
これをうまく使って大ヒットした漫画がある。
「神の雫」である。
もともと、ワインの味の表現は「ブラックベリー、コショウ、オレンジの皮の香り」などいろいろなものに分解して表現するもののほか、「濡れた犬のような」「秋の日ざしを浴びた枯草の山に鼻を突っ込んだよう」というようなイマジネーションを総動員しないと理解できない表現もある。
原作者である亜樹直(あぎ・ただし、姉弟の二人で共同して原作に当たっている)氏のHPによれば、「灰皿のかおり、っていわれても…もっと目に見えるもので表現できないのか」という遊びからこの漫画が生まれたという。
HP(asahi.com 「神の雫作者のノムリエ日記」から引用させていただくと、
「ウン、これは女性的なワインだ」と弟。「黒い髪、大きな黒い瞳の東洋の女って感じ。で、彼女が手に持っているのは……」「珈琲(コーヒー)かな」「そうそう、エスプレッソ」。やり始めると面白く、盛り上がってきた。驚いたのは、ワインに対して描くお互いのイメージが非常に似ていることであった。何度かこの余興をやってみたが、例えば弟が「女」と感じたワインを私が「男」と感じるといったことは、一度もなかった。恐らくそれぞれのワインには背後に広がる“世界”とでもいうべきものがあり、飲めば誰しもがその世界を、ある程度感じ取れるのではなかろうか。」
ワインは1000年前も100年前も10年前にもあった。でもその表現の方法は意外なところ(漫画)から豊かになった。それまでのワイン漫画やグルメ漫画がウンチクで読者をうならせたのに対し、「神の雫」はワインを「見せる」ことに成功したのである。
こういう「もう新しいものは出ない」という分野にも実はイノベーションの余地がある。経営も同じだ。古い業界、業態であればあるほど改善の余地があり新しいビジネスが生まれる下地になる。
「神の雫」の大ヒット。ヒットするには訳がある、のである。
ちなみに私山崎誠もワイン飲みのはしくれである。
行きつけの漫画喫茶に「神の雫」がなかったので「是非に」と思い店長さんあてのリクエスト用紙をつかって備えつけをお願いした。家に帰って改めて書名を確認してみてわかったのだが、私は「神の澪」と書いて出したようだ。
(ちなみに「澪」とは水底にある水路のことを意味する。でも何でこんな字を?)
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