昨年まで働いていた会社の上司は、

いわゆるパワハラ上司でした。





しかし、完全なる善が存在しないのと同様に、完全なる悪もまた存在しないもの。





そのパワハラ上司も、人情に厚く、嘘が大嫌いというピュアさを持ち合わせていました。






そんな上司にある時、こんなことを聞かれました。






「元彼とは別れたらしいけど、今は彼氏いないのか?」




私「はい、今はいないです。」





(そりゃ月に1日休みがあれば奇跡で、毎日深夜まで働いて、恋愛なんてする余裕ないよ)





上司「好きな人はいないのか?」





私「うーん、そうですね」





上司「Mはどう?」





そう、このMこそ、私の唯一の同僚です。





正直、彼のことが気になる。

でも、まだ恋の芽は出ていない。





そんな気持ちでした。

だから上司の質問にどんな返答をしたら良いか、思案しました。





でも、ただでさえブラックで、しょっちゅう空気が悪くなっていたうちの職場。





おもしろいことでも言って、空気を和ませよう。

そんな風に思いました。





私「Mさん、良いですよね」





上司「え、Mに気があるの?」





私「はい、少しだけ」





上司「Mが好きというのが、意外だった。

あぁいうの好きなんだ。でもMもラブだよ」





同僚のMは、元々上司が経営している会社の社員でした。





だから私よりも上司の方が、Mとの付き合いは長いです。





その上司によると、Mは私のことが好きらしいのです。





しかし、私は気付いていました。

Mは、普段はおちゃらけて、ペラペラしゃべる男です。





でも、決して本音は語らない。





だから、上司とMとの間にどのような会話のやり取りがあったとしても、





それは彼の本心ではないだろう。





私は彼の飾らない本音が知りたかった。

(つづく)