日向の上光秀が、皆をとりなしてくれたお陰で、大広間
   いっぱいにごうごうと響いていた罵声が、次第に静まり
   始めた。
 「 殿!」
     頃好と見て、光秀が道参こと吉勝を促した。
 「 ん!」
    大きく頷いてから、重臣一人一人の顔をゆっくりと
   見てゆく吉勝。
    五十人近くの重臣たちの眼が、一斉に道参に
   集まり始めた。
 「 安泰を計るあまり、道を踏み外す
    所であったわ、許せ!」
 「 殿!」
 「 殿、それでは、、」
 「 おう!
   皆して築き上げたこの駿河の国をの、あのような小心者に
   渡すのは止めじゃ!」
  吉勝の野太い声が、大広間いっぱいに響き渡った。
 「 おう!」
 「 おおう!」
 「おお!」
 「 梅雪、秀家、もしもの事があるやもしれぬ、
   すまぬが帰ってのう、東への備えを固めてくれぬか?」
 「 は!」
 「 は、委細承知!」
   二人には、吉勝のこの言葉だけで充分であった。二人は
   すぐにも座を発ち、それぞれの城へと戻って行った。
  穴山梅雪、宇喜田秀家、ともに駿河の国の東備え、白鳥城、
  鷺城を預かる重臣中の重臣であった。

   つづく。読んでくれてありがとう! ナウシカ