汗だくがドアを開く前に、疲れきった表情を作った。
その為に、今日はアイラインとチークを入れてこなかったんだしー
クマだらけだけどコンシーラーも入れてないんだしー
(笑)
メガネの奥に優しげな目をしてる裁判官に促されて、着席する。
裁判官→先日いただいた訴訟の経緯、拝見しました。
あちら(トオル)に、こんな書面を作ったのに離婚を回避したいのかとお聞きました。そして、本当に離婚を回避したいのであれば、離婚調停を取り下げて円満調停を起こしたらどうかと提案しました。
そしたら…
裁判官を見つめた。
ごくんと喉が鳴ったと思う。
裁判官→申立人自身、混乱しててどうすればいいか分からない・検討します、とのことでした(苦笑)
呆気に取られるとは、まさにこの事だった。
私は言葉も出なかった。
笹木先生→ははっ(笑)本気で離婚を回避したいのであれば、離婚調停取り下げに応じるはずでしょう。
こちらとしては離婚調停については不成立を希望し、然るべきタイミングで離婚訴訟を起こすつもりだと先方にお伝えください。
裁判官→然るべきタイミングとは?
笹木先生→離婚調停中の先方からの書面・言葉や態度を精査しつつ、その訴訟の決着がつき、トオルさんと利害関係人(伊井さん)からの慰謝料の支払いが完了されたタイミング…ぐらいですかね。
こちらとしては、トオルさんの不貞があったからこその婚姻破綻ですから。
マナさんが原因での離婚調停なんだから、今すぐ不成立にして訴訟も辞さないと言ったのはトオルさんですし。
調停委員のお二人も覚えておいでですよね?
畳み掛けるように、調停委員の二人も頷いた。
裁判官→マナさんは、どうでしょう?お子さんも小さいですが…
離婚…したいですか?
話を振られ、私は改めて裁判官の顔を見据えた。
私→主人の不貞を知ったときの衝撃は、生涯忘れられない事です。
問い詰めたら謝罪もなく、家を強制的に追い出されました。私は…子供達を抱き締めながら途方に暮れました。
別居してからも、実家に舅と姑を連れて突然訪れてきました。その時も謝罪はなく、不貞の原因は私だと責められました。
しばらくしたら突然職場の駐車場で襲われました。
言葉に詰まりながら、だけどシッカリとした口調で答えた(つもり)
息を吸って目を伏せた瞬間、その当時の様々な場面のフラッシュバックが起こった。
演技でも何でもなく。
ダムの放水のように涙が溢れた。
止まらなくなって嗚咽が漏れた。
ヒックヒックと喉を鳴らし、涙をこらえようと強く握ったハンカチを目に当てたけど、全身がこわばったまま、私は泣き続けた。
裁判官→すみません。お辛いことを思い出させてしまいましたね…
そう言いながら、箱ティッシュを差し出してくれた。
ありがとうございます…と泣きながら言って、箱ティッシュを受け取り、何回か思いっきり鼻水をかんだ。
ハイミスが、黙ってゴミ箱を近くに持ってきてくれた。
ありがとうございます、と言って使わせてもらったティッシュをゴミ箱へ捨てた。
すみません…と言って、大きく深呼吸して、裁判官を見つめた。
私→私は、離婚を決意しております