(藤波名勝負特選108戦より)

 

●藤波はアグアイヨに飛龍原爆で勝ち、16回目のタイトル防衛。



 ジュニア時代屈指の「強いドラゴン」
 1979年4月5日。


79年・ビッグファイト・シリーズの最終戦。藤波16回目の選手権試合である。
シリーズ最終戦の東京体育館で、藤波はペロ・アグアイヨの挑戦を受け、これを完璧な飛龍原爆固めで破り、WWFジュニアヘビー級タイトルの16回目の防衛に成功。

この試合で藤波は、終始余裕があり、相手のメキシコの強豪ペロ・アグアイヨの技をすべて受け切り、次の攻撃を見切って、最後に飛龍原爆固め

ここでは、レフェリーはカウントをとらず、決まった瞬間にゴングを要請。


まさに 「強いドラゴン」として、文句なく、ジュニアヘビー級時代の名勝負のひとつとなった。

 

▼試合経過▼

 

○選手権試合らしいおごそかセレモニー


赤いソンブレロのアグアイヨ、続いて藤波が入場。メキシコ総領事のご挨拶。なんと、リング上から。二階堂コミッショナーが隣にいる。セレモニーが続く。


藤波に、ガウンの贈り物。ボクシングの藤原から、花束が藤波に贈られる。
両国国歌の吹奏。まずはメキシコから。メキシコ国歌の吹奏の間、右手を胸の所にあて精悍な顔つきのアグアイヨ。

これが「山犬」ペロ・アグアイヨ、精悍な顔つき


続いて、国歌・君が代。すっかり落ちついて、自信あふれる顔の藤波。観客が着席して、コミッショナーの宣言。二階堂進。
藤波のセコンドにはグラン浜田も。藤波は赤いタオルを首にかけて、やや余裕がうかがわれる。
アグアイヨは、白いトランクスで、リングアナウンサーのコールに手を挙げてこたえる。場内にもっと拍手せよ、とアピール。
当然のことながら、藤波への声援が大きい。
「藤波のスピード・テクニックか、アグアイヨのラフか」という試合展開の予想に、期待が高まる。

テレビ解説の桜井さんは「アグアイヨも、テクニックはしっかりしてますよ。強い相手ですよ!」

ここまでが、選手権試合のセレモニー。メキシコ総領事まで招いて、その権威を高めている。


○いよいよ試合開始。

両者がリング中央に。藤波が握手を求めるが、それに応じない。今度はアグアイヨから右手を出して、藤波がそれに応えて握手すると、そのまま離さないアグアイヨ。したたかだ。そのまま攻撃を仕掛けようとするが、レフェリーに阻まれ、藤波、首に架けていた赤いタオルを場外に投げ、臨戦態勢。

ゴングがなって、いきなりバックの取り合い、藤波を後から、倒して、腕を取りにいく。離れる。その繰り返し。


アグアイヨもかなり強引だが、藤波が逆に左腕を決める。手四つから、有利なポジションを取ろうとする両者。
藤波が、アグアイヨの左足をトーホールドに決め、場内「ゴーゴーフジナミ!」のかけ声。おおいに盛り上がる。
ロープブレイクも、綺麗に離れる。すばらしい。なんといっても両者動きが速い。


アグアイヨが、藤波を責める。両手両足を固める。メキシコ流のねちっこいグランドテクニックもなかなかのアグアイヨ。場内、またドラゴンコール。アグアイヨ、フロントネックロック。藤波がロープへ飛ばして、体当たり。これを飛び越えて、モンキーフリップに切り返す。アグアイヨが、フライングしてのネックシザース。これでカウント2が入る。

 試合序盤から、グランドテクニックを惜しみなく披露する両者。ここから急に動きが早くなって、藤波のキビキビとした動きに、アグアイヨが少し押され気味になる。

 ロープブレイクのアグアイヨをなかなか離さなかった藤波に、高橋が注意。藤波を倒して、身体全体で、藤波をの両手を背中から決めるアグアイヨ。藤波苦しい。十字架固めからストレッチと、メキシコ流のねちっこい攻撃に、藤波ちょっと劣勢。5分経過。
 アグアイヨ、首投げから、サーフボードを決める。藤波は、返すが、力くらべをすると、見せかけて、身体を回転させ、逆さ押さえ込みををきめるアグアイヨ。そのまま右手を逆に持って話さない。さらに足をかけたが、その足を藤波が取って、一気にストンピング。

 藤波、大きなモーションをつけてのエルボースマッシュ、2連発。リング下に落ちるアグアイヨ。藤波、プランチャを狙うが、アグアイヨが逃げて。それに気づいて藤波思いとどまる。油断したアグアイヨに向けて、すばやくドラゴンロケット。完璧に決まった。


 ドラゴンロケットは3列目ぐらいまで飛んでいき、藤波も場外で倒れる。そして、アグアイヨは、5列目ぐらいのところでダウンしている。起きあがって場外乱闘、殴り合い。藤波がドロップキックを狙うが外されて、アグアイヨはリング内に。

 藤波の頭をエプロンにたたきつけようとするが、藤波、踏みとどまり、逆に場外から攻撃。
リングインしたところに、アグアイヨが、フライングボディプレス。カウントは2。藤波、アグアイヨの身体を返して、回転足折り固めを狙うも、カウント2で逃れられる。
 藤波至近距離からドロップキック! 2発目は外される。アグアイヨのセントーン

この回転体落としをかろうじてカウント2返す藤波。

アグアイヨ、ロープ最上段から、セントーンを狙うも、藤波これをかわす。
背中をしたたかうったアグアイヨ苦しそう。藤波、背後からキックを腰に。3連発。そしてドラゴンバックブリーカー2連発。2発目は強烈。
 そして、いっきに、フルネルソンから、ドラゴンスープレックス!

 レフェリーカウントせず、ゴング要請。
決まった瞬間に、ゴングを要請するレフェリー。

藤波の左手をあげ、グラン浜田と抱き合う。
アグアイヨは、首を抑えて動けず。、認定書の授与、トロフィーが贈られる間も、アグアイヨは動けず、首を押さえたまま。若手に、助けられながら、控え室へ。


▼試合について▼

8分50秒。短時間の勝負であったが、前半のグランドを中心としたねちっこい展開から、後半は場外へ跳んだり、動きの激しい試合。
そして、最後は、飛龍原爆固めが見事に決まった、藤波の、まさに藤波らしい防衛戦であった。ドラゴンブームの真っただ中での、得意技のオンパレード。

藤波とアグアイヨのベストバウトといえます。

なお、この後、メインは、猪木とタイガージェットシンのNWFタイトルをかけたランバージャックデスマッチ。凶器が飛び交う、血で血を洗う大狂乱の試合となり、当時の猪木の、猪木らしい試合。(20分21秒・体固めで猪木の勝ち)
これがまた、セミの藤波の試合と好対照を見せ、すばらしい「シリーズの締めくくり」の大会となった。



◆1979年4月5日 東京・東京体育館
▼WWFジュニアヘビー級選手権・61分1本勝負
  ○藤波(8分50秒・飛龍原爆固め)ペロ・アグアイヨ×

   ※藤波、16回目のタイトル防衛。