この日の事は正直あんまり思い出したくない。
たった一言で、人生が変わったような1日だった。

細胞診の結果を聞きに行くだけだから、と
仕事も休みは取らずにお昼に2〜3時間だけ抜けさせてもらっていた。

悪い結果な事を想像しておらず、全然ドキドキもしていなかった。
病院の近くに大好きなパン屋さんがあるから、帰りに寄ろうとウキウキしていたくらい。


病院につき、名前を呼ばれ、診察室へ入る。
タマゴ先生が何やら深刻な顔をしている。










「あのね、結論から言うと…。悪性だった。」



「悪性っていうのはね、ガンって事。」















頭が真っ白になるってこういう事かと思った。
意外と冷静で、でもそれは受け止めての〝冷静〟じゃない。
自分の事じゃなくてまるで誰か違う人の事を聞いているような、夢を見ているような、そんな感覚。

この時の先生の表情や言葉だけは、何故かとても鮮明に思い出せる。
多分一生忘れない。


細胞診の結果を詳しく説明してくれている時も、ガンの説明をしてくれている時も、
全く現実感がなくて、
「はぁ…」「そうですかぁ…」「へぇ~…」
と、アホみたいな返事をしていたと思う(笑)



細胞診の結果はクラスⅠ~Ⅴまであるうちの
クラス Ⅴ。

悪性確定で、乳頭癌という癌の可能性が高いという事。

乳頭癌は癌の中でも大人しく、進行も遅く、まず死ぬような癌ではないという事。

45歳未満なら更に予後が良いという事。



大体そんな説明をされたと思う…。

私の腫瘍は12mmなので、選択肢としては

10mm以下なら微小ガンとして経過観察も可能なので、2mmをエコーの誤差として、経過観察→大きくなったら手術

とするか

これ以上大きくなる前にさっさと手術で取ってしまうか

の2つでした。





〝手術〟

その言葉が先生から出た途端に、一気に夢から引き戻されて目が覚めたようだった。
どんどん涙が溢れてきてしまった。




私、癌なんだ。
手術しないといけないんだ。
まだ29歳なのに…子供達だって…


「先生、私、子供が3人居るんです。」
ようやく発した言葉がこれだった。


子供達がいるから今すぐ入院は出来ないし、
子供達がいるから絶対死ねない。


そんな私の気持ちを察してくれた先生が

「そうか、それならやっぱり早く手術で取っちゃった方がいいと思うな。
でもそんなに慌てることもないから、子供を預けられる日なんかを調整してもらって、次回手術日を決めようか。」

と言ってくれた。


T先生「今日、まだ時間ある?いつでも出来るように手術前に必要な検査していっちゃおうか。」

午後の仕事まではまだ大分時間があったので、お願いする事にした。



待合室に戻るとナースさんが追いかけてきて、ガーゼ(何故かティッシュじゃなくてガーゼw)を渡してくれた。

「大丈夫?…じゃないよね。ビックリしちゃうよね。インターネットで調べたりしてみるといいよ。それで、分からない事あったらメモに書いておいて、あの先生はちゃんと答えてくれる先生だから。」

優しい言葉をかけられて、また泣きそうなのをグッと堪えた。








たった12mmの癌。
この小さなカタマリに、心も体も翻弄される日々が始まるのだった。