八月十日、今日も道参は米の稔り具合、不審者の見回り
   を終え、八つ近くに帰城し着ているものを変えている
   ちょうどその時、光秀が廊下の板の間を蹴るようにして
   現れた。
 「 おお光秀、今日は早いの!」
 「 は、勘助が、、、戻ってございます。」
 「 おお、無事じゃったか!」
 「 はあ、それが、ちと様子が、、、。」
   光秀の口ごもるのを見て、吉勝は光秀の心を読んだ。
    " 人に聞かれたくない事でもあるらしい。”
   道参吉勝は小袖に手を通してから、
 「 案内(あない)いたせ。」
   と、光秀を促し、勘助の待つ間へと向かっていった。


   勘助を待たせている所は、天守閣のすぐ下の間、
  見通しが良く誰にも邪魔されない、風通しの良い場所であった。
 「 おお、よく無事で戻ったぞ!」
 「 殿! 今回のこの御縁談、私は大反対にござります。」
   吉勝が座るなり、鋭い視線を向けて勘助が切り出した。
  当の吉勝も渋い顔をしつつ、
 「 わかっておる!  時綱が事であろうが!
  内々耳に入っておるは!」
 「 あれは、国を滅ぼします!」
   勘助も負けてはいない。 皆道参に賛同してこの駿河の国を
  起こした強者なのである。
   さすがの道参も、眉根を寄せた。
 「 じゃと申して、我が国の左右を敵に挟まれては
  仕方あるまい。 この国を亡ぼすわけにはいかんのじゃ、
  こらえてくれい!」

   つづく。はてさてこの縁談の行方は? 次回をお楽しみに!
                    ナウシカ