【5月27日追記】
従業員数が概ね20名までの企業について雇用調整助成金の申請が大幅に簡略化されました。
札幌、すこしずつ花が咲いてきました。いつものペースなら来週くらいには桜と梅が同時に咲く感じですが…
※4月30日追記 NHKスペシャルからの引用です。4月20日頃の実数として、「申込数11万件」に対し「支給決定60件」という状況とのことです。
最近、コロナ関係の記事を続けて書いています。「フクザツそうだから」という理由できちんと調べてこなかった、雇用調整助成金、どうして受給が難しいのか、どんな企業なら受けられるのか、を考えました。
…調べていくうちに、「雇用調整助成金の受給を目的に持ってくるのは危険」ということがわかってきました。
したがって、先に書いた、「どうやったら受給できるか」「どんな企業なら受けられるのか」というのは質問の立て方がそもそも間違いです。
正しいと思われるのは、
「カイシャも苦しいが社員に辞められたらコロナ後の巻き返しのときに困る。辞められないように社員に休業補償を出すことを決め、順次休業をさせた。で、これは助成金の対象になるのか?」という問いかけだと思います。
「助成金が出そうだから休業手当を出す」という発想ではダメで、まして「給与を出すつもりで休業手当支給と言う態にしてそれを助成金で埋める=人件費をこの助成金でまかなおう」という考えは全く成り立ちません。
今回、「手続きが煩雑」という批判を受け、記載事項を73事項から38事項に半減させた、とのことですがそれでもかなりのボリュームになります。なぜなら、「休業すると決め、労使でそのことについて合意する」「その合意に基づいた休業計画を作り、一度申請」「それに沿って実際に休業を行って支給申請できる」という仕組みである以上、簡単にするといっても限界があります。
まず休業計画を提出、そのあと実際の支給申請、という流れになりますが、
休業計画提出時には、労使間協定を結び、その上で休業を実施。実施後、タイムカードなど勤務実態のわかるものを添付して助成金を請求、ということになります。つまり、不正を行おうとしても発覚しやすいのです。労使間協定を結べば従業員側にも休業予定、ということがわかります。タイムカードに休業の事実が記録されていなければ支給申請もできません。
苦しい経営状況の追い込まれた事業主の頭には、「架空の休業計画を作り、助成金をもらう」という考えがよぎるかもしれません。
しかし、不正があれば、①助成金の返金、②延滞金の加算、③助成金の20%相当額の追加納付、という処分があります。そのうえで労働局から事業所名が公表され、その後は5年間、雇用保険料を財源としたすべての助成金を受けられません。
この処分は厳しく、不正受給にかかわった役員等が他の企業で役員になった場合、その企業も助成金支給対象外となります。また社会保険労務士が関与した申請に不正があった場合、社労士も返還請求の対象となり、その社労士は以後5年間助成金の申請ができなくなります。
(以下、雇用調整助成金の中小企業対象の事項について、休業補償の部分のみまとました。教育訓練にかかる部分は省略しています)
【雇用調整助成金の仕組み】
自社の労働者に対して一時的に休業を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、休業手当、賃金の一部を助成するものです。
対象者は雇用保険適用事業所の全て。(新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主、すなわち全ての事業主)
条件は、「売上高、販売高、生産量など生産指標が1か月間5%以上落ちていること」となります。
【助成率】
休業手当 の4/5
解雇等を行わない場合 助成率は 9/10へ上乗せ ※この部分はさらに上乗せがあり、60%を超えて支給する休業手当についてその超える部分は10/10支給
ただし1日当り上限は8,330円
例 1日の平均賃金を 12,000円とすると、
12,000円×休業手当支払率(60%以上が条件、ここでは60%とする)×助成率(4/5)=5,760円
これは8,330円以下なので全額支給、という計算になります。
このとき、企業が払うのは、7,200円ですので差額の1,440円は企業負担、ということになります。
ここで計算された、5,760円が翌月以降、助成金として支給される、という流れです。
4月25日追加措置
新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき都道府県対策本部長が行う要請により、休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営する事業主であって、これに協力して休業等を行った場合、
①労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていること
②上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っていること(支払率60%以上である場合に限る)
のいずれかに該当すれば10/10支給、となります
ただし、詳細は5月上旬発表、と。
【雇用保険被保険者か】
支給対象労働者は雇用保険被保険者である従業員。社員さんの雇用保険加入期間が6か月未満だったり、加入していなかったりしても対象に。
労働時間が週20時間未満で雇用保険被保険者でない従業員の休業も対象に。
勤務期間6か月未満の社員も対象。
内定後1日も勤務していなくても対象。
【条件緩和など】
従来は事業所全体の一斉休業が条件だったが必要な人員を残しての休業や、部門ごとの休業も対象になりました。
【風営法関連事業者】
従来は性風俗関連特殊営業は対象外→今回は対象に(しかしながら、雇用保険適用事業所かどうかがネックになります。そうでない場合は労災保険適用事業所ならOKという特例がありますがそれが当てはまる風営法事業者なら…)
【不支給要件該当でも対象とする】
労働保険料の未納がある場合、過去労働関係法令違反をしている場合は従来不支給としていたが今回は一定の条件を満たせば対象とする、とされました。(所轄労働局に照会を)
【実際申請するとなると】
- 社労士が受けてくれるか …自分の顧問先のみ受託します、という社労士さんが多い。顧問先以外の会社の単発の依頼を受けると間違いが入りやすいし、万が一不正に巻き込まれるようなら自分の信用を無くしかねない。
- 自力で申請 …通常時なら、提出先である労働局かハロワに出向いて書き方の指導を受ける、という流れになりますがすでに混雑がひどくなっており、なかなか電話もつながらない状況になっています。もたもたしているうちに申請期間終了、になりかねません。
ということで非常に難しい、というのが実態です。
取り急ぎまとめてみました。