
これは昨年から発足した資格試験である。
事業再生においては「自称ターンアラウンドマネージャー」的なコンサルタントが散見され、中には火事場泥棒的に資産を換金しコンサルティングフィーだけとっていなくなる者もいたと聞く。
そこで再生分野の知識と経験を持つものを独自に認定する資格制度が発足した。これが認定事業再生士(CTP)である。この肩書があれば事業再生分野において「実践的な専門知識、経験、そして倫理観をもつプロフェッショナル」ということになる。
これは日本事業再生士協会主催の資格試験で「経営」「会計・財務」「法律」の3科目の筆記試験に合格し、かつ3年以上5件以上の再生経験を持ち、協会所定の倫理規定遵守に合意した者のみが認定を受けることができる。またその際に日本事業再生士協会の会員(=すでにCTP資格を持っている者)3名の推薦が必要となるため間接的にCTPの人となりが協会側からはっきり分かる人でなければ資格を取れない、というところがミソである。(詳細は日本事業再生士協会公式ホームページへ)
平成18年に第一回試験が行われ、78名が受験し最終的に30名ほどがCTP認定を得た。北海道からは私を含め4名が合格した。全合格者が30名であるのでシェア的にはまずまずではないだろうか。また、さきほど「推薦が必要なため人となりがわかる」と書いたがこの4人は全員がSRC札幌支部で研鑽を積んでおり、受験前からお互いが顔見知りの関係にあった。
認定までの流れをまとめてみると、
1. 筆記試験(4月) 慶應大学で実施された。その直前に受験予定者を集めたガイダンスも行われていたが「だいたいこんな試験か…?」という事前予想は見事に裏切られた。一緒に受験した方々の感想も大体同じで出来の善し悪しが全く予想できない、「手ごたえのない」試験だった。ちなみに今年のガイダンスでは私が「経営」科目のガイダンスを担当させていただいたがお役に立てたかどうか。実際に受験された方のお話を聞くとやはり手ごたえはなかった、とのことだった。
2. 筆記試験合格発表(8月初め頃) 郵送にて伝達された。なぜか3科目とも合格。ほっと胸をなでおろす。
3. 資格審査書類の提出(8月) まだまだこれで合格、ではない。いままで手がけた再生事案を5件、簡単にまとめたものに倫理規定遵守について承諾する旨の書面をつけて審議を受ける。本来の規定であれば日本事業再生士協会のメンバー3名(つまりCTPホルダー3名)の推薦も必要なのだが昨年は初回ということで合格者相互の推薦でも可とされた。
4. 合格通知と倫理規定へのサイン(9月) これで晴れてCTP合格となる。その後、日本TMA協会、日本事業再生士協会へ加入へ進む。
受験してみて、「会計・財務」科目でCF計算が出ることが多いため税理士・公認会計士に有利なような気がする。この資格を取れなかった実務家の方はほとんどCF計算で躓いたのではないだろうか。全体としてCTP試験の難度は非常に高いと思う。
このほか、事業再生士補(ATP)という資格もあり、こちらはすべて論述式のCTPに対し、4択で出題が行われる。CTPは年一回、ATPは年二回受験が行われる。
認定直後、アメリカの事業再生士協会(TMA)の年次総会に参加するツアーがあり、当時私はまだサラリーマンだったが無謀にも参加した。ちょうどその総会期間中に日本のCTP保有者がアメリカのCTPと同様の取り扱いを受けることが認められ、日本のCTPもアメリカ事業再生士協会(TMA)のCTPとして登録される運びとなった。総会のプログラムの合間、アメリカTMAの幹部の方に「日本から来たのか?CTPか?君はアメリカでもCTPだ、おめでとう!」と言われたのが印象深い。(事業再生に30年の歴史を誇るアメリカでもCTPは380人ほどしかいないという)
事業再生セミナーでこの資格についてしゃべるときは、「CTPってイリオモテヤマネコより少ないんです。貴重な存在ですから大事にしてください。今日は生きて歩いているCTPを見れて皆さんラッキーでしたね!」とやる。特別天然記念物のイリオモテヤマネコでも100頭はいるらしいがこちらは日本全国で30人だ。さて今年平成19年の第2回試験でどれくらい資格保有者が増えるだろうか。
(写真は昨年のアメリカTMA総会参加時のもの。前列右から二人目が筆者)