今日の話題は直接事業再生には関係しませんが、日本人の気質について。

 日本人の考え方はほかの国の国民とは違う、というのは皆さんもなんとなく感じているところではないかと思います。

 欧米とは明らかに違うしアジアの中でも微妙に違う。

 日本人論、日本論の本は膨大な数のものが出版されています。その中で簡潔でポイントを突いているのでは、と感じたのが、


井沢 元彦 / 徳間書店(2006/09)
Amazonランキング:14223位
Amazonおすすめ度:

 この本です。

 長期連載中の「逆説の日本史」の中に断片的に出てくる日本独特のメンタリティについて掘り下げた本です。(ケガレ(特に死穢)やタタリについてはとばして…)

 日本人が生活の中で最も重要視するものは何か?

 それは「和」である、と看破します。

 この本の中で上げている例として聖徳太子の十七条憲法の第一条が「和をもって貴しと為す」という文で始まっていることが挙げられています。

 「天皇を敬え」でもなく「仏を崇めよ」でもなく…重視されたのは人の「和」。

 これが時代が下って現代になると日本流のものの決め方が国際基準ではまるで理解されないという事態になります。

 和を重視してなんとなく決める、決める方向に行く、という国民性は欧米の徹底的に討論をして白黒つけるという気質からは理解しにくい。


フランシス 河野 / 講談社(2005/03/26)
Amazonランキング:210805位
Amazonおすすめ度:

 この本は日本人である筆者が結婚を機に米国籍を取得し現地の大企業向けの事業再生(ターンオーバー)コンサルタントとして成功します。

 その後日本ではバブルがはじけ、業績悪化に苦しむ日本企業を見て、筆者は日本企業のためにコンサルをしよう決意し、帰国します。

 しかし…

 アポイントとプレゼンを繰り返し、手応えは感じるのに契約に至らない。

 ある日、筆者はある事実に気づいて愕然とします。

 「日本には経営があるものを受け入れるにあたってきちんと討議する風土がない…日本には私が改善しようとしている『経営』そのものがない…」

 日本で経営とされているのは、

 部下「社長、このプランはいかがでしょうか」

 社長「うんよさそうだな、進めておいてくれたまえ」

 というような、「いつ、誰が決めたのか」はっきりしない経営です。(今はコンプライアンスや株主代表訴訟の影響でかなりきちんとしてきたはずですが)

 私は学生時代にESSでディベートを学びました。相手を打ち負かすロジックを勉強しました。

 しかし、今事業再生を仕事にしてみて感じることですが、

 業績低下を招いた経営陣や協力度の薄い銀行団相手にロジックで勝ち、言い負かしたとしてなんのプラスがあるでしょうか。

 同じ感情の土俵にのり(感情的には100%共感し)相手の和の中に入った上で少しづつ、会社を変えていく、そういう手法でなければ再生の入り口にすら立てません。

 この秋、アメリカのTMA総会で聞いた再生経験者のパネルディスカッションで、

 「M&Aをした側として相手の会社に乗り込んだ初日、親睦のためのバーベキューをやった」とお話されていたマネージャーがいたのが印象的でした。

 私がセミナーで、「事業再生は理屈が20%、感情が80%」とお話するのはこういう背景があります。


 簡単に書こうと思ったらまた長くなっちまいました。こりっと「わんぽち」お願いします。

 blog ranking

 筆者山崎誠の経営する事業再生専門コンサルティング会社
 株式会社 スター・ターンアラウンド・パートナーズ
 筆者山崎誠が運営するネット書店 「街コンのビジネス家
 筆者のブックログ「再生コンサルタントの書棚/CDケース