(最初の話はこちら)



○カフェ(夜)



「コーヒーで良かった?」



「うん、あ、ありがと」



「ここのねぇ、豆がいいんですよ」



「カフェなんてどこのチェーン店も一緒なんじゃないの?」



「微妙に違うのよ、それが」



「そうなんだ。

 あんまりこういうところ来ないからわかんなくて」



「男の人はそうかもね」



「女の人はよく行くよね」



「よく、かどうかはわからないけど、行く方なのかな」



「……」



「月がキレイだった、とか?」



「へ?」



「あそこにいた理由」



「はは。違うよ」



「そんなロマンチックな理由じゃないか」



「ロマンチックっていうよりは、

 センチメンタルな感じかな」



「ていうと?」



「いや、大したことじゃなくて。

 今日起きたときに、前カノのことを思い出したんだ」



「なんとなく?」



「うん。もしかしたら夢に出てたのかもしれないけど」



「それで?」



「そっから、今日一日、ずっと前カノのことを思い出すというか、

 考えちゃってて」



「うん」



「そしたら、どうしようもなく困っちゃうんだよ」



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○オフィス街・ビルの前の広場(夜)



「……」



「……ん、あ!」



「なにしてるの? こんなところで」



「びっくりしたー」



「待ち合わせ?」



「いや、そういうんじゃなくて」



「たそがれ?」



「かな……」



「何それ。なんかあったの?」



「別に何かあったってわけじゃないんだけど、
 何となくまっすぐ家に帰る気になれなくて」



「でも、今日、定時きっかりにオフィス出て行ったじゃん」



「ああ、うん。

 何だか仕事する気にもなれなくて。
 みんなに迷惑かけちゃったな」



「いいんじゃない?
 今、そんなに忙しくないんでしょ」



「それもそっか」



「……ふうむ」



「……」



「なーんか、ここ寒くない?」



「冬だからね。
 もう、帰った方が」



「私、コーヒー飲みたくなったな。
 ね、カフェ行かない?」



「え?」



「それとも、カクテルにしようか?」



「いや、ま、どっちでも」



「よし、行こうー!
 おごりってね」



「ちょ、ちょっと待てよ」




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○レストラン



「今の態度はないと思う」



「なんだよ、いきなり」



「今、店員さんが注文取りに来たでしょ?

 あなた、なんて言った?」



「なんてって、普通に注文しただけじゃん」



「違うでしょ。注文する前になんて言った?」



「なんか言ったかなぁ」



「店員さんが来るの遅いからって、

 『早く来いよ』って言ったでしょ?」



「それは、向こうが来るの遅いから言ったんだよ」



「それから注文終わって、最後に、

 『あと、水持ってきて』って」



「だって、水ないじゃん」



「じゃなくて。

 私が言いたいのは言い方のこと。

 なんでそんなに偉そうに言うのよ」



「偉そうかあ?」



「店員さんが来るの遅かったのだって、別にわざとじゃないでしょ?」



「仕事できねぇやつなんだろ」



「水だって、『お水もらえませんか?』って言えばいいでしょ?」



「何怒ってるのかわかんねぇんだけど。

 てか、オレは客だろ?

 金払ってるんだから、正当にサービスを受け取る権利はあるだろ?」



「客だからって、何言ってもいいわけじゃない」



「はあ?

 客なんだから注文取ってもらうのは当たり前だろ?

 水出すのも当たり前だろ?

 オレが払う金で、向こうは給料もらってるんだから、

 おかしいことないだろ」



「そうかもしれないけど」



「わけわかんねぇよ」



「あなたのそういう態度、私は見ててイヤになる。

 気持ちよくご飯食べたいのに、

 店員には何言ってもいい、みたいに思ってて」



「事実思ってるもん」



「礼儀って大事じゃない。

 相手も人間なんだから」



「だからー、金払ってるだろ? オレは。

 向こうはその金をもらってるだろ?

 なのに、なんでその上オレが愛想振りまかなくちゃいけないんだよ!」



「もう、いい。

 ごめん、忘れて。

 余計なことだったね」



「んだよ、それは」



「ううん。もう、いいから。

 ごめんね。

 ホント、もう、ごめん」

○カフェ



「なんかさー。話聞いてて思った」



「何を?」



「別れた方がいいよ、その女」



「やっぱし?」



「だって、あなたを都合のいい男ぐらいにしか思ってないよ、絶対」



「そこまで悪く思ってないと思うけどなぁ」



「あのね。

 寂しいだ、一人じゃいられないだ、適当なこと言って呼び出して、

 自分は甘えるだけ甘えておいて、

 いざ、こっちが連絡取ったら『今、忙しいから』だなんて、

 調子良いにもほどがあるよ」



「やっぱり、そうなのかな」



「そうだって。お人好しすぎるよ」



「だけど、彼女、甘えてくるときはホントに可愛いんだ。

 『ずっと、一緒にいてね、好きだよ』って言ってくれるんだ」



「好きなんて言葉、気持ちなくても言えるよ」



「……」



「ごめん、今のなし。

 確かに彼女は、あなたに甘えてるときは、

 あなたのことが好きで好きでしょうがないんだと思うよ」



「そうだといいな」



「でもね、彼女はカッコイイ男友達から、

 遊びに誘われると、そっちに行っちゃうんでしょ?

 あなたの誘いは断るクセして」




「うん、まぁ」



「それが本音じゃない。

 彼女はそいつのことが好きで、

 でも、あんまり相手してもらえないし、寂しいし、ってことで

 都合良くあなたを使って埋め合わせしてるのよ」



「……でもさ、

 僕はそれでもいいかなって、思ったり……」



「やめなよ」



「でも」



「やめな。

 いい結末にはならないし、最終的に苦しい思いをするのは、あなただよ」

「一番寂しいのはね、自分が落ち込んでどうしようもないとき、

 『ああ、どうしたの? 大丈夫?って言ってくれる人が誰もいないんだな……』って

 思うときだと思うの」



「友達がいない、ってこと?」



「ううん。友達はいるの。

 それに相談したら、きっと励ましてくれるんだと思うの」



「じゃあ、寂しくなることはないんじゃない?」



「だからといって、私が落ち込むたびに、電話かけたり、

 飲みに行ったりするわけにもいかないじゃない?

 みんな、それぞれ生活抱えてるんだから」



「まあ、それはそうかもしれないけど」



「たくさん友達はいる。

 けど、いざ、というときに相談できる人がいない。

 気にかけてくれる人がいない。

 それが一番寂しいことだと思うの。

 孤独を強烈に痛感するのよ」