コロナ禍を乗り切るフィットネス経営「3つの処方箋」
今日は「コロナ禍を乗り切るフィットネス経営『3つの処方箋』」についてお伝えします。
新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、全国各地のフィットネス施設が休業した今年5月、フィットネス売上高は前年対比約95%減にまで落ち込みました。
その後、売上高は回復傾向にはあるものの、未だ多くの企業の売上高は前年比2~3割のマイナスで推移しているようです。
フィットネス上場企業の第2四半期(7~9月)および半期(4~9月)決算がまもなく発表されますが、第1四半期に続き「赤字決算」になる企業が多く出そうです。
もちろん、各社共に対策を講じていることでしょう。しかしながら、まだこれから先に明るい未来が待っているかどうか、確信が持てない状況にあるかもしれません。
とはいえ、この難局を乗り越えようと、模索しながらも一歩一歩、前進している企業や人たちがいます。何よりも重要なのは・・・あきらめないことです!
少なくともしばらくの間は、苦しい状況が続くという現実がなくなるわけではありませんが、目の前にある課題(とチャンス)に目を向け、今までとは「違う戦略・戦術」に取り組む必要があります。まずはそこから始めましょう。
休会者および過去会員との絆を強める
最初の処方箋は、「休会中の会員」と「今年3月以降に退会した会員」に復会して頂くことです。
コロナ禍で新規会員を獲得する労力や費用を考えてみてください。それよりもはるかに見込みがあるのは、関係のある(あった)人たちを対象に働きかけをすることです。
臨時休業(4~5月)明けの6月から5カ月近くも経っているというのに、未だ総会員の1割前後~2割近い会員が休会しているフィットネス施設があります。
休会者の大半は数カ月間休会を続けていますから、実質的に首の皮1枚つながっている状態にあるといえるでしょう。
そのため、休会者に「特別休会を〇月で終了します」と告知すれば、その多くは退会してしまうでしょう(それが怖くて特別休会を続けている企業もあります)。
また、コロナ禍で3月以降に退会した人たちの多くは、入会先の施設が「嫌だから退会した」わけではないはずです。
事実、私もその1人なのですが、臨時休業中の5月に入会先フィットネスクラブのうちの1カ所を退会しました。その際、臨時休業による会費前払い分は後日返金する旨の説明を受けました。
9月に入りその施設から封筒が届き、中を開けると「会費過払い金ご返金についての案内」という手紙が入っていました。
私は返金の案内だけではなく、再入会のオファーも当然あるものと思っていただけに正直拍子抜けしました。
なぜならその施設では、広告を出して新規会員募集を行っていたからです。なぜ、有力な入会見込み客に再入会のオファーをしないのでしょうか?
もし、手紙の中に「元会員」である私の気持ちを察した文章や気遣い、健康づくりをスタッフ一同で支援する旨、および復会(再入会)のための魅力的なオファーがあれば、私は間違いなく復会していたと思います(ああ、残念!)。
おそらくこの施設(企業)は「退会=縁切り」と考え、退会者は復会しないものと考え、新規会員を獲得することばかり考えているのだと思います。
会費収入をすぐにでも増やせるチャンスが目の前にあることに気づかず、事務的な対応をしているような企業に未来はありません。
休会中の会員や今年3月以降に退会した会員を「有力な入会見込み客」と考え、共感力によって、彼ら彼女らの理解に努め、寄り添い、会員でいることの価値を感じて頂ける行動を取ることで復会に導く。これが大切です。
私はクライアントに対してそのための具体的な行動についてアドバイスをしていますが、こうしたビジネスとして当たり前のことを行うだけでも復会者を増やし、会費収入を増やすことができるのです。
従来のビジネスモデルからの転換を。
2つ目の処方箋は、利用者数制限など「3密回避」の徹底が求められる中では、従来の会員数拡大戦略のみの発想を転換することです。
現在多くのフィットネス施設は、休会者を含めるとコロナ前の会員数に比べて3~4割程度会員数が減っています。
それだけ会員数が減っていれば当然利用者数も比例して減っているかというと、実際はそうとは限りません(複数のフィットネス施設調査より)。
例えば、トレーニングマシンの利用制限や定員数を減らしたスタジオレッスンなどにより、利用者側の立場からすると混雑具合は以前と同じか、むしろそれ以上に感じることもあります。
つまり、施設利用のキャパシティ制限下では、会員数を増やして売上高(会費収入)を増やす戦略は理論的かつ物理的にも困難だということです。
これまで既存のフィットネス施設の多くは、月に30回以上来館している会員もいれば0回の会員もいました(います)。しかし、同じ会員種別であればどちらも同じ会費です。
今は会員の高齢化が進み、仕事をリタイアして自由な時間を過ごすことができる会員の比率も大幅に上がっています。’70年代から続くこの会員システムは、すでに制度疲労を起こしていると言えるのではないでしょうか?
総合型クラブやジム・スタジオ型クラブの中には、スタジオレッスンに1日数本、週に10本以上参加する会員や、ほぼ毎日来館する会員も増えています。
その結果、会員の利用率は年々高まり、会員数が減っているにも関わらず施設の混雑は増している、といった施設も少なくありません。
何度も言うようですが、コロナ禍で施設のキャパシティ制限下では、今の会員利用システムを前提に会員数を増やすことは理論的かつ物理的にも困難です。
コロナ禍では、「3密回避」は必要かつ最優先条件です。よって、感染予防対策を講じるだけではなく、従来のビジネスモデルからの転換を考える必要があります。
会員の利用システムを見直す
具体的には、会員の利用システムを見直す必要があります。
例えば、会員の利用時間制限、レッスン参加本数制限などを設けることによってキャパシティを拡大させることは可能です。
小規模フィットネスジムを運営するクライアント先の1社は、コロナ禍以前は利用時間制限を設けていませんでしたが、6月の営業再開早々から1日の利用時間を「最大1時間」に制限しました。
感染予防対策の一環ではありますが、こんな大胆なシステム変更は、コロナ禍以外ではまず考えられないでしょうし、そもそも思いもつかないでしょう。
ここまで大胆な利用システムの変更は、一般的な総合型クラブやジム・スタジオ型クラブでは困難かもしれません。
しかし、3密回避とともに、会員毎に得られる価値やサービスの対価と会費のアンバランスは、ある程度は是正する必要があるのではないかと思います。
例えば、スタジオやプールレッスンに参加したいと思っていた人の中には「参加したいレッスンがいつも定員一杯で参加できない」、「予約がすぐ埋まってしまって参加しにくい」という不満を抱えている人も少なくないと思います(私もその1人です)。
前述した通り、1人で1日何本も自由に参加できてしまうという施設側のシステムが、(混雑の)原因の1つであることは間違いありません。
しかし今なら、デジタルシステムを活用すればレッスン参加本数に「従量制料金」を導入することも可能です。
例えば、「月に〇〇回までは会費内で参加できます。〇〇回を超えた場合は1本毎に●●●円加算されます」とか、「レッスンフリー参加は別会員種別にする」などによって、参加人数のコントロールや価値に見合った会費を得ることができるでしょう。
このような運営改革は平常時には困難かもしれませんが、コロナ禍ではむしろ絶好のチャンスと言えるでしょう。
「価値を上げよ、客単価を上げよ」
このブログでこれまで何度も主張していますが、会員数拡大戦略だけではなく、価値を高めて客単価を上げる戦略が今、重要性を増しています。
実店舗におけるフィットネス売上高(店舗収益)は「会員数×客単価(会員外売り上げを除く)」に分解できます。
一般に、会員数に目を向ける企業や施設は多くありますが、売上高を構成するもう1つの要素である「客単価」に注目するところは多くありません。
実際、日本の一般的なフィットネス施設の会員一人あたり月間客単価は8千円台でこれまでほとんど上昇してきませんでした。むしろ24時間ジム等の拡大でここ数年は、客単価は低下傾向にあります。
言い換えると、客単価アップの取り組みがほとんどされてこなかったということです(ここにもチャンスがあります)。
例えば、会員数(会費収入)が2割減ったとしても、客単価を2割アップさせることで同じ売上高を得ることができます。
「でも、客単価を2割もアップさせるなんて一体どうすればいいの?」
と思う人もいるかもしれません。
しかし私の経験上、会員数を2割増やすことに比べれば、客単価を2割アップさせることのほうがはるかに簡単、かつ早く実現可能です(加えて会員満足度も高まります)。
例えば、パーソナルトレーニングやその他サービスを組み込んだ(パッケージ化された)会員種別を作り、レギュラー会員月会費の数倍~10倍以上の料金設定をします。
それを販売するためのマーケティングとセールスに取り組み、顧客との関係構築を深めればすぐにでも客単価アップ、すなわち会費収入増を実現することができます。
じっと「耐えよう」とするより積極的に行動しよう!
3つ目の処方箋は、積極的行動の大切さです。
今は変化に対応すべく、これまでの常識や思考の枠から外れてビジネスモデルやビジネスプロセスを見直し、会員や潜在客に対して、思いやりと思い切った行動に出るときです。
事態が好転するのを、ただ手をこまねいて待っているだけではなく、この機会を積極的に活用してすぐにできる改善策や革新的な方法を取り入れていきましょう。
これから先は、会員や潜在客の悩みや問題、ストレス解消や自尊心を満たすものの理解に努め、解決・実現のために積極的に行動する企業や人が力強く生き残っていくことでしょう。あなたはその意志と行動力を持ち合わせているでしょうか。
本日も最後までお読み頂きありがとうございます。
それでは次号をお楽しみに!

