道内の税理士・公認会計士の方々へ。 (長文ご容赦)

 1昨年、北海道税理士会旭川支部の研修会に初めてお招きいただいてから道内各地の税理士会で前後6回、延べ400名弱の税理士・公認会計士の方々の前で事業再生についてお話しをさせていただきました。

 今日は皆さんの顧問先企業のケアについてのお願いです。

 震災から1週間が経過しました。

 被害の全容が明らかになり始めてくると同時に震災の北海道経済への影響も見え始めてきました。
 
 大きく分けて、「消費者心理が震災で影響を受けるもの」と「物流が寸断されることによるもの」に大別されると思います。

1.飲食店 震災以後、少なくとも今月いっぱいは人手が減り売上減少
2.小売店 災害対策グッズや保存食など一部の品物を除いては購買意欲がダウン
3.美容、エステ 次の施術までの期間が空くのでは

 不幸中の幸いは、東北関東のように計画停電がないことです。関東地区のようにランダムに電力供給が止まり、帰りの電車が動くかどうか不明、という状況になると正常な営業をしろという方がムリです。

 阪神淡路大震災の時のことを思い起こしても一時的に消費は下がりますが比較的短期間で必ず戻ります。

1.建築業、内装業など 資材不足は起きていないか 実際に資材が入らず、完工が遅れ始めた、というお話しをお聞きしています。本州であればこれから本格的な復興需要がでますのでプラスに働く面もありますが道内の建設業がすべて本州の業者にコネがあって下請けに入れるかというと疑問で、復興需要による影響は限定的、と思われます。

2.製造業、農業、漁業 動力減であるガソリン、重油などの供給に支障はないか 供給が安定するまでの間フル操業できない

3.運輸業、バスタクシー 2.と同様、燃料の安定供給がないと稼働が落ち、売上減に直結します。燃料の値上がりがあってもこの業界には厳しいインパクトとなります。

4.本州方面の物流の復活 物流が止まっている間モノが動かず、納品できない分、売上減へ

 とにかく、間接、直接を問わず、ほとんどの道内企業も影響を受け始めているはずです。

 そこで税理士の先生がたにお願いがあります。まずは顧問先の「守り」を固めて下さい。

 まずは顧問先がどのような影響を受けたか、必ずチェックを入れていただきたいと思います。聞き取りのポイントは、

1.影響は、前記の消費者の心理によるものか、モノ不足によるものか
2.影響額は?
3.(ここが大事)資金繰り上耐えられる範囲のものか

 耐えられる範囲であったり、借入枠に余裕があり銀行融資が受けることで乗り切れそうな会社はひとまずOK、ということになります。

 ※今回の震災で道内企業が利用できる特別融資制度・特別保証制度は「ない」と思って下さい。詳しくは昨日の記事で。道内企業向けに通常枠・セーフティネット枠と別に「震災枠」を作る動きはいまのところありません。

 問題はこれから先です。資金ショートが見込まれる顧問先についてです。パターン別に書きます。

1.保証枠が一杯、などの理由で借入もできない場合

 すぐ金融円滑化法に基づく返済条件緩和(リスケ)を銀行あて申込み。リスケしても回らない、という会社もあると思いますがとにかく資金流出を最小限にする、という観点から申し込みを行います。銀行から経営改善計画は?と言われた場合には、「追って提出します」と。
 リース会社もリース料支払いを後ろに寄せる形でリスケに応じるケースがあります。

2.すでにリスケを受けている場合

 返済をしている場合には元金返済棚上げへ。リスケのリスケはない、のが原則ですがそんなことは言ってられません。

3.リスケで資金ショートが解決しない場合

 通常の支払いサイクルの中のものについて支払いを遅らせることができるものはないか、検討します。

 共通して言えることですが、「資金ショートを乗り越えないと企業は存続しません」。そこの見切りが重要になります。

 どうしても資金ショートが不可避でショートを埋めきれない場合でも、「イコール破産」ではありません。税理士の先生方にお配りした、「銀行対応完全マニュアル」を参考にアドバイスをしてみて下さい。お手許にない、という先生方にはお申し出いただければすぐお送りします。

 資金ショートを乗り越えられる目途がつけば、あとは少し時間をかけて事業改善計画を練ることになります。

 今回の震災で失った売上をどこで取り戻すか、ここで初めて「攻め」の面が出てきます。

 今回の震災について対応をしていくことは、税務・会計のみ行っている(と顧客から思われている)会計事務所・税理士事務所がコンサルに踏み出す絶好のきっかけでもあります。
 
 また、専門的なケアまで進めない、というケースでも、電話一本で被害状況を聞き取りするだけで経営者の心は和らぐと思います。

 是非、顧問先のケアをお願いいたします。