日曜の昼下がり、

 

前から自転車に乗った女性が近づいてくる。

 

たまたま、私はその歩道を歩いていた。

 

買い物帰り、一人で家に帰るところだった。

 

そのまま行けば、私たちは、

 

ただすれちがうだけの歩行者と自転車、

 

の予定だった。

 

すれ違うほんの少し手前で

 

彼女の表情は一変して曇り、

 

すぐに自転車を停止させて自転車から降りた。

 

彼女の履いていたロングスカートが、

 

自転車のタイヤに巻き込まれたことが

 

見てわかった。

 

地面に座り込むような形になった彼女に

 

迷わず私は近づいて、

 

自転車を支えた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、すみません、、、」

 

後輪に彼女の履いているスカートの裾がグルグルに

 

巻きついている。

 

「手伝いますね」

 

私は買い物荷物を歩道に置いて、

 

そう言った。

 

「ありがとうございます。

 

すみません、助かります・・・」

 

 

数年前、

 

私自身が彼女と同じような経験をしたことがある。

 

ロングスカートを履いて自転車に乗っていた時、

 

何かの拍子にスカートが引っかかった!

 

と思った時はもう遅くて、

 

すごい力でスカートが引っ張られて脱げそうになり、

 

急停止して自転車から降りる選択肢しかなくなった。

 

歩道に座り込むしかできなかった私は、

 

自転車の黒い油が

 

スカートにも、自分の手にも付いて、

 

ギトギトに汚れることもお構いなしに、

 

ただひたすら

 

スカートの裾と自転車をどうにかして

 

引き離そうとしていた。

 

通行人の視線を感じ、

 

ものすごく、はずかしかった。

 

その場で、透明人間になりたかった。

 

 

image

 

 

「彼女を助けたい」

 

彼女に近づいていった時の

 

私のきもちの起点は「愛」だった。

 

 

状況としては、「緊急事態」だったけれど、

 

私のこころの姿勢は、

 

あたたかく、落ち着いていた。

 

 

「自転車をゆっくり後ろに進ませてみますので、

 

スカートの裾をゆるめるところだけ、

 

がんばってみてください」

 

「はい」

 

自転車とスカートを離そうとする

 

彼女の指先には、自転車の黒い油が付いていた。

 

なかなか、彼女と自転車を分かつことができない。

 

 

「私は時間は大丈夫なんですが、

 

急いでいますか?」

 

私は聞いた。

 

彼女は、

 

「全然、急いでないです。」

 

そう聞いてから、

 

私は言った。

 

「良いニュースと、悪いニュースがあります」

 

彼女は、え?という顔をする。

 

(なにその言い方?と自分でも思いながら

 

 そう言ってしまったものだから言い切るしかない)

 

「悪いニュースは、今のこの状況です。

 

スカートがなかなか自転車から外せないこと。

 

良いニュースは、実は、私の家はすぐそこです。

 

家に私のロングスカートを取りに行けば、

 

お貸しすることができます。

 

その場合、この歩道で着替えるの、

 

ちょっとはずかしいかもしれませんが、

 

頭からスカートをかぶれば、

 

きっと大丈夫です。

 

そうすれば、今の状況からは脱却できる、

 

という意味で、良いニュースです。」

 

言葉はなかったから、

 

実際に彼女がどう思ったのかはわからない。

 

けれど、

 

彼女の表情が一気に緩んでいくのが、

 

見てわかった。

 

では、どうしますか?

 

と聞こうとしたその時。

 

 

後ろから、

 

「大丈夫ですか?大変そうですね。

 

手伝いましょうか?」

 

と、自転車に乗った男性が現れた。

 

YES以外の返事が見当たらなかった私たち。

 

「これは結構大変なことになってますね〜」

 

と言いながら、

 

ペダルをクルクル後ろに回しながらタイヤを回転させている。

 

(私、テンパってて、ペダルじゃなくてタイヤを

 

回すことばっかり考えてたわ・・・)

 

後輪が逆回転され始め、少しずつスカートがほどけていく。

 

不安から安堵に、きもちもほどけていく。

 

巻き込まれていた裾が、

 

クタクタになって、自転車から離れた。

 

自転車は自転車だけ、

 

彼女は彼女だけ、分離できた。

 

 

「よかった。大変でしたね。

 

 気をつけてくだいねー」

 

男性はそう言って、再び自転車にまたがった。

 

「よかったー、ありがとうございます」

 

私は言った。

 

女性は、

 

「本当にありがとうございます」

 

と、

 

ほっとした半泣き顔を私と男性に向けてお礼を言って

 

私たちは、そこで解散となった。

 

 

ただすれちがうだけの歩行者と自転車、

 

にしては、

 

あたたかいすれちがいだった。

 

そして、あの日の、

 

スカートがタイヤに巻き取られて

 

はずかしい思いをした私の痛みも、

 

そのあたたかさに溶かされていった。

 

 

「ありがとう」は、

 

私もなのです・・・。

 

 

 

相手に向け、与えている

 

自分の「こころの姿勢」。

 

その「こころの姿勢」そのものを

 

自分自身が受け取ることになる。

 

それは同時に起きている。

 

 

何をしたか、という「行為」ではなくて

 

どういう「きもちの起点」でそれをやっているのか。

 

 

「愛」という

 

「こころの姿勢」で動けば、

 

相手に愛を与え、

 

同時に自分も愛を受け取って、

 

「怖れ」という

 

「こころの姿勢」で動けば、

 

相手に怖れを与え、

 

同時に自分も怖れを受け取ることになる。

 

与えたら、同時に受け取る、ということ。

 

 

胸のあたりにあたたかい気持ちが残ったまま、

 

私は、すぐそこの家に向かった。




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