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↓『学校嫌い』(江川達也・山田玲司著、一迅社、2007)より引用(07)


そもそも、いまの教育というのは、パターンだからね。しかも、より鈍化したパターンになっていて、それでいて教条主義で。
本来、なんのためにそうしたのかという元ネタを知らずに、「前からやっているからこうだ」みたいなところがあるじゃないですか。職人の伝統にもそういうところはあるけれど、それでも職人の技は、目的とその手段がずっと矛盾していなから意味はある。


ところが明治以降の教育は、何回も世界大戦があったり、日清戦争や日露戦争などいろいろあって、最初に作ったときの趣旨が失われて、形だけが続いている。なんのためにやっているのかわからないことを一生懸命やっているわけですよね。


でも、軍事学をある程度勉強すると、いまの教育がなぜこうなっているのかが、じつはわかってくる。
たとえば民主主義や市民平等というのは、ナポレオン戦争でナポレオンが勝ったから、そうなっただけの話。言ってみれば、一般人を兵隊にするために選挙権を与えた。選挙権を与えてやる代わりに兵隊になれっていう交換条件なんだから。


自由主義の人は市民平等が良かったって言うけれど、じつは総力戦に備えて国民全員を兵隊にするためにそうしただけの話なんですよ。
あと、なんでいまでも行進をやっているかというと、十九世紀の軍事教練の名残ですよ。学校のクラスがどうして30から40人かというと、あれは小隊の規模なんですよね。学校の遠足は、戦争で軍を移動していくのと同じことなんですよ。
行進だって、兵隊をちゃんと動かすための訓練なわけですよ。昔の日本人って、右手と左手を一緒に出していた人が多かった。相撲のすり足や歌舞伎はいまでも一緒に手足を動かしているように。それを矯正するために行進の練習をしたという説がある。まあ、そこのところは本当かどうか真偽はわからないけれど。


つまり、そういう訓練がだんだん学校教育に取り入れられていったっていうことです。平和憲法っていいながら、未だに軍事教練しているんだから、おかしな話でしょう?


↑(引用ここまで)
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…『なんのためにやっているのかわからないことを一生懸命やっている』。
その『元ネタ』を探ろうとしていない状態が、「洗脳されている」「自分のアタマで考えていない」という状態です。
現状に「疑問」を持てば、「なぜそうなっているのか?」と「系譜」を探ろうとするはずです。
系譜を探れば、それが今の時代に合っているのか「分析」できるはずです。
分析すれば、「これじゃあダメだ」と愚痴をたれるだけに終わらず、必要な「準備」を考えられるはずです。


…しかし実際には、「疑問」すら持たない人、疑問を持っても「系譜」に当たらない人、系譜に当たっても「昔は良かった」とか何とか言って「分析」を怠る人、分析しても実施に必要な「準備」の膨大さから目をそらす人で世の中はあふれかえっています。
江川氏は、その中でも「系譜」、いわゆる『元ネタ』へ当たる人の少なさ・不勉強さに警鐘を鳴らしているのだと私は感じます。


なぜ学校では、戦後ずっと国語・算数・理科・社会を教えているのか? 本当にそれが今でもベストなのか? ベストでないとしたら、そのベストな新しい教科とは何なのか? その教科を教える教員の育成・準備はどうするのか?


「教育改革」だなんて大風呂敷を広げておきながら、軍事学などの「系譜」に触れもしないで「ベストだ」と言い切る人や、「なぜそうなっているのか」考えもしない人。
「ベストじゃない」と言い切っておきながら、「国語・算数・理科・社会」にとって代わる教科の代案も出さずに言いっぱなしの「分析」がない人。
「民間企業や農村での体験学習を通して子どもたちに生きる力を云々」とそれらしいことを言って、一時的なイベント実施を学校に課して「やった気」になっている人。
これからの学校教育について偉そうに語るけども、それに対応していかなければならない教員たちへの教育システムを抜本的に変えられず、数日程度の民間企業研修を課すだけでお茶を濁す「準備」なしの人。


…学校教育を例にとっただけでも、これだけの「疑問」「系譜」「分析」「準備」なしが目立ちます。
ニュース番組かなんかで偉そうにしゃべっている評論家で、こんな人たちは大勢いますよね。


旧態依然とした日本の学校教育を見て、まず「軍事学」という系譜にあたれ、と言う江川氏。
その著書『道徳の系譜』の中で、近代以降の価値観を見て、まず「フランス革命」というキリスト教的道徳の系譜にあたれ、と言ったニーチェ。
現状に「疑問」を感じて書物にあたったり、誰かにアドバイスをもらったりするとき、その人が物事の「系譜」にあたっているかどうかが、その意見を見極める手がかりであろうことは、間違いなさそうです。


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