何気なく読んだ本です。思わぬヒントになりました。

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 弊社においでになる方は事業再生のご相談で来られる方がほとんどです。症状としては「資金ショート」を起こしてこられるパターンです。

 創業以来300社以上のご相談を受けました。その中で、「失敗する社長のパターンを明らかにできないか」とずっともやもやと考えていました。そこをくっきりさせることができれば経営破たんを事前に予防することができるかも、と思ったのです。

 そのヒントになったのがこの本の一節です。

 「アメリカで創業する社長は自分が経験した業界で独立をする。独立の理由としては『人の下で働きたくないから』。42%の社長は独立に際し、『こんな会社にしたい』という目標を持たずになんとなく独立する」

 そうか。

 おそらくは日本国内、北海道内の起業の事情も似たようなものでしょう。(この辺はこのあといろいろと資料をあさってみます)

 つまり、「何かがうまくいかなくなって事業再生に進む」のではなく、

 「もともと経営者として鍛えられているわけでもなく、これといった確固とした理由もなく独立した」以上、ちょっとした経営上のトラブルがすぐ企業の危機に発展してしまうのは当然なのかもしれません。

 アメリカの起業風土についてもう一つ別の方向から。「ポジティブ病の国、アメリカ」。

ポジティブ病の国、アメリカ
ポジティブ病の国、アメリカ

 アメリカにおける貧富の差の広がりはひどいレベルになってきています。所得額のトップ1%が所有する富は20%に及ぶ、と。さらに地域別ではNY市ではトップ1%が全市の45%の富を独占するというレベルにまで達しているそうです。

 富めるものはさらに富み、貧しいものはさらに貧しくなっていくという今のトレンドが表れ出したと同時にアメリカではやり出したのが自己啓発です。危機にも動じない。自分をしっかり保つ。チャンスは必ず来る…式の思考です。これ自体を否定するものではありません(それどころか事業再生の現場で私が言っていることそのものです)。問題はこれらが貧富の差が広がることや一時的に貧しくなることについて心理的なクッションのように使われていることだと思います。

 …安易な起業姿勢の裏にはこのようなアメリカ独自の事情もありそうです。

 アメリカの起業というと、失敗しても失敗してもどんどん会社ができ、それを支援する投資家がいて…というイメージがあります。ちょっと思いだすだけでも「ケンタッキーフライドチキン」「スターバックスコーヒー」「サウスウェスト航空」「アップル」「デル」などの例が思い浮かびます。しかしその実態は…

「アメリカの人口比の起業率は横ばいでトルコやチリに比べると圧倒的に低い」

「バイオやIT関連の起業よりも建設や小売りといった成功しにくい伝統的な業種での企業が多い」

「大抵の企業は経営者個人の貯金を資本金とし、個人的な借入、企業間の借入、銀行借入で資金を調達する」

 勉強になった本でした。

〈起業〉という幻想 ─ アメリカン・ドリームの現実
〈起業〉という幻想 ─ アメリカン・ドリームの現実iPhoneからの投稿