「ここに居たい」
そう言って昨夜、
寝る前の布団の中で
大粒のなみだを落とした娘。
・
東京に滞在中は、
久しぶりの友達と連日遊び、花火もした。
大好きなピアノの先生のレッスンも受けられた。
おばあちゃんの作る夏の「ナスカレー」は、
4日連続食べたし、
毎晩寝る前、恒例のみんなでUNOもした。
かつての暮らしの中にあった、
割とスペシャルな感じ、
割と好物な感じ、
割とクリエイティブな感じ、
割とお正月っぽい感じ、
それらを濃縮還元した5日間。
・
朝起きて、
曇り空からほんのりと、
太陽が顔を出しても
彼女の表情は晴れていなかった。
今日、福岡に帰るのだ。
ぼんやりと、
遠い目をした娘を視界に入れつつも、
私は私で、
朝から予定があったし
帰り支度も三人分、
友への宅急便とか、忘れ物チェック、
身体も頭も忙しかった。
私にできた
ほんのわずかな隙を掴まえて
ほんとに小さな声で
娘は言った。
「ここに残りたい」
それを言うと、
涙もセットで落ちていく。
それ以上、言おうとすると
涙のほうがいっぱい出ていこうとする。
「うん」
私は言う。
悲しい、かなしい、、、
言葉にできないぐちゃぐちゃと
帰らなきゃいけない現実と
こちらが想像する以上に
色んなことを理解して
理解した上で
葛藤して
唯一、掴まえている望みは、
ここに居たい
って
短い言葉。
そうだろうな、そう感じるの、わかる。
このまま、望みの通り、
娘がここに残ったら、、と
未来に目を向けたら
今日の飛行機どうなるの?
2学期、一体どうなるの?
学校、一体どうなるの?
いっぱいいっぱい不安になるよ。
「とっても楽しかったね。
ここに残りたいってきもち、
きもち、理解するし、わかるよ。
今、私、
家を出る時間も迫って、
心にもゆとりがない。
私は、今日福岡に帰りたい。
できれば、
みんなで一緒に帰りたいとも思ってる。
だけど、
もう少し残りたいあなたのきもちを尊重すると、
今日の飛行機はキャンセルしてもいいと思ってる。
夏休みギリギリまでここに残って
帰りは一人で飛行機に乗って
三日後に福岡に帰る
って選択肢しか
思いつかないんだけど、
それだったらどうなの?」
だいぶ沈黙、
のち、娘は言う。
「私、三日後に帰る。
一人で帰る。」
それを号令にしたように、
私は、
「わかった!」
と言い、
もう、祖父によって
車に積まれていた彼女の宿題一式の入ったバッグを
降ろしに走った。
キャリーケースの奥にしまった娘のバッグを引っ張り出した。
手前に入れてた
息子の下着やら靴下やらが、
駐車場にとっ散らかる。
焦りながら、
これでいい、これでいい
と自分に言い聞かす。
絶対にみんなで一緒に帰る
って
頑なにこうだ、と一人で決めたゴールを
握りしめてしまうくらいなら、
いっそ、
チカラを抜いて
それぞれが
「他力」を頼らないことには達成できない、
考えただけで「こわい」に
チャレンジしてみる「夏休み」に
してみたっていい。
駐車場に散らばった
息子のパンツを拾いながら、
私の鼻の穴は、膨らんでいたと思う。
回収してきた娘のバッグを持って、
勇んで家の中に入ると、
「やっぱり、今日帰る、、、」
玄関で娘が待っていた。
・
どっちになってもよかったし
両サイドの淵、
ギリギリまでお互いに振れてみて、
感じて見えたことがきっとある。
スッキリもしていない。
納得もしていない。
でも、
不完全燃焼の感覚は残ってない。
できること言った、やった。
娘もそうだったら、いいんだけどな。
私たちの夏休みは、
あと三日。


