まるっきり化粧が落ち、真っ赤になった目と鼻の私の顔を、裁判官はまっすぐに見つめていた。



私の本心を確かめるように。

言葉の裏の本音を見つめるように。





ほんの数十秒か、数秒だったのか。

裁判官と二人きりの世界だったような気さえした。



ふっと空気が軽くなった。

裁判官がいたずらっ子のようにニヤッと微笑んだ。




裁判官→しばらく時間を置きませんか?



私は驚いて目を見開いた。




裁判官→慰謝料請求の判決が出て、トオルさんに有責配偶者のレッテルを堂々と貼れたら、あなたにとっては今以上に有利な離婚条件での話を進められるでしょう。
勿論、その後に改めてマナさんから離婚調停か離婚訴訟を起こしても遅くはないと思いますよ。本当に立派な先生も着いておられます。
でも書面を見る限り、訴訟も佳境に入っているような気がしますし。遅くても半年もあれば何かしら決着がつくのではないかなぁーと思います。
和解か判決までは、お互いに双方電話調停という事にして、先生(笹木先生)から訴訟の進捗を聞かせてください。
わざわざマナさんから新たに調停や訴訟を起こす手間暇やお金を使うことはありませんよ(笑)
養育費より婚姻費用の方が高いですしね(笑)



そんな感じで…どうですかね?と、裁判官は笹木先生を見た。

私も笹木先生を見た。



笹木先生は頭を下げながら、

笹木先生→ありがとうございます。
こちらとしては、それはもう願ったり叶ったりです!




全員が私に向けて笑顔だった。