平成20年もあとひと月足らず。

 先週の広島出張の際、何冊か本をバッグに放り込んで出たのですがその中の1冊が「当り」でした。私的には今年読んだ本のNo.1.

 青森県でリンゴ農家をしている木村秋則さんという方の半生を描いた本です。

 リンゴ農家をしていた木村さんはあるとき自然農法の本と偶然出会います。

 リンゴ作りの傍ら、自家消費用に作っていた稲や野菜の畑で無農薬自然農法を試すとこれがうまく行った。

 ではリンゴも…とトライしたもののこれが「地獄への道だった」と。

 減農薬まではうまくできたものの無農薬にすると春にでた葉が秋までにすべて落ちてしまい、花も咲かない。

 いきなり無農薬にしたので害虫が大発生しそれをひたすら手仕事で駆除する日々が…なんと8年続いたといいます。リンゴ農家ですから当然その間無収入です。

 そして精根尽きはてて首をつる縄をかけるのにちょうどいい木を探して岩木山に分け入ったのだそうです。

 按配のいい木が見つかり縄をかけようとしたところ縄がかからず坂の下に飛んで行ってしまい…その縄を拾いに行って目に入ったのは山の中にしっかりと根付いていたリンゴの木だったそうです。実際はその木はどんぐりの木でどんぐりの実が月明かりに光っていたのをリンゴと見間違えたのです。

 しかし、そのとき木村さんは気づきます。

 この木の葉は青々として虫に食われた跡もない。病気にかかった跡も…自分の畑のリンゴとなにが違うのか…?

 そこで行き当たったのが土。その場所に生えていたのは密集して生えている雑草。「そういえば自分のリンゴ畑の雑草はきちんと手入れしている…」

 そして最後のトライ。雑草を生え放題にしたところ、虫が発生しそれを食べる虫が集まり、それをさらに食べるカエルや蛇が集まり…とどんどん自然に近い状態になっていったそうです。

 つまり、もともと自然の中で実をつけるようにできているリンゴを人工的な環境(リンゴ園)で隔離するように育てるのではなく、自然に抱かせるように育ててみた、ということだそうです。

 そして8年間花をつけなかったリンゴに花が咲く日が来ます。そして収穫されたリンゴはいままでとは全く別物の果実に。木村さんのリンゴを食べると芯までやわらかく本当にタネしか残さずすべて食べられる、とのこと。


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 青森県が台風被害に直撃された年も隣の畑からリンゴの木が飛ばされてくるような強風にさらされても木村さんのリンゴはほとんど落ちずに収穫を迎えられた、と。

 …あるときからリンゴの気持ちがわかるようになり、リンゴと話をしながら育てている、という木村さんですが、リンゴが花をつけなかった時期に声掛けをしなかった一列のリンゴだけはその後樹勢を回復することなくすべて枯れてしまった、というくだりでは鳥肌が…。

 題材はリンゴですが「天」「自然」「運」そんなものを強く感じました。

 もともとはNHKのプロフェッショナルに2006年に取り上げられた方でそのときの取材をもとに改めてインタビューを重ね、ライターの方が木村さんのリンゴ畑の風に吹かれながら書いた本、とのことです。

 深い読後感が残ります。



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