ゴールデンウィーク以来の久々の登山となるが、9月の連休を使って北アルプス縦走に行ってきた。今回のメインは多くの登山者にとって一度は行ってみたいと定評のある北アルプスの秘境、雲ノ平である。富山県の折立登山口から薬師沢を経由して雲ノ平を越え、三俣蓮華岳、双六岳を縦走して岐阜県の新穂高温泉に降りる、2泊3日のロングトレイルである。

 

金曜日の夜、新宿バスタから深夜バスで富山駅に向かう。連休初日とあってバスは満席だったが、今回は後部座席の3列シートの予約が取れていたので快適だった。翌朝、6時5分に富山駅に到着し、ここから事前に予約しておいた富山地方鉄道の路線バスに乗り換えを予定していたが、いきなりトラブル発生。6:10分発のバスの発車時刻を6:20分と勘違いし、見事に乗り遅れた。

 

さあどうするか。思案した結果、ここから富山電鉄で有峰口に行き、有峰口発のバスに乗ることができれば予定より2時間遅れで折立まで行けると考えた。7時過ぎ発の富山電鉄に乗車し、1時間後に有峰口駅に到着。この駅で降車した乗客は僕の他に登山者男性2名のみ。「どちらへ行くんですか」と一応声をかけてみたところ、事前に予約しておいたタクシーで折立まで行くと言う。親切にも「一緒にタクシー乗って行きますか」と言って頂き、僕は何とか無事に折立に辿り着いた。これは本当に助かった。

 

折立で準備を整えて、8時50分に登山開始。天気は曇りであったが、気温は高く、短パンで登る。ここから太郎小屋までのルートは2015年9月に一度登っており、ルートは何となく覚えている。

 

順調に高度を上げてゆくと途中から視界が開けて、やたら長い階段と木道の登りが続く。予定より早く12時前には中継地の太郎平小屋に到着した。少し休憩してからさらにこの先の薬師沢へのルートに入り、今度はどんどん下山して沢に降りてゆく。下山時にだんだんと足のつま先に違和感が増してゆき、かなり痛くなってきた。時間は余裕があり、もう少しだからと我慢して歩き続け、何とか14時過ぎに薬師沢小屋に到着。小屋に着いた直後に雨が降り出した。

 

薬師沢小屋には多くのハイカーと、釣り人が来ていた。部屋は満室で僕の寝床は2段ベッドの下の段で良かった(上の段は上り下りが面倒なので嫌いである)。小屋は清潔で良いのだが、寝床に電気がなく、昼でもヘッドランプが必要だ。食事には気が使われていて、山小屋には珍しく、夕食のご飯やみそ汁もおいしかった。

 

翌朝は3時過ぎ起床し、外に出てみると満点の星空だった。風もなく、朝4時に一番乗りで小屋を出発した。ここから雲ノ平への登りは急登である上に滑りやすい岩が多い難路である。真っ暗の樹林帯をヘッドランプを点灯して登ってゆくと、ようやく空が見える場所に出たが、ここからの木道歩きが長い。両わきはハイマツが茂っていて景色も見えず退屈な時間が続いたが、奥日本庭園を通過すると視界が開けた。

 

ここからは雲ノ平の大平原のど真ん中の木道歩きになる。これぞ秘境みたいな感じ。奥の方にはポツンとカッコいい雲ノ平山荘が見える。日差しがきついのが難点だったが、人も少なくなかなか贅沢な景観だった。

 

雲ノ平山荘に到着してしばし休憩。この先の宿泊地の三俣山荘までは長い道のりである。足のつま先の痛みも悪化していて段々不安になってきたがこのまま登り続ける。もう少し涼しい登山を期待していたのであるが、暑さに耐えながら長い木道を登り、さらにその先の急登を登る。振り返ると雲ノ平全景とそのバックにそびえる薬師岳の絶景が一望できた。

 

祖父岳山頂に到着するとこれまでは見えなかった槍ケ岳が見えてきた。天候は快晴で風もなく360度の眺望だ。薬師沢小屋で受け取ったちまき弁当を食べ、しばらく休憩してから今度は鷲羽岳方面に下山してゆく。登りはまだ良いのであるが、下りの際のつま先の痛みが耐え難い。靴は以前から使っているものだったが、なんだか今回はしっくりこない。足の痛みもあり、ワリモ分岐に到着し、ここで僕はザックをデポして鷲羽岳に登り、戻って黒部川源流碑の巻き道を使って三俣山荘に行くことにしたのであるが、結果的には完全な判断ミスだった。

 

鷲羽岳まで行く途中、ワリモ岳までは行ったものの、この先また大きな下りと登り返しがあり、足の不安から引き返すことにした。置いておいたザックを回収して黒部源流碑まで降りてゆくが、この道の下りは不安定な岩がゴロゴロしていて想像以上に歩きにくく、足の痛みに拍車がかかる。照り付ける日差しと暑さの中、歩行者も少なく、足の痛みと自分のしょうもない判断ミスに絶望的な気持ちになりながら普通の人の半分くらいの速度でトボトボと降りてゆく。

 

ようやく黒部源流碑に着いたところ、レスキュー隊の見られる人達が数名おり、僕の歩いてきたルートに負傷者を見かけなかったと尋ねられた。そんな人は見かけなかったのでそのように応えて、その場を後にしたのであるが、その先の登りで登山者が救助されていた。肩を脱臼したらしく、その場から動けない状態だったらしい。

 

救助された男性はレスキュー隊に付き添われて三俣山荘に登ってゆく。幸い意識はしっかりしているようであるが、足元を見るとあまり見かけないスニーカーのような靴を履いている。僕自身の疲労もピークに達していたが、レスキュー隊の後ろを登って何とか三俣山荘に辿り着いた。

 

12時半過ぎに三俣山荘にチェックインし、自分の寝床でごろ寝しているとバリバリとヘリコプターの羽根音が近づいてきて、その後先ほどの遭難者が富山県警ヘリで搬送されていった。

 

ちなみに三俣山荘はなんと水不足で断水。たまたま黒部源流で水を汲んできたのがラッキーだった。しかし最近の山荘宿泊費は高く、水が出なくても食事付で14000円。富山駅でのバスの見逃しによる予定外の出費もあり、財布に現金が少なく、ビールは1本だけにした。

 

明日は最終日、また長いトレイルになる。