WBC世界戦日本初公認!西城vs原田vsファメションⅡ | BOXING MASTER first 2006-2023

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輪島功一選手の試合に感動、16歳でプロボクサーを志し、ボクシング一筋45年。ボクシングマスター金元孝男が、最新情報から想い出の名勝負、名選手の軌跡、業界の歴史を伝える。

かつてはJBC非公認だったWBC世界王座。国内で初めてWBC世界タイトルマッチがJBCに認定されたのは、コミッション設立から18年後の1970年のこと。WBC世界戦・国内解禁への道!西城vs原田vsファメション から続く。

米ソルトレイクシティで69年8月24日から27日にかけて開催されていたWBA総会に、JBCを代表して乗り込んだのは菊池弘泰事務局長。日本から総会への提出議題は、①WBA、WBCの統一。②世界ランキングの公正。③世界チャンピオン防衛ルールの緩和。④試合ルールの世界統一となっている。

ファイティング原田選手を擁する笹崎陣営から、「西城に挑戦するので、ランキングを考慮して欲しい」との伝達を受けていた菊池氏は奮闘し、原田選手のランキングは4位へと上昇。


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WBA世界フェザー級王者西城正三(協栄)選手は、9月7日札幌市で同級5位ホセ・ルイス・ピメンテル(メキシコ)を相手に2度目の防衛戦を迎えていた。ロサンゼルスで戦い1勝1敗という星を残すが、西城選手が一挙に世界ランキングに入るきっかけとなったのがこのピメンテルとの試合である。

二人はウマが合った。プロモーターの都合で同じ宿舎で呉越同舟。試合前に戦う同士が度々顔を合わせるのは嫌なものである。だが、西城選手は「試合は試合、ビジネスだから。後は友達だから関係ない」とあっけからん。朝食で顔を合わせ、昼はカード遊び、夜はゴーゴダンスに誘うといった具合。




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すっかり挑戦者をのんでいたチャンピオンは、第2ラウンド鮮やかな左フック一発でKO防衛に成功。「西城は強くなった」と言わしめた。俄然、原田戦が期待される。

「ファイトマネーさえ納得できれば、誰とでも戦う。少しも逃げやしません。チャンピオンなんですから」

初防衛戦が1300万円。ピメンテル戦が2千万円といわれる西城選手のファイトマネー。そしてロサンゼルスのアーリン・イートン女史から、「ビセンテ・サルディバル(メキシコ)とやってくれるなら8万5千ドル(3千6十万円)出そう」というオファーが入った。

しかし王者は言い切った。「先輩の原田さんとはぜひやってみたい」。既に十月下旬にはハワイでノンタイトル戦が決まっている。

金平、笹崎会談で、「日本ボクシング界の為にやろう」と密かに内定を見ていた西城vs原田戦。事態が急変するのはファメションのプロモーターであるマイク・バレット氏の来日から。


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バレット氏は11万ドル(3960万円)でノンタイトル2試合、タイトルマッチ1試合をファメションと契約していた。前回シドニーでの試合には1万を越すファンが集まった。もう一度やれば儲かるだろう。

しかし、前回の税金をまだ支払っていない。バレット氏の懐事情は決して楽ではなかった。次の税金が加算されると、ヘタをすると破産になりかねないとある。英国人バレット氏は、欧州での防衛戦も考えたが、ファメションに人気がなく興行の成功はおぼつかない。

ロスの大プロモーター、ジョージ・パーナサス氏からバレット氏に、「ロスでサルディバルの挑戦に応じてくれれば8万5千ドル払おう」というオファーも来ていた。しかし、ファメションではとても勝てそうにない。

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原田戦での際どい勝利にバレット氏は、ファメションの王座は永くないと感じ取った。熟慮の末の結論は、原田選手と日本で再戦。日本側へ興行権を売り渡し、原田選手が勝った場合の興行権を押さえるという結論。大パーナサスよりも、日本の方がビジネスがしやすい。

バレット氏からの提案を受けた時、笹崎会長はうれしさの余り頭をかかえてしまったという。「WBA、WBC、どっちに挑戦させようか。いずれにしても早く実現する方に的をしぼろう」。

笹崎会長は、原田選手が専属契約を結ぶフジTVに相談を持ちかける。西城選手への挑戦は内定しているが、ファメションvs原田戦の日本開催を提案されたと。


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「西城のほうは、決まるにしたって、いつになるかわからない。ファメションなら、すぐに決める。来年1月ならどうだろう」

フジTVは必死で笹崎会長を説得する。西城vs原田戦は西城選手が契約する日本TVの放映になる。自分の局のドル箱をライバルに貸さなければならない。バレット氏の要求する全ての条件はフジTVが引き受ける。

ファイトマネーのアップも当然だが、原田選手が勝った場合の興行権。バレット氏の要求の焦点はここにある。一説によるとその金額は1試合2万5千ドル(900万円)。バレット氏はフジTVと膝詰め談判で、まんまと数試合分のオプション契約を勝ち取った。

WBC役員の間でもダイレクトの再戦認可については賛否両論。二派に分かれた。しかし、豪州からの「あんな判定はない」がものをいい、再戦許可が下される。「どちらが勝っても、次の防衛戦にはWBC第1位挑戦資格者を選ぶ」という条件が付加された。

トントン拍子にことは運び、9月15日ファメションvs原田再戦は、後楽園飯店で正式発表された。試合は70年1月6日東京体育館で開催。このタイトルマッチを日本で開催する理由として、笹崎会長は次のようにのべた。

①シドニーでの挑戦試合の審判が公正を欠いていたものであることを日本のファンの前で実証したい。②もし原田が勝ったならばWBAチャンピオンの西城正三選手と決戦を行い世界チャンピオンの一本化を実現させたい。

これに怒ったのは金平会長。「俺の手を握って日本ボクシング界のためにやってくれといっておきながら・・・」と大変なケンマク。西城選手は3度目の防衛戦を70年1月4日に予定していた。(後ケガで延期)


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ここで動いたのはJBC。菊池事務局長がWBA総会から帰国してみれば、西城vs原田戦はお流れの体制。WBA、WBCの一本化を真剣に考える菊池氏は、「ファメションvs原田戦をJBCも世界タイトルマッチとして公認しよう。そのかわり、原田が勝ったら、必ず西城と戦うことを公約してくれ」。

革命的な国内初のWBC世界戦認可の裏には、「これがうまくいけばJBCがWBAとWBCの統合の架け橋になる」という考えが働いていた。かくして笹崎会長は、記者会見の席上「原田が勝てば必ず西城と真の世界一を賭けて戦う」と公約するのである。

残念ながら原田選手はファメションとの再戦に敗れてしまった。しかし、例外としてJBCが公認したWBCタイトル戦は、これを機に日本に根付いていくことになったのでした。