わたくしボー君の住んでいる地域はまごうことなき田舎です。地区にもよりますが土地の坪単価がだいたい20万円ぐらいで、最新のマンションも一部に限られています。2040年時点での消滅可能性都市入りはなんとか免れておりますが、それも時間の問題と言えるレベルで、毎年毎年バンバカ人口が減っております。地域の産業は農業等一次産業の他には公的部門と一部大企業の工場などに限られており、地元の求人を見てもまぁトラックドライバーか介護士ぐらいしかございません。給与水準もかなり低くくてキャリアアップという言葉の居場所もございません。単純に総括して言うと、豊かに暮らしていくのが困難な地域なのです。

 

僕がお家を購入したのは今年2023年の4月でして、コロナ禍に伴う戸建てブームがすでにピークを過ぎた頃でした。コロナ禍により在宅勤務が急速に普及し、マンションではなく在宅勤務スペースが確保しやすい戸建て購入がブームとなり、またリモートワークによって地方への移住の敷居が下がりました。戸建てブームも、必然的に、土地価格が跳ね上がる都心部より坪単価の安い郊外で家を購入する方向へと流れていきました。

 

で、それがぱったりと止んだのが2022年末ごろ。原因は在宅勤務の減少と郊外の分譲地価格が高騰したことと言われております。僕が現居に住んでいるのはリモートワークのためなどでは全然なく、単に奥さんの実家が近いから、という、関西御家庭あるあるな理由です。というわけで、僕の判断は、経済的合理性からは程遠いものでした。

 

はっきり言って、地方に家を建てる(買う)というのは、山の中に籠って陶芸家になりたいとかそーゆー極めて特殊な資本主義経済と縁遠い仙人界の住人以外にとって、つまり世のほとんど大多数の人間にとって、その地に地縁血縁がある、という場合の他はあまり合理性のない選択肢だと思っています。

 

そりゃ、とにかく家を建てたい、何が何でも自分好みの注文住宅を手に入れたい、というのであれば、出来るだけ広い土地を安く手に入れるために土地坪単価の安い地方に住む、という選択肢が昇ってきますが、実際に田舎で生まれ田舎で育ち、地方に住むこととなった僕から言わせてみれば、どこに住んでも高給取りになれる特別裕福な人々以外にとっては非常に危険な冒険のように思えます。

 

地方住の日常感覚として、視界に映る街頭の通行人の少なさ。車社会なので移動は基本的に車、そのため歩行者が少ないという事情があれど、逆に言えばガソリンへの依存度が高く、円安進行に伴う輸入物価の高騰が直撃する社会でもあります。慢性的な貿易赤字と円安が、きわめて長期にわたって原材料輸入にかかるコストを押し上げることは目に見えていますし、今のガソリン補助政策が慢性赤字財政の政府にとっていつまでも続けていけるものなのかも不透明です。

 

そして人口減少の負のループ。そもそも地方の生活コストはそんなに安くない。物価が安いと言えど、移動が基本的に車なのでガソリン費用や車の維持費代がバカにならず、生活コストはそこまで有利になりません。一方で労働市場は都会に比べて圧倒的に貧相。正社員の求人にあるのはトラック運転手等の物流関係(なので必然的に男性に限られる)か介護現場(女性が多めになる)で、年収も500万円を超えるものは限られているし、介護現場なんかはほぼほぼブラック薄給。しかも上記以外の求人はほぼパート・アルバイトのみ。収入は都会より圧倒的に低いのに生活コストはあまり変わらないと、経済的には良いところがまずない。なので、おカネがたくさん欲しい若い人々は次々都会に出ていき、逆に地方に行って貧乏になりたいという都会人はいないので生産人口は流出するばかり。人口が減ると市場が縮小し、大型商業施設は閉鎖し求人は減少、個人店は閉業、店が少ないので不便になり、さらに人は来なくなる。地方に住んでいると一番恐怖を感じるのがこの点。商業施設からテナントが一つまた一つと撤退し、薄暗くなったフロアの光景は地域の暗い将来を如実に感じさせるもので、まさに背筋が凍り付く思いになります。

 

インフラの未来も不安。人口減少と労働不足、経済縮小の避けられない地方で、将来的にインフラをどこまで維持できるのか?田舎と言えど古の自民党の利益誘導政治のおかげで道路だけは無数に張り巡らされています。国道はまだしも無数にある市道、県道をメンテナンスできるのか?今でさえ穴ボコだらけで、時たま見る道路工事の作業員は軒並み高齢者ばかり。擦れていくばかりの路面標示の白線が引き直されないまま消えていく未来がくるのではと不安でしょうがありません。加えて網の目のように縦横無尽に引かれている電線や水道管。いまは大丈夫でも、地震や台風など、激甚化する大規模災害が起きた際に復旧できるのか?大地震で電柱の倒壊や電線の切断、水道管の破裂・破断が各所で一度に起きた場合、労働不足が深刻な地方で復旧作業がどれほど遅延するかは想像するのも怖くなります。それも人口が一気に減少する20年後に起きたら、もう人が住めなくなるのではと思わざるを得ません。

 

極めつけは食糧事情。え?地方なんだから畑や田んぼがいっぱいあって、安く手に入るんじゃないの?と思うでしょう?しかし、農業の担い手・後継者が全然いないうえ、しぶとく生き残っている不動産開発業者がバンバン農地をぶっ壊して分譲地に変えておるんですよ。せっかく農業に向いた肥沃な土地がぶっ潰されて、鉄筋コンクリートのどでかい基礎をおかれ、アスファルトを敷かれ、二度と農地に戻せなくされているんです。農家の廃業と耕作地の減少は続いていて、野菜等の基本的な食料も自給できないとなり輸入に頼るとなると、物流コストが嵩み、かつ市場が貧弱な地方は、食料の獲得にかなり不利になるのではと思っています。僕の地元でも、子どものころ広大な稲作地帯だっとところに何台ものショベルカーが入り込んで、まるごと田んぼを潰して均しているところです。人口減少のこの時代の田舎に、こんなドでかい分譲地を作ってホントに捌けるんかいな?単に耕作地を潰してなんの生産性もない空き地だけが売れ残る、なんてことにならないだろうな?と今から心配しております。

 

と、色々と暗い内容のことを書いてしまいました。

 

 

でも実際、地方の未来は暗いからね。そこは嘘ついてもしょうがないのでね。

 

 

僕も奥さんも、地元のことについてはヤベェよな、しか言ってません。じゃあそんなところに、奥さんの実家が近いってだけで家買うなよ、って話ですが、そこはしょうがない。家を買う、建てる、となると、極めて不合理な理由で敢えてそれをやる、ってパターンが、この世にはまぁまぁ存在するというのも事実なのです。

 

僕は地方に家を買った上で不安を拭えないタイプの人間です。今現在アラフォーに片足突っ込んでるわけですが、だいたいマイホーム購入のボリューム層が35歳前後として、人口減少社会の本番を迎える2040年ごろには50歳を超え老後の玄関口が目前に迫っている年齢です。その年齢で地方社会の崩壊を迎えるとなった時、いったいどれだけの対応が取れるでしょうかね?資産を持っているならまだしも、今の時点でしがない年収500万弱高卒程度公務員であっては、ほとんど何も持たない、社会の動きに抗えない一般市民の一人にすぎないでしょう。

 

正直言って不安じゃない?まぁ、人間だれしも不安を抱えて生きているもんだけども。