Friendry | Theory Q

Theory Q

一瞬で消えてしまう感覚。そいつを追いかける。

今日はペルー人の子が来て、母親の用が済むまで見ていた。

4歳くらいの男の子。
「絵本読む? ポケモン知ってる?」
と話しかけてもドン引きした様子で離れてしまう。

しかし引き際を見失い、一人で喋り続けることに。

「メイシーの絵本でかいねー、カラーってこのスペル間違ってない?」
「車車、はいこっちも車ー、違ったこれバイクだったー」

異様な目でわたくしを見ている彼に、
時折「ほら見て、ストレッチマンだよ!」などと笑って見せる。

何度かそうしているうちに彼はわたくしに慣れてきた。

「これもポケモンだよ」

と、もう一度ポケモンの絵本を見せてみたとき、

「ウィー!」(?)

と彼は両手を上げ、笑顔になってこちらへ駆け寄ってきた。

「おー、ポケモン好き? 一緒に見ようか」

それから絵本を指差しながら、彼は楽しそうに喋り始めた。
わたくしも同じように指を指しながら日本語で喋る。

時折わたくしの目を見て何か文章を話していたのだけど、
理解ができないのが申し訳なかった。

「はあー、ふーん、へええ」

分からないのでそれしか言えない。でも彼は怒らなかった。
また絵本を指差して笑って、何か言う。

彼はロケット団のムサシと母親(もしくは通訳の人?)を交互に指差しニヤニヤする。
わたくしは双方を見比べ、笑う。

「似てるね!」

とわたくしが言うと、彼、いっそうニヤニヤ。
言葉は分からなくても、面白いことを伝えようとしているのは分かった。

友達の始まりだ。

言葉のないコミュニケーションはとても難しい。
それでも笑い合うことはできるのだ。

わたくしは言葉が使えない代わりに、
笑顔を彼に向け、
彼と同じものを見た。

わたくしにはそれが精一杯。
その精一杯に彼は心を許してくれたのだ。

彼が駆け寄ってきたのは感動した。
この時のこと、しばらく忘れられないニコニコ


龍九尾