値上げの春だの夏だの秋だの冬だの言われてもはや久しいですね。

 

何事も値上げ値上げの連続で、住宅ローン返済に追われる我々マイホーム界隈の人間としては延々と正念場が続いております。

 

物価指数は、2020年比で公表値で消費者物価が5%増、企業物価が約10%増とのことですが体感的には全っ然そんなことなくて、小売りスーパーの商品値上げは一度に10%ぐらい一気に膨れ上がるのがフツーですし、僕が職場で調達担当している必需品なんか、2020年比でガッツリ4割ほど値上がりしています。

 

実質給与の上昇を伴わないインフレは一般市民の家計を直撃していて、じわりじわりと首を絞めつつありますね。このまま物価上昇がとめどなく続けば、どこかで家計が回らなくなるのは必然であります。

 

なんて時代に、僕のGoogle discoverちゃんがとんでもない酷い記事を拾ってきました。

 

評判の悪い某言論プラットフォームを名乗るサイトの記事で、こんなとこの記事拾ってくるんじゃないよ悪いdiscoverちゃんだなぁ、と思って読んでいると、案の定ひっでぇ記事でした。

 

記事の内容を端的に言うと、ガソリン代の値上げなんか大したことない、騒いでるのはバカ、みたいなもので、根拠としている前提が

 

 

一般人は年間に6,000キロくらいしか車に乗らん。10円値上げしても大したことない

 

 

と、地方に住んでいる人間はスッ転んでしまう内容でした。

 

当然、地方の通勤・生活事情ではとても年間6,000キロではすみません。

 

ということで、それに関しては

 

 

交通の便の悪いところに住むのは個人の自由

 

 

つまり、田舎に住んでるお前が悪い、という理屈に続いて

 

 

地方財政は東京都をからの所得移転でもってる。地方民のガソリン代のために東京都民の血税が使われてはならん

 

 

といって、地方民なんか放っておけと主張。

 

 

賢明な、というか常識的な読者の皆さんであればお分かりのことと思いますが、たかだか人口1,400万人程度の東京都民が日本全体を支えられるわけがなくって、日本は残念ながらIT産業の育成に失敗し、今でも20世紀型の製造業に依存しているわけで、つまり工場の存在する地方なくして成り立たない国であり、なにより地方から貴重な労働人口を吸い上げつつ低出生率に落ち込む都心部はむしろ地方に養ってもらっている側であります。それに、ガソリンの値上げは流通コストを押し上げて生活必需品の値上げを推し進めるし、さらに現代農業はガソリンなくして立ち行かないわけですから、ガソリン高騰は食糧安保を直撃して国の未来を左右するレベルの事態です。

 

統計上の数字だけでなく、現実を見ればこんなことはすぐにわかるんですから、こうやっていちいち間違いを指摘すること自体が不毛なんですけど、それより問題の根幹は、この記事を書いた人が

 

 

目先の5秒間の自己利益のためだけにトークする無責任な大人、だということです。

 

 

おそらくこの人は、マクロ的な社会のあるべき姿、例えば弱者を切り捨てない、だとか、富める者から貧しいものへの所得移転、だとか、そういったモラルが存在することを知っていながら、めんどくさいからつって無視しているわけです。

 

自分のためだけの目先の利益だけを追求して、文句を言う他人を馬鹿にして威嚇して煙に巻いて勝利宣言できれば人生勝ち組だ、賢い生き方だ、と、そういうわけですね。

 

筆者のプロフィールを調べていたら集客が専門とか書いてたので、単に幼稚なだけでなく、おそらくこの記事は耳目を引くため故意に書いたものでしょう。よけいあくどいですね。

 

問題は某言論プラットフォームを称するサイトで、記事の末尾に、筆者のブログからの転載である旨が書かれています。転載であるから自分たち編集部に責任はないとでも言いたげですが、だからなんだよって話で、結局筆者と同じで、善悪も考えず集客できればなんでもいいから酷い記事をまき散らすぞ、ってことですね。

 

 

放漫財政と向こう見ずな金融緩和をツケを、物価上昇と実質的な増税で払わされている真っ最中ですが、市井の人々にとって状況はますます悪化すると思います。そのたびに、この手の汚い大人は人の苦しみに乗じて耳目を集めようとしゃしゃり出てくるでしょう。SNSに、テレビに、そして政界に。そのたび、無辜の誰かが尊厳を傷つけられるのだと思います。

 

嫌な世の中ですね。

 

僕が小さい頃はまだ、次の世代に自分と同じような苦労を経験してほしくない、が口癖の老人たちがいましたが、今はそんな人も減り、代わりに、努力が足りないだの我慢が足りないだの、自己責任だのなんだの、耳障りで不愉快な声ばかりが音量を増し気分が悪くなります。

 

こんな時代でも、せめて自分だけは大人としての矜持を失いたくないもんですね真顔