
そしていよいよTMA(アメリカ事業再生実務家協会)の年次総会、コンベンションの開幕です。
受付でレジスターを済ませ、名札をもらいます。
その後、簡単な①朝食(7:00-8:00)。ベーグルやマフィンが出ました。

いろいろなセッションをやる会場とは別室で展示会が開かれます。
事業再生に関連する会社がブースを出し、TMAコンベンション参加者に自社の売り込みをする、という図式です。
今日見て回った中では、受取勘定(売掛金など)を現金化する専門業者、破産・破綻に至った会社専門のファイナンス会社、設備の買い取り専門会社、売掛金回収代行会社などが60社ほど出店していました。
質問をすると丁寧に答えてくれます。
日本にはない仕組みのものが散見され、「遠からず日本でも似たようなサービスが必要になるのでは」という印象を持ちました。

会場内の私。
こんな感じで正面の大きなスクリーンを使いながらセッションが進みます。

②キーノートセッション(8:00-9:30)、最初はジム・コリンズ氏によるスピーチ。
「good to great」というベストセラー本の作者です。
いわゆる「いい会社」はそのレベルで終わるといずれは衰退していくが、「偉大な会社」のレベルまで行くと力強い成長を維持できる、という内容の本です。
「偉大な会社」になっていくために、「何をなすべきか」と同じくらい「何をしてはいけないか」を突き詰めるべきだ、と説きます。
また、困難に直面した時に、「凍りつく」会社と「凍りつかずに対処する」会社に分かれる、と分析していました。
「偉大な会社」に成長をとげた例として挙がっていたのがサウスウェスト航空でした。この会社は、「大手が飛んでいる路線とは競合しない路線のみを選ぶ」「大型機は導入しない」「機内サービスはしない」など自分たちの特色を維持するため、「何をしないか」をきちんと決めている会社です。
この結果、同社はアメリカでは1970年からの35年間でもっとも成長した会社となりました。
偉大な会社となるためにコンサルタントの立場として、「会社のコアバリューをしっかり維持すること」「コンタクトは実際に会ったり、電話で行い、e-メールは避けること」「能力のある人材を正しいポジションにつけること」「目標をクリアし、コミットメントを明確にすること」「純粋な情熱を持って対処すること」が重要なポイントになる、と会場からの質問に答えていました。
実際に聞いてみると、スピーチ慣れした方で(そりゃプロのコンサルタントですから)かつスピーチについて専門家のコーチを受けているな、ということを感じさせるほどの、流暢で上手なスピーチでした。

これがジム・コリンズ氏の著作、「good to great」。ホテル近くのモールで20%引きで売られていました。
ジム・コリンズ氏のスピーチの後は、③パネルディスカッション・「レバレッジド・キャピタル・マーケット…このまま成長するか?」(10:30-12:00)。
事業再生資金の調達方法としてレバレッジド・キャピタルといわれる方式が普及し、5年前の4倍、5倍という規模で市場調達が行われています。
この手法は資産評価に依存し(デフォルトになった場合、資産処分で回収を行うため)、調達額をシニア(低リスク低リターン)、メザニン(中リスク中リターン)、エクイティ(高リスク高リターン)に三分割して市場から調達します。
この手法とほぼ同じやり方を使っていたのがサブプライムローン。これは小口の債権を大量に集め、やはり調達金額を3分割して市場から調達を行うというスキームののもの。
ディスカッションでは「今のところ調達レートは2%程度上昇したものの、調達がしにくくなるなどサブプライムローンの影響は限定的」と説明されていました。ただちに事業再生に与える影響はない、とのこと。
日本ではごく一部の調達を除き、この手法は使われていないと思いますが…やはりアメリカは進んでいます。劇的に調達コストを下げられるという理由があるにせよ、月200億ドル前後(2兆4千億円)の調達が行われているとのことで、ノンバンクによるアレンジが8割前後と銀行を逆転し非常に重要な役割を果たしているそうです。

昼食をとりながら、今年の「優秀ターンアラウンド賞」(大企業、中堅、中小と規模別に表彰を行う)「優秀トランザクション賞」などの表彰を見守りました。
表彰対象に「インターナショナル」という部門があり、「いつかこの部門で表彰を受けたい」と思いました。
昼食の後、元上院議員で対日強硬派で鳴らした、ゲッパート氏の④スピーチ(14:00-15:15)。
ボディランケージが豊かで、非常に説得力のある話し方が印象に残りましたが、時差ボケのため内容は掴まえ切れず。
貿易不均衡是正のために対日強硬派になった経緯があるため、スピーチの中に何度も「バランス」という言葉が出てきていました。

さらにそのあと、⑤分科会パネルディスカッション(15:45-17:00)。
「近年のヨーロッパ、カナダ、中国、インド、日本における再生の発展」。
イギリス、カナダのコンサルタントとインド人の世界銀行勤務の方がパネリストになりディスカッションを行いました。
各国とも、アメリカの倒産法の「チャプター11」を参考にした再生を支援する法制の整備が進んでいる、とのこと。(日本においては「民事再生法」がこれにあたります)
ここでもサブプライムローンの影響が話題にあがっていましたが、イギリスのパネリストから、「ノーザンロック銀行の取り付け騒ぎもあったがそのために事業再生のスキームが影響を受けたということはない。ヨーロッパ全体としてみれば影響はない」との発言がありました。
ヨーロッパでは国境をまたいで営業を行う企業が珍しくないのでそれらの企業の再生を行うためには「どの国の」法制を使って「誰が」再生をするのかという問題提起がされていました。(この点、「裁判所の主導で」ということではっきりした結論はなし)

直後に海外のTMA支部交流のための⑥インターナショナルレセプション(17:30-18:30)。
今回、スペイン、イタリア、トルコなどの国から再生マネージャーがこのコンベンションに参加していました。
昨年会ったフィンランドの参加者とも再会!
こぼれ話ですが、フィンランド組が昨年のレセプションで自国のお菓子を配ったりしてPRに務めていたのを見て、「今回日本も」ということで柿の種を大量に持ち込みました。
おおむね好評だったようですが全部はけたのでしょうか。

これがスペイン支部のカルロス・ジラ氏。
スペインに支部ができたと聞いて会いたいと思っていた人。
実務家っぽいてきぱきした印象の方でした。

続いて地元の日本人の方を招いて夕食会⑦ジャパンセッション(19:00-21:00)。
今回はニューヨークの帝国データバンク・朝倉氏とボストンで音楽家として活躍する久岡恵氏を招いて企業の状況、現地での暮らしの様子などをお聞きしました。
レストランは「LEGAL SEA FOODS」。というお店。ボストン市内に複数店舗を持つお店で名物はロブスター。
「本場」とされる、クラムチャウダも非常においしかったです。

デザートは前日のばかでかチョコレートケーキの一件にも全く学習しない私。またまたチョコレートケーキを頼みました。
本当は、ボストンはパイとかチーズケーキが名物のようです。
ということで多忙な一日目が終了。
また明日は同じような日程が続きます。
↓ワンぽちお願いします。今「社長」カテゴリーで20位です。

筆者山崎誠の経営する事業再生専門コンサルティング会社
株式会社 スター・ターンアラウンド・パートナーズ
筆者山崎誠が運営するネット書店 「街コンのビジネス家」