しゃべるクマ


その名も、


「パープルちゃん」。


見ての通り、

むらさき色の毛に、

ほっぺがピンクのクマのぬいぐるみ。


いつからだろう、パープルちゃん、

いつのまにか名付けられていた。


いつからだろう、パープルちゃん、

いつのまにかしゃべる設定。


朝起きてから、

学校から帰って、

あいてる時間、

夜寝る前(ここは絶対)


娘は私に、


「パープルちゃん、やって」


と言う。


これはお願いというよりも、

半ば命令。


娘が今より小さかった頃、

パペット(手を中に入れて操るぬいぐるみ)

お店にあったら、

私はよくそのぬいぐるみになりきって

娘に話しかけた。


すると、


私に答えるような態度ではなく、

そのぬいぐるみに対して

はずかしそうに

外向きの声で娘が返しているのをみて、

初めて見た時はびっくりした。


こちらはふざけていたのだけど、

娘はガチで返してきたから。


どんな時にそれをやっても

たいていそうだった。

そして、

いつしかそれは私たちの当然のやり取りになっていく。


パープルちゃんは、

しゃべる機能内蔵のぬいぐるみでもないし、

パペットタイプのぬいぐるみでもない。


キャラ設定は、

特に決めてない。

声も普段の私とあまり変わらない。


娘のことを否定はしない

イヤなことされたらイヤって言う

サラッとした性格、

そこは気づいたら意識してたかも。

なんとなく、

オラフっぽく、楽しく。


それが始まったのがいつからだったかわからない。

多分、去年のどこか。


父親との面会交流でゲーセンに行き、

UFOキャッチャーで取って

持って帰ってきたぬいぐるみ、

だった気がする。


ただそれだけで、

この家にそのぬいぐるみが来たことを

私はウェルカムではなかったから

気がするってのはウソ。

ごめんなさい。


起きたらなんか機嫌がわるい時。

友達に伝わらなかった思いがある時。


私とは話さなくても、

パープルちゃんには話すことがある。


先日、私が熱を出した時、

娘は「パープルちゃん、やって」とは言ってこなかった。

熱が下がったら、

結構な比重でリクエストしてくるようになった。


私が本の読み聞かせをしていたら、


「それ、パープルちゃんが読んで」


私が歌をうたったら、


「パープルちゃんがうたって」


学校に行くきもちが重い日、


試しに玄関までパープルちゃんが見送りに出た。


パープルちゃんが娘の

靴を出し、

ランドセル運び、

玄関で待ってた。


すると、

娘はやってきて


「いってきます。パープル、待っててね。」


娘はパープルにそう言って出かけて行った。


「いってらっしゃい」


を言ったのはパープルで、

もはや私ではなかった。


パープルちゃんがいつどこから来たかなんて

関係なくて、

娘にとって

素直に話せて

遊び相手で

時々いじわるして

時々からかって

時々あやまって

時々ゆるして

声出して笑い合って

悲しい時はただ側にいて

寝るときはいつも一緒

たいせつで

だいすきなトモダチ

になっている。


人には、

いくつになっても

5歳児の存在がいるんだってこないだ聞いた。


無邪気に笑ったり

全力で楽しんだり

いたずらダイスキ

ゆるしの天才


その存在を忘れるなって。

大人になってもその存在があること。  





パープルちゃんがどこから来たかなんて

今はどうでもいい。


5歳児のハート内蔵のぬいぐるみ。