いよいよ中国では春節(旧正月)を迎えます。
今年は初一(旧正月の元旦)が2月3日。日本では節分と重なります。
中国人は日本人と同じく、年明けには縁起を担ぎます。
中国人の縁起の担ぎ方を知る上で、非常に分かりやすいのが庶民的な占いです。たとえば、中国の西安に行ったことがある人なら大半が知っているのが「餃子占い」という地元の真珠餃子を使った占いです。
西安の名物料理と言えば、包丁で麺を作る刀削麺と餃子が有名。西安の餃子は蒸籠(せいろ)で蒸し上げるぷりぷり感のある蒸し餃子がポピュラーですが、餃子占いで使う餃子は真珠餃子と言う沸騰したスープに入れるとっても小さな餃子です。
一般的に西安の名物料理「餃子宴」のコース料理の中で最後に出されます。餃子は一つの大きさが指先ほどしかなく、スープの鍋で煮込んだ後、均等割せず、茶碗に大胆に(アバウトに)取り分け、餃子の数で占うというもの。
真珠餃子の調理法は、義和団事件で清朝最後の女帝・西太后が西安に逃げ込んだ際、「従来とは違う趣向を凝らした食べ物を作ってほしい」と調理人に無理難題を押しつけ、苦心の末に創作したものと言われています。
たとえば、
■真珠餃子が1つ入っていれば「一路風順(順風満帆の意味)」に上手く行ける。
■2つなら「双喜臨門」でお正月とお盆が一緒に来るほどめでたいという意味。
■3つなら「三、六、九往上走」で3、6、9の一番ラッキーなナンバーでさらに出世するという意味。
■4つなら「四季発財」で一年四季を通してお金が儲かる。
■5つなら「五穀豊穣」で穀物がよく実り、豊作であると言われています。
いずれにしても、中国人は数についても縁起を担ぎ、吉祥に直結させて凶意がないようにするのがミソです。
中国で縁起を担ぐといえば、春節前に欠かせないのが団年飯(団圓飯、年夜飯とも言う)です。旧暦の除夕(大晦日)の晩、家族そろって食卓を囲んで食べる食事のことです。
日本でいえば、おせち料理のようなものと言えるでしょう。これを大晦日の晩に家族一緒に食べる。富裕層は団年飯を高級レストランで食べるケースが多いのですが、その値段が年々、急騰しています。
しかし、価格設定は大半のレストランが下二桁が88元(1元=13円)となっていて、演技が良いとされる末広がりの「八八」を必ず使います。高級レストランでの団年飯は、最近は春節の一ヶ月以上前から予約しないと個室は予約が確保できないほどの超人気ぶりです。
団年飯の献立にも、かなり縁起を担いでいます。
鶏料理や魚料理は必ず入るのです。鶏(ジー)は吉祥の吉(ジー)に発音が似ているという理由。魚(ユ)は年々有余の「余(ユ)」と発音が同じだからです。
中国の南方では、家族円満を意味する「圓」にちなみ、食事の最後にデザートで「湯圓」(白玉団子)を食べ、北方では餃子の形が元宝という古代銭と似た形であることから「招財進宝」の意味を持ち、年が新年に変わることを「交子(ジャオズ)」と言って「餃子」と同じ発音であることから、家庭で餃子を包んで食べます。
いずれも縁起を担ぐ中国の慣習と直結したものです。車のナンバープレートも同じように縁起の良い数字が並ぶと非常に価値が高くなり、香港では相当な高値で落札されることもしばしばです。
年々高価になる団年飯ですが、江蘇省蘇州のホテルでは、春節前に向けて、何と、38万8888元(1元=13円)の豪華な団年飯が作られることになり、最高額のメニューに自信を持ってオーダーを待っています。
やはり、下二桁は末広がりで縁起の良い88。8人用で、最高級のアワビやフカヒレ、ツバメの巣を用い、リムジンでの送迎などすべてのサービスを含めると、総額60万元に達するそうです。
蘇州では、この最高級の団年飯について「高額すぎて庶民には高値の花」「汚職官僚しか食べられない」などの批判も出ていますが、ホテル側は「ブランド高級時計や服でもこの額程度のものは簡単に購入されるケースもあり、食材や料理については決して高い買い物ではない」と胸を張っています。
庶民の間では、家族で一緒に食事をすることに重点を置き、高級であるかどうかは、問題とされません。日本の大晦日で恒例になっている紅白歌合戦に似た歌番組「春節晩会」が中国中央テレビ(CCTV)で放送され、みんな、それに釘付けになるという点では日本に似ています。
ともあれ、日本を抜いて世界第二の経済大国になった中国では、貧富の格差拡大が深刻化する中、こんな豊かさを象徴する食事の話題が注目される時代となりました。