもらってね。
それで差し入れを渡してくれて、用がすんだから旅館に帰るのかと思ったら、帰らない。
俺たちがやるのを立ったままずーっと見てる。
あとで聞いたら、健さんは他の映画でもそうらしいね。
出番がないのに「皆さんが頑張っているんだから」って立って見ているんだって。


その日は真冬で雪だからものすごく寒くてさ、それでも健さんは雪の中で黙って立っている。
ロケの現場には大きなドラム缶が置いてあって、薪とか新聞紙とかをくべて暖をとれるようになってるんだけど、見たら健さんはドラム缶のそばにいない。なんか離れたところに立ってるんだ。
ドラム缶がバーッと燃えてるのに火にあたらないの。撮影の間じゅう、ずっとそのまんま。


みんな寒くてしょうがないんだよ。健さんも寒いだろうし、気が気じゃない。
それで「はい本番!」「はいカット!」ってなって、俺が健さんに言いにいった。
「健さん、ドラム缶に当たってくださいよ。寒いんだからそこは」
「いや、私はただ見にきただけで、皆さんが仕事している時、こんなものには当たれません」
「健さんが当たらないと俺(おい)らも当たれないんで、凍え死んじゃうから、お願いですから当たってください」
そしたらやっと納得してくれた。
「じゃあ当たります。たけしさん、どうもありがとう」


↑(引用ここまで)
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仕事の「のりしろ」。
以前、新入社員研修か何かで講師の先生がこんなことを言ったのを聞いたことがあります。


隣の部署ではAという仕事を担当している。自分に割り当てられた仕事はB。また、別の部署ではCという仕事が割り当てられている。
あなたが上司や仕事仲間から認められたり、充実した職場生活を送りたいと思うのなら、Bの仕事をこなしてしているだけではダメだ。
会社は仕事「B」だけで回っているわけではないのだから、AやCといった隣の部署の仕事も「自分の仕事である」という「仕事ののりしろ」意識や興味をもちつつ、仕事「B」に臨むことが必要不可欠である、と。


私は、たけし氏の高倉健さんについての今回の話を聞いて、この「仕事ののりしろ」「どこまでを”自分の仕事”と捉えているかでそいつの仕事上の価値・評価が決まる」という新入社員研修の話を想起しました。


自分に与えられた仕事をこなすだけで四苦八苦していたり、愚痴ばかり口にしていたりする人。
いつも社長的な目線で会社全体の仕事の回り方を見渡していて、他の部署にも気遣いを怠らず、仕事を楽しめる人。


私は後者であろうと、強く意識して仕事に臨んでいます。まあ、「自分のことがまずきっちり人並み以上にできている」と同僚や上司に評価させておくことが大前提ですけど。。w
あなたの職場にも、そんな「仕事ののりしろ」と「気遣い」をもった「高倉健」、いませんか?



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