渡嘉敷勝男/因縁決着・9連敗から世界王者! | BOXING MASTER first 2006-2023

BOXING MASTER first 2006-2023

輪島功一選手の試合に感動、16歳でプロボクサーを志し、ボクシング一筋45年。ボクシングマスター金元孝男が、最新情報から想い出の名勝負、名選手の軌跡、業界の歴史を伝える。

いよいよ12回。ラスト4回ここからポイント取るだろう、悪くてもイーブン以上には戦うはず。過去の世界タイトルマッチでも、終盤戦には強かった渡嘉敷選手。マガジン誌にも12回開始の時点で”タイトル奪回濃厚”と思われたとある。ところが・・・。

マデラが出てきたわけではない。どちらかというと渡嘉敷選手が失速したような感じ。12回以降、レフェリー・ハザード(米)は連続4ポイントマデラ。ジャッジ・オベセン(デンマーク)は14回までマデラにポイントを与えた。

「おい渡嘉敷何やってんだ。手を出せよ」山神ジム・山神会長のダミ声がやけに頭に残っています。協栄一門の古株として精一杯の応援をしてくれました。

しかし渡嘉敷選手、手が出ずポイントはひっくり返った。渡嘉敷選手、12回以降1ポイントも奪えず試合終了。ハザード144-142。オベセン145-143。レキナ(ベネズエラ)147-145。3-0でマデラの勝ち。流血もない、クリーンファイトは終わりました。

今回は足を使ったアウト・ボクシングが作戦のようでしが、本来「僕はガチガチのファイター。それで防衛してきた」との自負が渡嘉敷選手にはあった。全ては結果論だが、王者になってからの渡嘉敷選手の持ち味は、”どつき合いになったら絶対負けない”心にあったように思います。

何かポォ~ッと過ぎてしまった終盤戦。渡嘉敷選手も本来”たくさん勝つ”選手ではない。鼻差、首差の勝負になら絶対負けないぞ。世界王者のプライドに掛けて。挑戦者では、この気持になれなかったのかなぁ。いずれにしても、気持の問題。マガジン誌も厳しい、”若さと気迫”を見せてほしかったとあります。

写真は試合終了後の渡嘉敷選手、福田先生の師弟コンビ。このコンビがこんな顔をしたのはこの試合だけ。うまいボクシングとどつき合い。ハートの出させ方は難しい。もちろん渡嘉敷選手本人がやらなければいけなかったが・・・。

試合後は直ぐに気分転換。心の奥はわからないが、一切外には出さず過ぎた事は忘れる。本当に気持の切り替え、早かった。この札幌の試合では、協栄札幌赤坂ジムの赤坂会長、福田先生の友人、柴田さんには大変お世話になりました。柴田さん、翌年韓国まで応援に来るほどの渡嘉敷ファンになってしまいました。

再起、「WBAメンドーサ会長からも、もう一度やってもいい」とは言われた様だが、この顔合わせ、さすがに5度目はやれないですね。ターゲットはWBC王者”韓国の鷹”張 正九に合わされる事に。

マデラは他の日本人挑戦者の格好のターゲットとされる事になった。しかしマデラ、渡嘉敷選手との3連戦後、しばしの休養。これが良かったのか悪かったのか、宿願達成で燃え尽きたのか、次の試合で敗れあっさりタイトルを手放します。

新王者はフランシスコ・キロス(ベネズエラ)。タイトル挑戦時点で、9勝(3KO)10敗1分1NCの記録。そして何と”9連敗”している。相手も強い選手ばかりで、これぞ本当の”咬ませ犬”。(~~)

世界を狙うホープ達の絶好の踏み台としてマッチメークされ続けて来たキロス。一時は6勝10敗になった。これは、”ちょうどいい相手”に見えますよねェ。(~~)とにかく戦い続け、前年敗れているオスカー・ボリバー(7連勝中)に8回KO勝ちして連敗街道脱出。

が、次の試合2敗1分の選手と引き分け。失礼ですが、笑わせてくれます。(~~)その後もさらに”咬ませ”としてチャンスに恵まれ、ベテラン世界ランカー、新鋭世界ランカーとの2連戦を勝利。

16連勝中のホープ、レイナルド・ベセラを下した星で世界ランキング1位に躍進。マデラ挑戦のチャンスを掴んだのでした。そして、84年5月ベネズエラで行われた世界王座チャレンジで、ダウンを跳ね返してマデラを9回逆転KO。咬ませの代表みたいなキロスが世界チャンピオンになってしまった。

「こんな選手がいたんだぞ」と今の選手達に話しても、信じてもらえないくらいの戦歴ですよね。(~~)しかしこの選手の事、ズッ~と気になってました。何せあのマデラからタイトルを奪った訳ですから。渡嘉敷選手はもちろん、知らないだろうなぁ。(~~)

こんな事知ってると、ボクサーの考えそうな事、性格と照らし合わせてみれば大体わかります。ここからアップ・セットが始まるわけです。ちょっと数字のいい選手と対戦する時「俺が決めたんだから、お前は負けないよ」大竹マネジャーからこう言われたら、期待されているという事ですね。チャンスだと受け止めてほしい。

それにしても戦い続けながら、力を磨いていったキロス。壁にぶつかっている選手にはいいお手本です。少し負けが込むと休養。”強い”と思い込んでいる選手とはやりたがらない。数字で対戦相手を計る。「あんた、誰とやったら勝てるんですか。名前を言ってくれ」と、言いたくなります。

自分を信じて、先生を信じられる事が出来るなら、戦い続けた方が”未来”が開ける。私はそう信じます。連敗で悩んでいる選手の皆さん、胸に手を当ててよ~く考えて見よう。9連敗しても世界王者になった選手がいる。まだこれからでしょう。さあ、練習だ!    続く・・・。

     【ハワイ合宿・ジムワーク&宿泊 1日2,500円
      アマ、プロ問わずどなたでも利用出来るハワイの合
      宿専用ジム。”伝説のトレーナー”スタンレー・イトウ
      のコーチも受けられる。-詳細はこちら-