コロナ禍に打ち勝つ中小フィットネス企業のサバイバルプラン |  ☆サクセスby田村真二

コロナ禍に打ち勝つ中小フィットネス企業のサバイバルプラン

 

 

 

こんにちは。

サクセス発行人の田村真二です。

 

 

8月も半ばとなり、今年もあと4カ月半余りとなりました。

 

 

本来でしたらオリンピックの閉会式を終え、国民のフィットネス参加熱も例年以上に盛り上がっているはずでしたが・・・

 

 

「これからが正念場です」

 

 

これは、私がフィットネス経営者や幹部の方から最近よく見聞きする言葉の1つです。

 

 

正念場とは、人の真価や真の実力が試される、ここぞという大切な場面のこと。オリンピックでいえば、スタートラインに位置し、今まさに競技が始まろうとする瞬間のことです。

 

 

ですが、ここでいう正念場の意味はちょっと違います。

 

 

「コロナ禍でどうやって会員数や売上・利益を増やすことができるのか?」

 

 

「何をすれば良いかを考えても、クラブ(ジム)内で感染者が出るのも怖いし、積極的に会員募集や利用促進を行うこともできません・・・」

 

 

「結局、何も進まないまま時間だけが過ぎていき、お金の不安が頭から離れない・・・」

 

 

「何かをやらなければいけないのはわかっているんですが、何から始めれば良いかがわかりません・・・」

 

 

といった不安の真っただ中での「正念場」です。

 

 

そんな不安を抱えている方には、今日お伝えする内容が参考になるかもしれません。

 

 

 

上場企業でも3社のうち1社が最終赤字

 

 

日経新聞によれば、上場企業の4~6月期決算の発表が7日までに8割に達し、「全産業でみた売上高は前年同期比2割減、純利益は7割近い減少で、3社のうち1社が最終赤字」とのことです。

 

 

政府が緊急事態を宣言し、知事から休業要請を受けた業界や企業の感覚でいえば、上記よりも「さらに悪い」状況だったのではないかと思います。

 

 

実際、売上高が前年実績に対して1割減少しただけでも大変だというのに、上場フィットネス各社の決算では6~7割も減少し、過去最大の赤字額となっています。

 

 

2カ月近く休業し、その間の会費収入が途絶えたため致しかねないとはいえ、それにしても大きすぎる代償です。

 

 

ですが、起きてしまったことを悔やんだり、あたふたしたりするだけで状況が良くなることはありません。

 

 

特に、会社のリーダーである社長、クラブのリーダーである店長・マネジャーは、今のような大きな危機のときには、会社やクラブが進むべき道を社員や関係者にはっきりと示すことが大事なのではないでしょうか。

 

 

 

前年同期比は考えない

 

 

フィットネス業界以上に大きなダメージを受けた業界に観光業界がありますが、星野リゾートの星野代表は次のように述べています。

 

 

「1年半後をゴールとし、サバイバルするためのプランを立案。4月初め、社内に発表しました。この18カ月間は前年同期比や月単位の黒字・赤字で業績を考えることもやめました。実際に4月、5月の売り上げは激減したのですが、われわれは『予想通りだね』と言いあうだけでバタバタせずに済みました」(2020年8月7日日経MJ)。

 

 

確かにコロナ禍の影響をもろに受けた4~6月期を、前提がまったく異なる前年と比べて評価するのは意味がないかもしれません。ですが・・・

 

 

 

新型コロナを追い風に伸びるオンラインフィットネス

 

 

 

 

 

新型コロナの感染拡大で事業環境が激変し、苦しむ企業が相次ぐ中、同時に、デジタル変革(DX)や人口知能(AI)、働き方改革の変化などを追い風にして収益を伸ばす企業の強さも浮かび上がりました。

 

 

そうした企業に共通することは、コロナ前から「あの会社は先進的だ」と思われていた、「うちの会社にはまだ早いと思っていた技術を一早く取り入れていた」ことです。

 

 

例えばフィットネス先進国のアメリカでは、新型コロナ前からオンラインフィットネスは普及していましたが、市場規模はまだそれほど大きくありませんでした。

 

 

しかし今回、フィットネスクラブやスポーツジムの休業により一気に注目を集め、市場拡大につながりました(私も年間契約で登録しました)。

 

 

オンラインフィットネスのサブスクで急成長を続けている米Pelotonは、4月24日の声明で、「会員数は200万人に達した」と発表しました。

 

 

ヨガウェアを始めとしたフィットネスウェア&用品ブランドのルルレモン(カナダ)は、自宅でフィットネスの指導を受けられるサービスを提供する米ミラーを5億ドル(約540億円)で買収すると発表しました。

 

 

同社のカルビン・マクドナルドCEOは、「デジタル技術を活用したフィットネス関連サービスは以前から伸びていたが、新型コロナで普及が加速した」と述べています。

 

 

日本でも一部のオンラインフィットネス専業者が驚くほど登録者数を伸ばしましたし、店舗でサービスを提供する既存企業も一斉にオンラインサービスを提供し始めました。

 

 

すでに起きつつあった構造変化が、日本でもコロナ禍で一段と加速したということです。

 

 

新たな価値を創出する経営が今ほど求められるときはありません。今後はフィットネス業界でもオンライン・オフラインの境界がなくなり、市場が革新・拡大していきそうです。

 

 

一方で、「オンラインといってもホームページやネット広告以外に何から手をつければいいかよくわからない」という声もよく見聞きします。

 

 

とくに、資金力や人材力が大手に比べて圧倒的に不利な中小フィットネス企業では、ほとんど手つかずにいるケースも少なくありません。

 

 

 

弱者は弱者の強みを最大限発揮する

 

 

日本には企業が約403万社(2015年)あります。

 

 

うち99.7%は中堅・中小企業で、さらにそのうち約9割は小規模事業者(「製造業・その他」20人以下・「商業・サービス業」5人以下)が占めます。

 

 

大企業は1%もなく、上場企業は0.1%(1000社に1社)ほどしかありません。

 

 

そのわずかな上場企業でさえ4~6月期は7割近い純利益の減少、3社に1社が赤字です。さしずめ中小企業なら、さらに厳しい状況なのは火を見るより明らかでしょう。

 

 

とはいっても、大企業のような強者に比べればあきらかに弱者の中小企業には、弱者ならではの戦略と戦術で収益を増やすことは可能です。

 

 

私は会社員として一部上場の超大企業の様々な部署で22年間働き、その後ゼロからビジネスを立ち上げた「超弱者」を経験していますので、双方の強みと弱みを身をもって知っています。

 

 

中小企業の経営者の方は意外に思うかもしれませんが、中小企業は大手に負けない「弱者こその強み」が、いくらでもあります。要は、その強みを発揮すればいいのです。

 

 

 

「弱者の戦略」との出会い

 

 

 

 

 

「弱者の戦略」といえばランチェスター経営が有名です。

 

 

そもそも弱者の戦略とは、セブンイレブンやソフトバンク、エイチ・アイ・エスや(通販の)やずやなど、今では大企業となったいくつもの会社が創業時から取り入れていたランチェスター経営のなかの1つの戦略のことです。

 

 

ランチェスター経営には、優勢企業が行う「強者の戦略」劣勢企業が行う「弱者の戦略」の2つがあり、しかも、この2つのやり方はまったく正反対になっています。

 

 

ランチェスター経営に関する書籍は世の中に数多く出回っていますので、あなたも見聞きしたことがあるか、すでに実践しているかもしれませんね。

 

 

私がランチェスター経営を知ったのは、前職時代に新規事業開発チームへ異動になってから(2003年頃)のことです。

 

 

とはいっても、関連本を1~2冊読んだ程度であり、この方法はあまり役に立たないな、と思っていました。理由は明白。私は新規事業とはいえ、超大企業の中枢の部署にいたからです。

 

 

そのため弱者の戦略ではなく、強者の戦略について知りたいと思っていたにもかかわらず、本に書かれていたことはほぼすべてが弱者の戦略・戦術だったのです(本来それが主旨なので当たり前といえば当たり前です)。

 

 

その後私は2007年に会社を辞めて1人でゼロから起業したのですが、超大企業に22年も勤めていたため、最小規模での経営や集客方法をまったく理解していませんでした。

 

 

そのため会社員時代以上に働いていたにも関わらず、起業後数年間は赤字を垂れ流し続け、お金の悩みを常に抱えていました。

 

 

そこで昔読んだランチェスター経営の本を始め、小さな会社が成果を出すための経営やマーケティングに関する国内外のあらゆる本やセミナーなどから学び、実践を繰り返しているうちに、いつの間にかお金の悩みから解放されるようになりました。

 

 

いま振り返ると、超大企業を退職して独立した私は、単なる弱者ではなく「最低の弱者」という認識を持って初めから行動すべきでした。

 

 

繰り返しになりますが、中小企業が成果を出すための戦略(と戦術)は、オンラインであれオフラインであれ、「強者の戦略」ではなく「弱者の戦略」をベースに独自ビジネスを築くことが大事です。

 

 

ということで、私や当社のクライアントも実践している弱者の戦略のポイントについて概略ご説明します。コロナ禍に打ち勝ち、収益を増やすサバイバルプランづくりに活かすことができると思います。

 

 

 

収益を増やす「弱者の4大戦略」

 

 

弱者の戦略のいくつかあるポイントの中から最重要ポイントを4つに絞ると次のようになります(弱者の4大戦略)。

 

 

①差別化・独自化(同質化はダメ)

 

 

「差別化」とは、同じことを徹底して行うことで他社との違いを明らかにすること。「独自化」とは、他社とは違うこと(や違うように見えること)を行うこと。

 

 

例えばアメリカのディズニーランドは開園当初からクリンリネスに徹底的にこだわり、清掃で差別化を行いました。

 

 

※差別化・独自化は商品やサービスそのものとは限りません。「人」や「売り方」も対象になります。

 

 

②1位主義(2位以下はダメ)

 

 

何かの分野で「1位」を目指すこと。目的は「覚えられる」「知られる」ことです。

 

 

例えば、「日本で1番高い山は?」と質問されて「富士山」と答える人は多くいますが、「2番目に高い山は?」と質問されて「北岳」と答える人はほとんどいません。

 

 

「日本で1番大きな湖は?」と質問されて「琵琶湖」と答える人が多くいますが、「2番目に大きな湖は?」と質問されて「霞ヶ浦」と答える人もほとんどいません。

 

 

同様に、「女性専用30分フィットネスといえばどこ?」と質問されて「カーブス」と答える人は多くいるでしょうし、「ホットヨガといえばどこ?」と質問されて「LAVA(ラバ)」と答える人は多くいるでしょう。

 

 

でも、「カーブスやLAVA以外ではどこ?」と質問されて答えられる人は、業界人でも少ないと思います。

 

 

③一点集中主義(あれこれやらない)

 

 

「1つ」に絞ること。カーブスもLAVAも最初から1つに絞って大きくなりました。

 

 

フィットネス国内会員数ナンバーワンのカーブスは、未だに「30分フィットネス(健康体操教室)だけ」です。

 

 

自動車業界でトヨタを抜いて株式時価総額世界1位になったテスラは、「電気自動車しか」製造していません。他社は「ガソリン」「ハイブリッド」「電気」など複数扱っています。

 

 

昔から「中小企業と屏風は広げると倒れる」と言われています。あれこれやるのではなく、何かに絞る、一点集中する、です。

 

 

④接近戦

 

 

顧客に(こちら側から)近づく営業を行うこと。

 

 

大商圏を対象にした百貨店の市場規模がどんどん縮小する中、コンビニは半径500m以内の顧客を対象にして市場規模を拡大してきました。

 

 

福岡の中州に店がある福一不動産の古川社長は起業当初、九州全域を商圏としアチコチ飛び回って超忙しいかったわりに、年商は750万円でした。現在は中州の店から半径500mを商圏とし、接近戦で営業を行い、年商(ほぼ粗利)2億円を超えています。

 

 

フィットネスクラブの入会理由の上位に(自宅や職場から)「近いから」があります。会員獲得のチャンスが目の前にあるにもかかわらず、なぜか足元の営業をおろそかにしているところが多くあります。

 

 

弱者が強者と同じこと(や同じようなこと)をやっても勝てません。弱者が強者に勝つには「差別化・独自化」「1位主義」「一点集中主義」「接近戦」が有効な戦略となるのです。

 

 

お盆期間の今週は、ぜひ上記4つについて自問自答してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

それでは次号をお楽しみに!

 

 

追伸

「弱者の4大戦略」を取り入れた、儲かるフィットネス事業構築の仕組みづくり

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