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ようやくコロナ禍が明けて、通勤を再開し重厚本を避けていたので、久しぶりの長文本を。
理由は、図書館がシステムメンテナンスで9月の1か月間休館になるから。
どうせならじっくり読んでみようと。
著者の「暴力の人類史」も完読したけれど、今作はより難解だった。
全てが記憶に残ることはなかったが、人類は成長し安全に暮らせている理由は垣間見えた。
参考文献部分を除いたページ数は、
上巻426 下巻420 なのだが、内容がスッキリ頭に入ってこないので、読み進みは案の定時間がかかった。
いくつか腹落ちした部分はあったので、備忘録としておく。
上巻P190より
哲学者のハリー・フランク著2015年「不平等論」を引用し、
・不平等それ自体は道徳上好ましくないわけではない。
・好ましくないのは「貧困」である。
・誰もが同じだけもつことは重要ではない。道徳上重要なのは、誰もが「十分に」もつこと。
・問題は不平等そのものではなく、わたしたちが経済的不平等に対して偏狭な見方しかできなくなることにある。
・格差と貧困の混同は・・・
上記内容は、賃金を上げ続ける苦悩に直面している経営という仕事で、大変示唆に富む内容だ。
「十分」は人により異なるので難しいが、上下左右と比較する限り、永遠に賃金上昇は止まらない。
社員に対して働く意味をどこに持たせるのか、使命感や充実感、達成感や成長の実感などだろうか。
会社に対する愛着は宗教に近いというのが私の持論だが、なかなか難しいのは考えを浸透させること。
まだまだ仲間を増やすために頑張らなければ。
下巻P41より
アマルティア・セン「自由と経済開発」を引用し、
・皆が「イチゴのクリームがけ」を食べられるようになるのはいいとして、
好きでもないのに食べさせられるのはいけない。
・開発の最終目標は人々が選択できるようにすることだ
・食べたい人が「イチゴのクリームがけ」を食べられるようすること
哲学者マーサ・ヌスバウムは、
人間の本性として誰もが感じることのできる満足感や達成感として、
・寿命、健康、安全、識字能力、知識、表現の自由、政治参加
上記内容は、身体と精神の自由だろうか。ただしこの自由というものも厄介で、
義務とセットで定義しないと成立しないとは感じている。
例えば、寿命と健康はセットだが、暴飲暴食や喫煙など矛盾する行動をするのが人間だ。
仕事もしかりで、機会は与えることが非常に大切だと思っているが、適材適所の見極めが大切になる。
特に最近の管理職離れは会社として悩ましいところだ。
打席に立つ、土俵にあがる、という機会させ拒否する人が多い。
自信の無さなのか、個人の目標値が低くなっているか、悩みは尽きない。
難しいが、色々と示唆をいただいた本だった。