覚書 | 19個の土星

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狩猟文学マスターピース (大人の本棚 )/みすず書房
¥2,730
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世にも珍しい、狩猟をテーマとした文学を集めたアンソロジー。

ほとんどのものは長い話なので、狩りのシーンを中心に抜粋されて収められている。

スポーツとしてのハンティングではなく、深い精神性を伴った、「生きる」ための狩り。命をかけて、命をとる、その息詰まる攻防と一瞬のきらめきが見事な文学となって昇華されているものばかりで、どれも原本を読みたくなってしまう。

自然の中に分け入り、命を授けてもらう、その敬虔さがなければ狩りは失敗する、そういう観念があらゆる作品の底に流れている。自然の中で生かされている、その不思議さを身をもって体験しているのが狩人たちだ。

私達はほかの生き物の命をもらうことでしか命をつなぐことはできないという事実を、つい忘れがちだ。そういう世の中で、「狩猟文学」というジャンルが実際にあってもいいのかもしれない。

狩人は昔から男と大抵は決まっている。この本を通読し、男は狩りをすることで自然を目の当たりにし、自然の中に生かされているということを身をもって知るのではないかと感じた。

翻って、女はどうか。私はこれを読んでいる最中、まさに出産のことを思い出した。女は狩りにいかなくても、妊娠・出産を経て自分の中に自然があることに気づかされる。ここでいう自然とは、「自然を大切に」という、人間様が守ってやらなければいけないような、甘ったるい予定調和の「自然」ではなく、もっと荒ぶる状態の、天地の摂理みたいなもののことだ。

今も女は出産するから、「自然」に気づける。狩りをする必要のなくなった男は、「自然」を感じることは難しいに違いない。気の毒なことだ。