正規vs暫定=引分でも新王者誕生! | BOXING MASTER first 2006-2023

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輪島功一選手の試合に感動、16歳でプロボクサーを志し、ボクシング一筋45年。ボクシングマスター金元孝男が、最新情報から想い出の名勝負、名選手の軌跡、業界の歴史を伝える。

正規王者と暫定王者による王座統一戦が行われたWBO世界クルーザー級タイトルマッチ(5日・独)、正規王者マルコ・フック(独)vs暫定王者オラ・アフォラビ(英)の一戦は引分。したがって王座がひとつにまとまることはなく、再度の対決でチャンピオンは一人に絞られる。


WBOはフックがWBA世界ヘビー級正規王者アレクサンデル・ポヴェトキン(ロシア)への挑戦が決まった際(2月25日)、暫定王座の設置を決め、3月5日に元WBA同級暫定王者ヴァレリー・ブラドフ(ロシア)を破ったアフォラビが暫定王者と認定されていた。


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フックは約7ヶ月ぶりの王座防衛戦。WBOは他のクラスでもこのような形で暫定王者を認定した場合、即王座統一戦を開催し、無意味な暫定王者で終わらせていない。


これに反し、WBAは王座が統一されれば、いや、その前から次の暫定決定戦を承認。そして、防衛戦も野放し状態。しかも暫定王者を1位にランクしたことで、暫定王者を認めないJBC管轄化の選手がWBA1位の指名挑戦者となりうることは、ほぼ不可能に近くなった。


WBAルールでは、指名試合はオプションが認められないことになっている。普通2つのオプション(場合にはよっては、3つも4つもみたいな話もあるようですが)を、前王者側に握られるわけですが、このオプションを握られずに挑戦できる、”1位指名挑戦者”の座がもたらす利益は大きい。


1980年8月、米デトロイトでサムエル・セラノ(プエルトリコ)をKOし、王座を奪取した上原康恒(協栄)選手は指名挑戦者。初防衛戦から破格の20万ドル(約4千5百万円)のファイトマネーを得ることが出来た。


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王座奪取の喜び。そして、時間が経つとノーオプションの喜びが。(^O^)/


初防衛戦を前に上原先輩は、「さっき、家(マンション)買って来たよ」と軽く言ってました。(ノ´▽`)ノ


セラノとのリマッチで残念ながら敗れてしまいましたが、世界チャンピオンになっての2試合で約1億円の稼ぎ。やっぱり指名挑戦者の座は凄いです。交渉がまとまらなければ入札ですから、挑戦者側が挑戦試合を興行できる可能性もある。


WBAの暫定王座戦運営は、内部側から見るとこのような権利を失う不利益が生じます。治外法権だから、「関係なし」というわけにはいかないのではないかと思う次第です。


さて、フックvsアフォラビ戦のスコアは、114-114、114-114、115-113(フック)の1-0。後楽園ホールで聞かれる、「両選手とも、規定の2票に達していませんので引分です」というところ。


日本のリングでも、チャンピオンを決める試合が引分となった場合は王座の移動はない。


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綿貫(左)vs沼田。


しかしその昔、日本タイトル決定戦を引分ながら、新チャンピオンとなった幸運な選手もいました。1974年12月1日。内山真太郎(船橋)選手の引退により空位となった日本バンタム級王座は、1位綿貫誠一(キング)vs2位沼田久美(→剛・新日本木村→相原)の間で争われた。


キャリア8年、46戦目で6度目のタイトル挑戦となるベテラン綿貫選手。3年前の花形 進 (横浜協栄)選手への挑戦では、後の世界王者をあわやという所まで追い詰めたが、48-47、47-48、46-47という惜しい判定を落としている。


一方の沼田選手はこの年2月、ブレーザー大久保(大阪帝拳)選手を破り全日本新人王獲得したばかり。キャリア2年で、10回戦はまだ2度目という新鋭。


典型的なファイター(綿貫選手)と、ボクサー(沼田選手)の対戦は、規定の10ラウンドを戦い引き分けが宣告された。しかし、当時の決定戦ルールでは、引分の場合は総得点数が多いほうが新チャンピオンとして認定される。


レフェリー佐々木47-47、ジャッジ中森47-47。残る一人、吉田勇作副審は48-46で沼田選手の勝ち。これが決めてとなって、沼田選手が新チャンピオンとして認定された。そして、幸運はまだまだ続く。


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ルールに従い初防衛戦で1位三船 豪 (草加有沢)選手の挑戦を受けた沼田選手は、見事に判定で勝利を飾る。新日本木村ジム・木村七郎会長は、「世界は来年」との構想を描いていたが、時のWBC世界バンタム級王者ロドルフォ・マルチネス(メキシコ)から挑戦オファーが舞い込む。


強気の木村会長は巡ってきたチャンスに迷わず決断。アマ歴なし、キャリア2年半の世界バンタム級挑戦者が誕生。景気付けの世界前哨戦が組まれた。だが、ワルインゲ中山(神林)選手に完敗。それならばと組まれたやり直し前哨戦でも、岡部 強 (福岡中央)選手に苦杯を喫してしまう。


「沼田は世界のなんなのさ」と痛烈に皮肉られ、木村会長も真っ青となったが、契約が優先された”幸運児”沼田選手の世界挑戦は実現。1975年10月故郷仙台で、40勝中34KO勝ちというマルチネスに挑んだ挑戦者は、メキシコ人ジャッジも僅か1ポイント差という大善戦を演じた。


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”幸運児”沼田選手は、「ブレーキが効かない練習の虫」であったことを付け加えておく。


得点数が多いほうがチャンピオン。合理的といえば合理的ですが、この試合以降、このルールが適用された例はない。


最近は4回戦でも割れすぎなので、こんなルール復活もあり?。(;^_^A


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