第十話 青の力 | 炊き込みホビー倶楽部

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現在自主制作アニメ製作中。

「イソロクくん・・・ここから出よ。」
「あんず・・・なんでここに・・・」
「イソロクくんに会いに行こうと思って、東京へ向かったら、スカイツリーが光って・・・変なオジサンたちに、ここに閉じ込められたの」
「わかった。・・・なんとかしよう。」
とは言ったものの、どうしたものか・・・
乗ってきたはずのエレベータは、なぜかドアが開かないようになっていた。

冷凍庫のごとく冷えるその室内の片隅で、凍りついた巨大なセブンアップの缶だけがキラキラと光っていた。

イソロクは懐から、何かを取り出した。
鉄パイプである。イソロクは壁を力任せに
「がぁああああああああ」
殴りつけた・・・だが、どうにも、びくともしない。
「くっ・・・そぉ!!」
「俺の・・・」
脳裏によぎる、彼の発した謎の青い光を、彼は覚えていた。
「俺の力で、」
「俺の力で、何とか出来るかも」
「えっ、」
「見てろよ」
覚えている限りあの青の光を、集めた時のように。

56は鉄パイプを握りしめると、鉄パイプが青く輝いた。
56は、その鉄パイプを目の前に広がる凍れる壁に向けると、「力」を発した。
青の光は、氷の壁を砕き、氷の下の鉄板が露出する。
青い光が滝の水のごとくほとばしり、鉄板を貫き、風穴を開けた。
「やった!」
「イソロク君!なにそれすごーい!」
ヒトが5人は通れるほどに余裕のある風穴だ。
風穴を通り、外に出てみる。
目の前に広がる、灰色の草原、生ぬるい風。
どうやらここは、建物の三階くらいの高さのようだ。
56は思わず足がすくんだ・・・その時。
「イソロク!」
突然、あんずがイソロクを呼んだ。
あんずが指し示す方を見ると、眼下に広がる灰色の草原、そのちょうど56の真下の地面が、ぐにゃりと歪み、渦潮のように混ざっていった。
例えば、ブラックホール、ウルトラQのオープニング映像、そのように。
渦巻きは、その周囲の空間、空気までも、吸い込んでいった。
56、あんずは宙に浮き、なすすべもなく落下していく。

「・・・・ロク・・・君・・・」
「あんず・・・!」

巨大冷蔵庫の五階から落ちた56、あんず、二人を、灰色の渦巻きが飲み込んでいった・・・





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