雲ノ平縦走の3日目である。満員の三俣山荘に宿泊し、朝は前日同様に3時すぎに起床(目覚ましアラームが鳴らず、たまたま3時半に目が覚めて焦って身支度する、危ない危ない)。

 

4時に山荘を出発。外は星空で暖かく、三俣蓮華岳のルート上には既に何名かの登山者のヘッドランプの明かりが見える。ここから先は以前にも通ったことのあるルートである。筋肉痛と足の痛みが不安であったが、昨日別の靴下に履き替えたところ、つま先の状態は多少改善した感じがした。

 

僕の他に1名の登山者と同じようなペースで緩い傾斜を登ってゆく。ここから先は2019年8月に歩いたことがあり、何となく歩き覚えのあるルートで三俣蓮華岳に登頂した。既に数名の登山者がいたが、ここは先を急ぐ。段々と夜が明けてきて、今日もいい感じになってきた。

左側に影絵のような槍ヶ岳の稜線を見ながら独りで歩き続ける。8年前に来た時の印象ではもっと寒く、花が沢山咲いていたのであるが、今回はもう花の姿はなかったのが少し残念だった。その一方でご来光の朝焼けはかなりの迫力で霧がかかった感じも幻想的なシーンだった。

 

双六岳の山頂に着いた時には雲が出てきてしまい、期待していた槍ケ岳をバックに双六岳から見下ろすのお決まりの光景は見られなかった。それでも弁当を食べながら待っていた時に顔を出した槍ケ岳の山頂はそれはそれで見ごたえがあった。

 

双六岳を後にして壮大な景色の平原を横断し、ここから双六山荘まで一気に下る。つま先の痛みが心配だったが、靴下交換が功を奏したか昨日のような激痛はなく、いつものそこそこのスピードで下ることができた。

 

双六山荘には一応水があったが節水中とのことで少しだけ水を補給し、ここから再び弓折岳への登りになる。もう既に足の疲労が限界に達しており、全くスピードは出ない。天気はやや曇ってきており、いまいち景色は冴えないが体力的にはこの方が助かる。比較的ななだらかな尾根を登ると弓折岳にだどり着いた。僕の記憶では4年前の8月に来たときはこのあたりにはまだ残雪があった気がするのであるが、今回はまったく見る影もなかった。

 

前回見たような弓折岳からの槍ヶ岳は見えず、さっさと通過してその先の分岐から鏡平への急坂を降りる。さきほどの双六岳からの下りに続き、今回の急な下りについては昨日の足の状態であればかなりの苦戦になったと思う。

 

鏡平山荘はかなり数の登山者がいたが、鏡平も薄曇りで、前回に続いてお決まりの鏡池からの逆さ槍は見えない。時間にはやや余裕があるが、少し休んで出発した。ここからの下山もひたすら岩道下りで退屈であると同時にさすがに足も痛くなってきた。気温も高く日差しも強いが、もう日焼け止めを塗るのもめんどくさくなり、そのまま降りる。

 

やっとのことで岩道を通過し、ブナ林を越えてわさび平小屋に到着。しばし休憩してここから1時間ほどの新穂高温泉へ歩いてゆくが、この下りの坂道がまた地味に長い。歩きながら、今回はどうにか歩き通したが、もう僕にはこのようなルートは無理だなとつくづく実感した。

 

新穂高温泉に着き、残り少ない現金でバスチケットを買ってから飛騨の湯の風呂に入る。この温泉には今年の2月にも来ており、これまでも何度も入っているのであるが、今日はたくさんの登山者が入浴していた。

 

風呂に入ってスッキリしたところで新穂高ロープウェイのバス停に戻り、ここからはカード払いで立て続けにビールを飲む。12:55のバスに乗って平湯温泉に行き、そこで1時間ほど時間を潰して松本駅行きのバスに乗る。松本からは予約済の特急あずさで帰るだけなので安心、のはずだった。

 

あろうことか最後に痛恨の誤算が発生。松本行きのバスが渋滞に巻き込まれ、予約してあった16:30の特急あずさに乗車し損ねた。もちろん連休最終日とあって新宿行きの全席指定の特急は全て満席になっていた。

 

駅員さんに聞くと乗車券と特急券は有効とのことで、座席はないが乗車できるという。そんなわけで後続の特急に乗ったはいいが、途中から連結部分で2時間半ほど立ちっぱなし。しかもこの電車。トンネルが多くて景色も見えず、さらに結構揺れるので立っているのも結構つらい。あとで考えてみれば、バスの渋滞を加味して帰りの特急を予約すべきだったと自分の読みの甘さが悔やまれる。

 

何はともあれ今回はいわゆる弾丸登山のような工程だったが、天気にも恵まれて無事に帰ってくることができた。最近は登山事故のニュースも多く、もうそろそろ僕も過酷な登山はやらない方針であるが、行くときは十分に気を付けたいと思う。