6月に入ってから、つま先着地で歩いています。右脚の変形性膝関節症はリハビリをしてずいぶんよくなったように思いますが、ときどき歩いているときに痛みが出ることがあります。なんとか痛みが出ない歩き方はないものだろうかと考え続けた結果、6月1日、ふと、つま先着地を試してみようと思い立ったのです。

 人間はかかと着地で歩きます。足のかかと、拇指球(親指の付け根)、小指球(小指の付け根)を頂点とする三角形の3辺がそれぞれアーチになっていて、着地の衝撃を和らげる働きをしています。かかとと小指球を結ぶ線が外アーチ、小指球と拇指球を結ぶ線が横アーチ、拇指球とかかとを結ぶ線が内アーチです。

 歩行動作で体重はどのように足にかかるでしょうか。足を前に振り出して、かかとから着地すると、まず、かかとに体重がかかります。そこから、腰が前に出て、前にある足の上を通ります。このとき、体重はかかから外アーチを通ってつま先側の小指球に移ります。さらに横アーチを通って拇指球に移った後に、足が地面から離れます。

 こうして考えてみると、内アーチは土踏まずがあって大きなアーチになっているにもかかわらず、歩行時にほとんど衝撃吸収の役目を果たしていないことがわかります。

 つま先着地では、小指球から着地します。体重はまず小指球にかかり、横アーチを通って拇指球に移り、さらに内アーチを通ってかかとに移ります。ここまでが着地のときの一瞬の動作です。ここから腰が前に出て足を追い越します。このときにかかと着地と同じ体重移動が起こります。すなわち体重は、かかとから外アーチを通って小指球に移り、横アーチを通って拇指球に移った後に、足が地面から離れます。

 整理すると、体重の移動は次のようになります。

<かかと着地>
かかと-(外アーチ)-小指球-(横アーチ)-拇指球-(内アーチ)

<つま先着地>
小指球-(横アーチ)-拇指球-(内アーチ)-かかと-(外アーチ)-小指球-(横アーチ)-拇指球-(内アーチ)

 つま先着地では、かかとが着地するまでに、横アーチと内アーチを使って衝撃が吸収されます。かかと着地では、内アーチは衝撃吸収には使われず、最後に地面を蹴るときに使われるだけです。この結果、かかと着地よりも、つま先着地の方が膝にかかる負担が少なくなります。

 7月に放送されるNHKスペシャル「ミラクルボディ」の予告編を見たことも、つま先着地を試してみようと思うきっかけになりました。現在、マラソンの歴代記録の上位を独占しているアフリカの選手の走りをハイスピードカメラで撮影したところ、つま先着地で走っていることがわかりました。長距離走では、かかと着地もしくは足裏全体の同時着地が一般的です。アフリカ選手の速さの秘密はつま先着地にあったというわけです。

 6月2日から、すべてつま先着地で歩いています。まだぎこちないのですが、だんだん慣れてきました。3日の日曜には、ウォーキングと半々でつま先着地のジョギングもしました。

 つま先着地の方がスキーのダイナミック・ポジショニングのこぶの乗り越え方に近いように思います。足を前に出さずに腰を前に出す要領です。スムーズにできているときには、見た目にそれほど違和感はないようです。

 さらに、4日はアベノETCトランポリンクラブで、つま先着床を試してみました。

 普通、トランポリンでは、着床時にかかとをベッドに付けて、足裏全体でベッドを踏んで、離床するときにはつま先を最後までベッドに残すように言われます。

 つま先を最後までベッドに残して離床すると、空中ではつま先が下に向いて足首が伸びた状態になります。空中ではつま先が伸びた状態を維持して、着床寸前に膝を曲げると同時に足裏をベッドと平行にして、ベッドを足裏全体で踏むわけです。これが普通のトランポリンの踏み方です。

 それに対して、つま先着床というのは、足裏全体をベッドに付けるのではなく、真下に向けて伸ばしていたつま先がベッドに触れた瞬間、膝を曲げて足裏全体をベッドに付けます。

 ベッドを踏むタイミングを合わせることができれば、高く安定したジャンプができます。しかし、いつ足がベッドに着くかは、目で見て判断することができません。つま先着床ができれば、つま先がベッドに触れた瞬間に足裏をベッドと平行にしていけばよいので、目をつむっていてもタイミングを合わせることができるはずです。

 つま先着床をやってみると、低いときはできるのですが、だんだん高さが出てくると、つま先がベッドに触れるまで待つのが怖くて、着床するまでに足裏がベッドと平行になるように空中で準備してしまいます。

 地面で垂直跳びをしたときのように、数十センチしかジャンプしないのであれば、この動作ができます。しかし、1mを越えるジャンプになると、突き指するのではないかという恐怖があって、つま先を伸ばしたままにしておくことができません。引き続き練習することにしましょう。

 立位ジャンプでのつま先着地の理屈は、腰落ち、腹落ち、背落ちにも当てはまるでしょう。

 腰落ちであれば、足(つま先の裏)がベッドに着いてからお尻(重心)がベッドに着くようにすればいいはずです。

 腹落ちなら、足(つま先の甲)がベッドに着いてからおなか(重心)がベッドに着くようにします。胸から先に着いてはいけないということです。

 背落ちは、肩から着床して、次に腰(重心)がベッドに着きます。腰が先に着床すると安定しません。肩がベッドに着いてから、曲げていた脚を伸ばして、ベッドが沈んで底を打ったところで、膝が伸びきった状態にします。

 いずれも、体をベッドと平行にして着床するのではなく、体が斜めに伸びた状態で低い部分から着床し、ベッドが沈みきったところで、ベッドに着いている体全体が水平になるようにします。これがつま先着地と同じ腰落ち、腹落ち、背落ちです。

 実際には、そんなことはできないかもしれませんが、少なくとも、そういう意識でやった方が、安定して高さのあるジャンプができるということが、試してみた結果、わかりました。

 これから、こういう意識で練習していきます。実は、つま先着地(着床)は、モーグルのこぶの乗り越え方や、ジャンプにも共通するのです。スキーのトップを先に落とす動作です。
 月曜のアベノETCトランポリンクラブでは、トランポリンのベッドとばねが新調されました。十字に交差する帯の幅が縦横とも4mm幅で通称4×4(よんよん)というベッドです。4mm幅と6mm幅の4×6(よんろく)よりも空気抵抗が少ない分、ベッドが沈みやすく反発しやすいので高く跳べます。ばねも新しくなって反発力が強くなりました。

 木曜とは別の人と同じ台で一緒に練習して、またアドバイスしました。その人は半分ひねり腹落ちを練習していたのですが、この技はひねりが不足すると肩から落ちて、肩の亞脱臼を起こす危険があります。低い高さで、ひねりの動作とタイミングを十分練習する必要があります。

 半分ひねり腹落ちは、直立姿勢のピルエットで前半の4分の1をひねり、横を向いた状態で全身を伸ばしてピークを迎え、下降するときに脚から先に残りの4分の1をひねって腹落ちします。この動作とタイミングを覚えるために、4分の1ひねった立位姿勢で横向きにベッドに立ち、足をベッドに付けたまま、全くジャンプせずに脚をひねって腹落ちするところから始めて、徐々に高さを上げていきます。

 しかし、そればかりを練習していると、どうしてもだんだんと体を倒すタイミングが早くなっていきます。そこで体を逆向きに傾けるシートドロップ(腰落ち)やスイブル(腰落ちから半分ひねり腰落ち)を混ぜて交互に練習します。

 そうすると、スイブルがうまくできていないことが判明したため、今度はそちらを前半の4分の1ひねりと後半の4分の1ひねりに分けて練習しました。そうすると、前半の4分の1ひねりをするのに、シートジャンプ(腰落ちからのジャンプ)に問題がありそうだということになりました。

 体幹の筋肉の使い方に問題がありそうです。なんでも、シートジャンプを上手にするために腹筋を鍛えているそうです。でも、シートジャンプと腹筋は関係ないんですよね。

 そこから話が体幹の鍛え方になったのですが、ぼくの考えでは、いわゆる「腹筋」と言われる筋力トレーニングはほとんど無意味です。

 なぜなら、上体起こしやクランチ(背中を丸める)、脚上げ腹筋は、腰や背中を曲げるために筋力を使いますが、スポーツで腰を曲げたり、背中を丸めるのに力を使う場面が思い浮かばないからです。腰や背中を曲げることがあっても、力はいらないですね。いくら考えても、上体起こしやクランチ、脚上げをする場面がありません。

 腹筋を何に使うかと言うと、拮抗筋である背筋と組み合わせて使うことによって、背骨を伸ばした姿勢を維持するためです。上体起こしやクランチ、脚上げで鍛えられるのは、腹筋のうち体の前面に近い部分だけではないでしょうか。伸ばした姿勢を維持するために使う腹筋は、もっと奥の方の芯(コア)にあるように思います。

 ぼくも以前は、腹筋を鍛えるために、上体起こしやクランチ、脚上げをやっていましたが、今はいっさいやっていません。がんばって腰や背中を曲げてもしかたがないからです。時間とエネルギーの無駄だと思っています。

 では、背骨を伸ばした姿勢を維持するために使う腹筋を鍛えるにはどうすればいいでしょうか。

 一つはトランポリンのキャットジャンプ(背落ちの連続)です。トランポリンがなくても畳の上でもできます。肩倒立の連続です。仰向けに寝転んで、股関節と膝関節、肩関節をそれぞれ直角に曲げて、足首を伸ばし、腕も伸ばして手の指先を天井に向けておきます。その状態から、足を天井に向けて蹴り上げて膝を伸ばし、さらに股関節も伸ばして、肩だけが畳に着いて、胸から足の指先までが天井に向かって一直線に伸びた姿勢をつくります。両手は体側につけます。その状態で静止した後、腰を畳の上に落として元の体勢に戻り、再び足を蹴り上げて肩倒立にもっていきます。これを繰り返します。

 筋肉を鍛えるためには、弛緩(伸展)と緊張(収縮)を繰り返すことが必要です。体を伸ばした姿勢を維持するためだからといって、力を入れっぱなしにしても筋肉を鍛えることはできません。

 そのほか、スクワットやデッドリフト(膝をわずかに曲げた状態から床の上のバーベルやダンベルを持ち上げる)でも、曲がった腰や背中を伸ばすための腹筋を鍛えることができます。ショルダープレスなどの種目でも体を伸ばした姿勢を維持するために腹筋を使います。こうした負荷トレーニングによって体を伸ばした姿勢を維持するために、体幹の筋肉をどのように使えばいいのかがわかれば、トランポリンのジャンプやランニングなど日常の練習で体幹を鍛えることができます。そうすれば貴重な練習時間を有効に使うことができます。

 上体起こしやクランチ、脚上げは、トレーニングのためのトレーニングに過ぎないと、ぼくは思っています。俳優が見た目のために腹筋を割るというような目的ならば話は別ですが、スポーツのパフォーマンスを上げるのが目的ならば、これらのトレーニングは貴重な時間を浪費することにしかならないと思います。体力測定に上体起こしがありますので、そこでいい成績を上げたいというのならばそれもいいでしょう。シャトルランなどもそうだと思いますが、トレーニングの成績を上げるためのトレーニングですね。

 スポーツに腰を曲げる動作が必要ないわけではありません。股関節の素早い曲げ伸ばし、つまり脚の素早い引きつけと伸ばしという動作は、ランニングをはじめ、あらゆるスポーツで重要な動作です。これは腹筋ではなく腸腰筋を使うので、別のトレーニングが必要です。
 月曜のアベノETCトランポリンクラブではっきりとわかりました。トランポリンの肝です。1回しか言いませんので、よく聞いてください。

 ベッドが沈んで底を打ってから離床するまで、微動だにしてはいけない。

 以上です。スタンディングジャンプはもちろん、腰落ち、腹落ち、背落ち、すべてのジャンプについて言えます。ですので、スイブル(腰落ち2分の1ひねり腰落ち)、ローラー(腰落ち1回ひねり腰落ち)、キャットツイスト(背落ち1回ひねり背落ち)、背落ち・腹落ちなどすべての技の成否は、このことができるかどうかにかかっています。

 逆に言うと、体を動かしていいのは、着床してからベッドが沈んで底を打つまでと、離床して体が空中に出てからということです。
 金曜は静岡出張、土曜は京都で仕事、日曜は京都府綾部市の実家に帰って地区の里道の草刈りと田植え、月曜は普通に会社に行って帰りにアベノETCトランポリンクラブというここ数日でした。この間、新幹線や地下鉄の車内などで、時間を見つけては、蒲田和芳・広島国際大学准教授より伝授された秘法「カワハギ」を自分の全身に施していました。

 カワハギ(C)Kazuyoshi Gamada, All Rights Reserved.とは?

 軟部組織リリースの通称で、リアラインの徒手療法の一つです。
 ぼくはこれについて説明する立場にないので、詳しくは蒲田さんのウェブサイトやFacebookをごらんください。
http://realine.info/home/manual
http://www.glabshop.com/

 ぼくの場合について言います。ぼくの右膝はねじれてしまいました。右脚を伸ばして力を入れると、右の太ももに筋肉(大腿四頭筋)が浮き出るのですが、それがねじれていました。よりがかかったロープのようになっていたのです。例えて言うと、繊維がよりあわされたロープが接着剤で固められ、さらにビニールチューブで覆われた状態でした。膝には伸展制限があって、無理に伸ばそうとしても痛いだけで、伸びませんでした。

 変形性膝関節症は脚の筋力(特に内転筋)の低下によって起きることが多く、運動療法では、筋力を回復するトレーニングが推奨されます。ところが、ある整形外科医の診断によれば、ぼくの脚の筋肉は同年代の人の3倍あるそうです。ぼくの膝のねじれや変形性膝関節症は、筋力低下によって起きたのではありません。筋肉がねじれたまま強化されたことによるものです。

 そこで、治療方針としては、まず筋肉のねじれを解消することが必要になります。その際に威力を発揮する徒手療法がカワハギなのです。

 さきほどの例えで言うと、まず外側を覆っているビニールチューブとロープの癒着をはがします。具体的には皮膚をつまんでひっぺがします。皮下組織と筋肉が引っ付いている場合、とても痛いです。とても痛いのですが、ひっぱがしてしまえば何か軽くなったようでとてもいい気持ちになります。もっともっとやりたくなるのですが、一度はがしてしまうと、もうカワハギはできません。膝の周りから始めて、連休の合宿のころには脚全体について一通りカワハギが完了したので、もう残っているところはないだろうと、半ば残念に思っていたのですが、ところがどっこい、それは始まりに過ぎませんでした。表面のカワハギが終わると、痛みを感じるところがどんどんと内部に入っていきます。ビニールチューブとロープの癒着がはがれて、ロープのよじれをほぐす作業に入るのです。皮下組織のさらに下にある筋肉をつまんで凝りをつぶしていきます。この段階になると、もはやカワハギならぬニクハギですね。

 カハハギ&ニクハギの効用は思わぬところにもありました。

 日曜は午前中に実家の地区の共同作業に出て里道の草刈りをして、午後に実家の田植えをしました。その合間、83歳の父が肩が凝ってしんどいというので、その凝りまくった肩に対してカワハギを試みました。最初、「痛い」「痛い」と叫んでいましたが、カワハギからニクハギに移行したあたりから、だんだんと気持ちよくなっていったようです。午前中はとても仕事ができない様子でしたが、このおかげで、午後には田植えができました。以前は歩行式の田植機を使っていたのですが、乗用の田植機を中古で購入して、その運転方法を覚えました。80を過ぎて新しい機械の操作を覚えるのは大変です。体に不調があると、そんな気にならないのですが、カワハギで肩こりが解消したおかげでやる気が出てきたというわけです。

 という話を夜、大津の自宅に帰って妻にしたら、妻も肩こりがひどいといいます。不肖私が妻の凝りまくった肩にもカワハギを施させていただきました。うつ伏せに寝て、肩の筋肉を緩めた状態でカワハギ。父以上に「痛い」「痛い」と叫びまくりましたが、容赦なくカワハギ。その効果あって、肩こりがすっきり解消したそうです。

 カワハギおそるべし。

 カワハギ(C)Kazuyoshi Gamada, All Rights Reserved.
 スキーシーズンもほぼ完全に終わり、ほとんど誰も関心を持っていないと思いますが、今シーズン最終日、ついに完成のめどが立ったぼくの独自のターンについて、Q&Aの形でまとめてみました。もちろん、誰かに聞かれたわけではなく、自分一人で悦に入っているだけです。

Q.今までのターンと何が違うのでしょうか。

A.今までのターンとはすべてが違います。一言で言うと、今までのターンは腰を一定の位置に保って足を動かしてターンをしていましたが、ぼくのターンでは足を動かさずに腰を動かします。今までのターンはスキーに対する体(重心)の位置が一定なのでスタティック・ポジショニング・ターン(Static Positioning Turn)、ぼくのターンはスキーに対しる体(重心)の位置を前後、上下に積極的に動かすのでダイナミック・ポジショニング・ターン(Dynamic Positioning Turn)と名付けて、区別することにしました。

Q.こぶを乗り越えるときに腰を前に出すように意識しているんですが、これはダイナミック・ポジショニング・ターンではないのでしょうか。

A.違います。ダイナミック・ポジショニング・ターンでは、こぶを乗り越えるときに膝を伸ばすことによって腰を前に出します。膝と腰が伸びて完全に立ち上がった姿勢になります。そのとき足はフォールライン上にあります。スタティック・ポジショニング・ターンでも、深いターン弧を描けば、ターン弧が一番深いところで脚が伸びきった状態になりますが、そのときに足はフォールライン上から遠く離れた位置にあります。ダイナミック・ポジショニング・ターンでは、足がフォールライン上から外れることなく、脚が伸びきった状態になります。スタティック・ポジショニング・ターンで足をフォールライン上に置いたまま、腰を前に出そうとすれば、膝をより深く曲げることになるはずです。

Q.スライドターン、カービングターンというターンの分類がありますが、ダイナミック・ポジショニング・ターンはどの範疇に入るのでしょうか。

A.スライドターン(ピボット)、カービングターンというのはスタティック・ポジショニング・ターンの分類ですね。

 FISのモーグルのジャッジマニュアルの定義によると、スキーのテールがトップの方向に向かって進むのがカービングターンです。この定義によると、直滑降が究極のカービングターンということになりますが、スキーの向きが変わらなければターンとは言いませんので、直滑降は除外されます。つまり、スキーが弧を描きながら進むとき、テールがトップの方に向かって進むのがカービングターンということになります。一方、スライドとかピボットと言われるターンは、足を中心にしてスキーを振ることによってスキーの向きを変えます。スキーのテールはスキーのトップが進む方向と垂直の方向に振られることになります。

 スタティック・ポジショニング・ターンでは腰の位置を一定にして足を動かすので、この2通りのターンが可能です。一方、ダイナミック・ポジショニング・ターンは足を全く動かさずにスキーを雪面に押さえつけたままなので、スライド(ピボット)ターンはできません。カービングターンだけが可能です。

Q.足を動かさずにカービングターンができるのでしょうか。

A.スタティック・ポジショニング・ターンでは、足をフォールライン上を中心として左右に動かすことによってターン弧を描きます。このとき注意してほしいのは、足で円を描くのではなく、あくまで左右方向に直線の振り子運動をするということです。ぼくは以前、円を描きながら一定の速度で前進したときに軌跡がサインカーブ(正弦曲線)になると思っていたのですが、これはとんでもない誤解でした。左右方向に振り子運動(単振動)をしながら一定の速度で前進したときに軌跡がサインカーブになります。円を描きながら前進したのではスキーが回りすぎてしまいます。以前、スタティック・ポジショニング・ターンを練習していたときにうまくいかなかったのは、この間違った理解のせいではないかと思います。

 自分でスキーの向きを変えるのではなく、左右に振り子運動をして、スキーを雪面に押しつけることによって、スキーが雪面から押し返されて向きを変えるのが、スタティック・ポジショニングのカービングターンです。

 カービング(Carving)というのは、「彫ること」「刻みをつけること」という意味です。本来の意味のカービングターンは雪面にスキーのエッジで刻みを付けるターンなのですが、次のように定義しなおすことができます。スキーを振るのではなく、スキーを雪面に押しつけることによって、スキーが雪面から押し返されて方向を変えるターンです。スキーを雪面に押しつけるのが作用、スキーが雪面から押し返されるのが反作用で、作用反作用の原理に基づくターンです。

 カービングターンの必要条件は、スキーで雪面を押すということであって、足を動かすということではありません。雪面に力を加えることさえできれば、足を動かさなくてもカービングターンができます。

Q.足をフォールライン上に置いたまま直線的に滑ることがありますが、これはダイナミック・ポジショニング・ターンではないのでしょうか。

A.違います。ダイナミック・ポジショニング・ターンの定義はスキーに対する体(重心)の位置を連続的に変化させることにあります。腰の位置が前後、上下に動きますが、足は動かず、フォールライン上を移動します。しかし、それがダイナミック・ポジショニング・ターンの定義ではありません。

 スタティック・ポジショニングでカービングターンをしようと思えば、足はフォールラインから外れて左右に振り子運動をしなければなりません。しかし、直滑降やスライドターンであれば、足をフォールライン上に置いたままにすることができます。スタティック・ポジショニングで足がフォールライン上にあるということは、カービングターンではないということです。

Q.ダイナミック・ポジショニング・ターンが今までのターンと違うことはほかにもありますか。

A.ほとんどすべての動作が違ってきます。ポール(ストック)を構える位置も違います。今までの構え方ではうまく滑れません。ターンからエアへの入り方、エアの着地からターンへの入り方も変わってきます。

Q.ダイナミック・ポジショニング・ターンの長所を部分的にスタティック・ポジショニング・ターンに取り入れることはできますか。

A.動作原理が異なるので、一部をどちらかに変えることはできません。体系としてすべての動作を一つの原理に統一しなければならないのです。別次元のターンと考えてください。

Q.ダイナミック・ポジショニング・ターンで滑っている選手はいますか。

A.モーグルではいません。アルペンや基礎スキーでもダイナミック・ポジショニングの原理を理解して意識的に取り入れている選手はいないと思います。

Q.見よう見まねでダイナミック・ポジショニング・ターンを習得することはできますか。

A.ダイナミック・ポジショニング・ターンの動作はとても単純です。人間の動きに合っているので、原理を理解すれば習得するのはさほど難しくないと思います。スタティック・ポジショニング・ターンではスキー独特の動作が求められるのに対して、ダイナミック・ポジショニング・ターンは普段、地上を歩いているときの動きしか必要ありません。ただ、スタティック・ポジショニング・ターンの動きがわずかでも入ってしまうと、うまくいきません。そういう意味ではスタティック・ポジショニングが身に付いた上級者ほど難しいかもしれません。一方、初心者にとっては恐怖心が壁になると思います。身を前に乗り出さなければならないからです。どちらにしても、今までのターンと全然違っているので、見よう見まねで覚えるのは難しいでしょう。

 今日は会社の帰りにアベノETCトランポリンクラブに行きました。右膝の変形性膝関節症が少しよくなってきて、背落ちや腹落ちの練習だけでなく、低い高さならジャンプもできるようになってきました。

 今日はアベノETCトランポリンクラブのマネジャー兼風紀委員兼世話役の松ねえから言われて、同じ台で練習していた人のコーチをしました。1級まで終えているレクリエーション選手で、今度大会に出るそうです。そこそこ高くジャンプできるのですが、姿勢が不安定で空中でしっかりと伸びることができていませんでした。

 このレベルに、トランポリンの一つの壁があるように思います。トランポリン競技の選手と、それ以外のトランポリン愛好者(レクリエーション選手やモーグル選手)との違いを生む壁です。

 まず、トランポリンのベッドをいかに踏むかというところから見直しました。着床してから離床するまでの姿勢、足への体重の乗せ方、腕の位置などです。それができるようになったら、離床後、どのように直立姿勢にもっていくか、手をどのように動かすかを説明して、空中できれいに伸びた姿勢がとれるように練習します。

 ベッドの上に足がついている間は力を入れて体をぴくりとも動かさないようにしなければなりませんが、離床した後は、一瞬、体の一部の力を抜いて、また力を入れて体を締めるという動作をしなければなりません。力を入れっぱなしでもだめだし、力を抜いたままでもだめです。

 低い高さから始めて、動作を確認しながらジャンプします。5本くらい跳んで高さが上がってくると乱れます。そしたら、ジャンプをやめてまた一からやり直します。

 アベノETCトランポリンクラブは、予備ジャンプを入れて30本跳んだら交代するのが決まりです。一人が1回に跳ぶのはせいぜい1分。バッジテストや大会前に10種目通して練習するときは、1回通すだけで交代です。何をどうするかを意識して集中して跳びます。しっかり高さを出して跳んだら、集中力が続くのは10本くらいなのです。競技選手のレベルになると、10本跳んだだけで、モーグルコースをスタートからゴールまで滑るのと同じくらいの時間になります。

 だらだら練習してもうまくならないので、低い高さから始めて5本くらいずつ集中して跳んで動作を覚えてもらいました。それを5~6セットやったら、ぼくの番です。自分の練習をする前に見本を見せて、次はここを意識してやってくださいと指示します。それを繰り返して、ストレートジャンプとシートドロップ(腰落ち)がしっかり真上に伸びてできるようになりました。

 シートドロップは基本中の基本ですが、高さを出してやろうとするとけっこう難しい技です。ぼくはこの技ができるようになるまでずいぶん苦労しました。何ができていないからできないのかをコーチに聞きながら自分で考えて練習したので、同じような悩みを抱えている人にアドバイスすることができます。

 ぼくの方は最近、クレイドル(背落ちから半分ひねり背落ち)やキャットツイスト(背落ちから1回ひねり背落ち)など背落ちとひねりを組み合わせた技を練習しています。それぞれ連続10回以上できることが、アベノETCトランポリンクラブで宙返りの練習をするための条件だからですが、いずれフルツイスト(後方1回宙返り1回ひねり)を練習するときに、段階練習としてどうしてもやらなければならないからです。どちらも高さを出して、空中でひねることが条件です。

 アベノETCトランポリンクラブに来る前からできていた技ですが、高さを出してしようとすると難しさの次元が違ってきます。トランポリンの反発を使って回転やひねりをかけるのではなく、空中に出てからひねらなければならないからです。

 シートドロップやローラーなど腰落ち系の技もそうですが、高さを出して、空中で回転やひねりをかけることができるかどうかが、競技選手と一般愛好者の分かれ目です。そして、モーグルについて言えば、これができるかどうかで、エアの完成度が全然違ってくるはずです。次元の違うエアが待っていると思います。
 今日は会社の帰りにアベノETCトランポリンクラブに行きました。
 課題の背落ち・腹落ちは先週木曜の練習で、背中がベッドに着く寸前に曲げていた膝を伸ばせばOKということがわかりました。ぼくはときどき、膝を曲げたままで着床していたのです。背落ち・腹落ちはそこに気をつけて、毎回、練習していくことにします。

 今日の練習では、股関節のつなぎと切り離しについて考えました。ぼくの考えでは、トランポリンの技は、回転(縦回転)もひねり(横回転)も、すべての成否は股関節のつなぎと切り離しがうまくできるかどうかにかかっています。モーグルのエアも同様です。

 一緒に練習していた人がスイブルヒップス(腰落ちから半分ひねり腰落ち)で苦労していたので、僭越ながらアドバイスをしました。スイブルは、シートドロップ(腰落ち)した後、ジャンプしながら4分の1ひねって、体を真横に向け、ピーク(最高点)で両手を挙げてバンザイで背伸びをした姿勢をつくり、下降するときに残りの4分の1をひねって離床時と反対向きにシートドロップします。

 合計2分の1ひねりの技ですが、前半の上昇するときの4分の1ひねりと、後半の下降するときの4分の1ひねりは、ひねり方と股関節の使い方が違います。

 前半の4分の1ひねりは上半身を先行させます。シートジャンプするときに両手を真横に向けて挙げることによって体全体をひねって真横に向けます。脚は動かしてはならず、上半身が上昇するときに腰にぶら下げて重力によって下に伸ばします。股関節を切り離した状態にする必要があります。股関節がつながっていると、脚がプロペラのように回ってしまうのです。

 体が真横を向いたときに両手バンザイのまっすぐ伸びた姿勢で静止した後、ピークから下降するときに後半の4分の1をひねります。このときのひねりは、脚を先行させます。空中でかけるひねりです。脚からひねっていって体が向きを変えるのに合わせて真上にあった両手を体の後ろに下ろし、体全体を後ろに傾けて腰から着床します。後半は、ひねるためにも、体を後ろに倒すためにも、下半身と上半身を連動させる必要があります。脚だけひねったのでは体全体が回らず、上半身だけを後ろに傾けたり、下半身だけを持ち上げたのでは、爪先から頭のてっぺんまでが1本の棒になって後ろに倒れてくれません。下半身と上半身を連動させるために股関節はつないだ状態にしておかないといけないのです。

 この股関節のつなぎと切り離しは、すべての技で適切に使い分ける必要があります。どのタイミングで股関節をつないで下半身と上半身を連動させるか、あるいは股関節を切り離して下半身と上半身に別々の動きをさせるか。トランポリンの選手は、それを意識してやっているわけではありませんが、練習によって経験的に感覚をつかみ、体を伸ばさなければならないところでは、股関節をつないで下半身と上半身がねじれたり、腰が折れたり、反ったりすることがないようにし、抱え型(タック)や蝦型(パイク)のときには股関節を切り離して体を素早くしかも深く折り畳みます。

 ところが、モーグルスキーでは世界のトップのほんの一握りの選手を除いて、ほとんどの選手ができていません。股関節を切り離したままで、つなぐことができていないので、下半身と上半身が連動していないのです。

 バックレイアウト(伸身後方宙返り)で多い失敗は、腰が折れたり、体が反ったりすることです。きれいに伸びているようでも股関節は切り離されていて遠心力で伸びているだけだったりします。これだと回転をコントロールすることが難しいです。

 フルツイストやコークスクリューでものすごく回転していると思ったら上半身と下半身がばらばらに回っているだけだったり、コークスクリューで上半身が先に回り、下半身が遅れてついていくので、ひねりの軸が通っていないというのもよく見受けます。

 フルツイツトで股関節がつながっていないと、腰が折れたり、ねじれたりします。これでは7oA(Dスピン)にしか認定されないだけでなく、ひねりが止まるとともに回転が止まってしまって、頭から落ちる原因となり、大変に危険です。フルツイストをする場合には、下半身と上半身を連動させることができるようになっておくことが絶対に必要です。ヘリコプター(スピン)で、上半身を先にひねって、下半身が遅れてついてくるレイトしかできない選手は、まず、足の先(スキーのトップ)、膝小僧、へそ、胸、顔が常に同じ方向を向いているひねりができるようになるよう練習すべきだと思います。

 モーグルスキーのターンでは股関節は切り離されていなければなりません。つながった状態ではスキーが方向を変えるのと一緒に腰が回ってしまうからです。

 しかし、エアでは股関節のつなぎが必要です。どの動作は切り離し、どの動作はつなぐのかがわかっていないと、いずれ行き詰まってしまうと思います。
 一つ前の記事「2種類のこぶの乗り越え方」の続きです。
 腰の高さを変えずに踏み台を乗り越える方法が二つありました。一つは、踏み台の上で腰の高さを変えないようにして、もう一方の足を動かしてまたぎ越す方法。もう一つは、踏み台の上で腰を支えている脚を伸ばしながら腰を前に移動して、もう一方の脚を引っ張って前に出す方法。

 最初の方法は腰、つまりポジション(重心の位置)が動かずじっとしています。これが従来のターンの方法で、ぼくはこれを「スタティック・ポジショニング・ターン(Static Positioning Turn)」と呼びます。重心の位置の変化がなく、静的(Static)だからです。

 二つ目の方法は腰を積極的に動かします。ポジションが一気に前に移動するので、ポジションの変化が動的(Dynamic)です。これがぼくが考えた新しいターンで、「ダイナミック・ポジショニング・ターン(Dynamic Positioning Turn)」と命名しました。

 踏み台の二つの乗り越え方を試してみた人はわかると思いますが、二つの方法にはそれぞれ長所、短所となる特徴があります。

 スタティック・ポジショニングは、ゆっくりとした動作で踏み台の後ろにある足を踏み台の前にもっていくことができます。その一方、踏み台の上の腰を同じ位置にキープするために、踏み台の上に乗せた脚に力を入れて踏ん張らなければなりません。腰の位置が動くも動かないも、踏ん張り方次第ということです。

 対して、ダイナイック・ポジショニングは、腰を一気に前に動かします。移動は高速になりますが、腰の位置は意識せずともほとんど自動的に同じ高さに保たれます。ただし、踏み台をまたぎ越す足は、積極的に動かしているのではなく、腰に引っ張られて前に出るだけなので、踏み台を越えた後、どの場所に置くかという狙いを付けることができません。コントロールが難しいということです。

 踏み台をもう一つ前に置いて、続けて同じことをするとしたらどうでしょうか。左足を踏み台の上に置き、腰を高さを変えないようにして右足を前に出し、さらに腰の高さを変えないようにして前方の踏み台の上に左足を置き、もう一度腰の高さを変えないようにして右足を前に出すという連続動作です。スタティック・ポジショニングよりも高速で移動するダイナミック・ポジショニングの方が難しくなります。踏み台の大きさが足の大きさくらいしかなかったり、踏み台の間隔が狭かったりすると、ダイナミック・ポジショニングでこの動作を続けることはほとんど不可能になるでしょう。ピッチが短くて掘れたこぶ(とがったこぶ)をダイナミック・ポジショニングでタイミングを合わせて滑り続けるためには、どうしてもスピードを落とすための動作が必要になります。

 それがターン(方向転換)です。スキーのトップの向きを左右に動かす動作です。スキーが雪面から受ける抵抗(反作用)は縦方向が小さく、横方向が大きくなります。進行方向と垂直になる長さが縦方向は短く、横方向は長いからです。カービングにせよ、スライドにせよ、スキーを横に向ければ、進行方向の抵抗が大きくなり、進行方向の速度を落とすことができます。

 横回しのカービングはこの原理でスピードコントロールをします。腰の位置をフォールライン上の同じ高さに保ち、足を振り子のように左右に動かしながら前に進みます。足が腰の真下にきたときに、膝を曲げて引き上げます。このタイミングをこぶを乗り越えるタイミングに合わせれば吸収動作になります。足の左右の振り幅を小さくすれば、スキーが縦を向いて体(腰から上)がフォールライン上を前進する速度が上がり、振り幅を大きくすればスキーが横を向いて減速します。

 スタティック・ポジショニングは腰を動かさずに足を動かすので、腰をフォールライン上に置いたままあ足を振り子のように左右に動かすことができます。ところがダイナミック・ポジショニング・ターンは、足を動かさずに腰を動かします。モーグルのルールでは腰をフォールライン上に維持しなければなりません。そのルールに従って横回しのカービングをしようとしたら、足の位置が右に移動するのに合わせて腰を左に動かし、足の位置が左に移動するのに合わせて腰を右に動かさねばなりません。考えただけでも難しい動作です。人間の体は体幹(胴体)に近いほど動かしにくく、末梢にいくほど動かしやすくなっているからです。足を動かすスタティック・ポジショニングに比べて、腰を動かすダイナミック・ポジショニングは、高速で細かい動きが苦手です。ミドルターンであればなんとかできるかもしれませんが、モーグルコースの細かいこぶに対応するのは難しいでしょう。

 そこで、足も腰もフォールライン上に置いたまま、膝を左右に動かしてみてはどうかと考えました。膝を左右に動かしながら曲げ伸ばしするこことになるのですが、膝は本来、横方向には曲がらないようになっているので、無理がかかります。ぼくは右膝の内側側副靭帯を傷めた後だったということもあって、このターンをしているうちに、右膝が内側に入ってしまい、気づかないまま変形性膝関節症が進行してしまいました。

 腰を後ろ・下から前・上へと動かしてこぶを乗り越えるという動作と、スキーの左右の方向を変えるというターンを両立するにはどうすればいいのか。この問題には答えがないのかもしれないと思いかけていた連休の合宿最終日、方法を発見することができました。
 能書きばかりたれていてもしかたがないのですが、こんな雲をつかむような理論の話でもアクセス数が落ちないので、もう少しだけ書きます。

 問題を出すので考えてみてください。

 高さ20cmくらいの踏み台を用意してください。なければ、バケツをひっくり返して置くとか、座布団を5枚くらい重ねるとか、なんでもいいです。道路の縁石でもいいです。

 片方の足を踏み台に乗せて、もう一方の足を踏み台の向こう側に持っていきます。つまり、片方の足で踏み台を踏んで、またぎ越します。このとき、腰の高さを変えないでまたぐにはどうしたらいいでしょうか。

 どちらの足でもいいのですが、例えば左足を踏み台に置いて、腰を前に出しながら、後ろにある右足を踏み台の前方の床に下ろすとき、腰の高さを変えないようにするにはどうすればいいのか。これが問題です。

 ここから答えを書きますので、自分で考えてみたい人は、ここから先は読まずに、試してみてください。

------------考え中-------考え中-------考え中-----

 答えです。

 どちらの足でもいいんですが、ぼくは右膝が悪いので、踏み台に置くのを左足にして説明します。

 踏み台に置いた左脚の膝の角度は120度くらいでしょうか。曲がっています。腰も同じくらいの角度で折れています。腰を前に出しながら、膝をさらに深く曲げていきます。こうすることによって、腰の位置を同じ高さに保つことができます。腰が踏み台の上にきたところで、左膝の角度が変わらないように踏ん張りながら、後ろにある右足を持ち上げて前に出します。右足の動きは、抜き足(後ろから抜く)、差し足(前に下ろす)です。これで腰の高さを変えずに踏み台を乗り越えることができました。

 正解の方、おめでとうございます。ところが、答えはこれだけではありません。もう一つ、方法があります。

 二つ目の答えです。

 左足を踏み台に置きます。膝を深く曲げながら腰を前に出すところまでは同じです。腰が踏み台の上にきたところからの動作が違います。後ろの右足で床を後ろに蹴ると同時に、踏み台の上で曲げていた左膝を伸ばします。腰が勢いよく前に出て、それにつられて右足が踏み台の前に出ます。これで腰の高さを変えずに踏み台を乗り越えることができました。これが二つ目の答えです。

 一つ前の記事「ダイナミック・ポジショニング・ターンとは何か」を読んで理解した人は、この2種類の踏み台の乗り越え方が何を意味するかがわかると思います。

 最初の方法は、従来の普通のターンのこぶの乗り越え方です。腰を動かさずに足を持ち上げて踏み台を越えました。腰の高さを変えないよう、腰の位置を同じ場所にキープして、足を動かしたのです。

 二つ目の方法は、腰を動かしました。右足は前に動かそうとして前に出たわけではなく、左足が踏み台を蹴ることによって前に出た腰に引っ張られて前に出ました。これがダイナミック・ポジショニング・ターンのこぶの乗り越え方です。

 この乗り越え方が不思議なのは、踏み台の上で曲げていた左脚を伸ばして立ち上がる動作をしているにもかかわらず、腰が高くならずに前に出ることです。誰しも膝を伸ばして立ち上がったら腰が高くなるはずだという先入観があるので、この方法は思いつきにくいのではないかと思います。

 ぼくがこの乗り越え方を発見したのは昨シーズンです。自然こぶを斜滑降する練習をしていて気づきました。自然こぶ斜面を横断することによってウエーブ練習ができます。どのような吸収動作をすればこぶをスムーズに乗り越えることができるのか。前の記事に書いた従来のターンの3通りの吸収動作もすべて、こうして練習しました。そうした試行錯誤をしているうちに、全く予想もしなかった方法を見つけたのです。

 モーグルスキーでは腰の高さを変えずにこぶの乗り越えなければなりません。そのためには、こぶの頂点で脚を曲げて低くなり、こぶの谷間の深いところで脚を伸ばして高くならなければなりません。こぶの起伏に合わせて下半身の長さを変えることによって腰の高さを一定に保つのです。そのために、何らかの方法によってこぶの頂点で足を引き上げるというのが、これまでのターンの吸収動作の考え方です。

 ところが、ダイナミック・ポジショニング・ターンのこぶの乗り越え方では、こぶの頂点で立ち上がるのです。今までとはまるっきり逆です。

 こぶの上で立ったら腰の位置がさらに高くなって、こぶの起伏を打ち消すどころか、全く逆の動作になるのではないかと思いがちですが、実際にはそうはなりません。止まったままの状態では、こぶの上で立つとさらに高くなるのですが、スキーでこぶを滑るときには前進しています。こぶの頂点で立ち上がると、スキーがこぶの頂点を越えてだんだん深いところへ下りていくのに合わせて膝が伸びていき、やがてこぶの一番深いところで、膝が伸びきって腰が一番高くなります。このタイミングを合わせるのが難しそうですが、実は何も考える必要はありません。こぶの頂点で膝を伸ばしながら腰を前に出していくだけでいいのです。しかも、こぶを乗り越えるのに合わせてスキーのトップが落ちて、スキーがこぶの裏側に張り付きます。

 昨シーズン、この乗り越え方を発見したとき、ぼくはダイナミック・ポジショニング・ターンを完成する鍵を手にしたと思いました。その日、2011年2月13日は、従来とは全く逆の発想の吸収動作を発見した記念日としてノートに記録しています。しかし、異次元のターンには、さらに別の鍵が必要でした。

 今になってわかりましたが、その理由はこうです。

 こぶには縦の波(起伏)だけでなく、横の波(左右の揺れ)があります。ウエーブを直滑降するのなら縦の波に合わせるだけでいいのですが、こぶをスムーズに滑るには横の波に合わせた動きが必要です。

 こぶの溝と溝の合わせ目を狙っていけば、横の波の影響を最小限に抑えることができるので、ほとんどウエーブを滑るのと同じ感覚でこぶを乗り越えていくことができます。しかし、それではスピードコントロールができません。こぶの深いところにトップを突き刺したところで、浅いこぶや急斜面のこぶ、硬いこぶでは減速効果がありません。高速で滑ってポジションが遅れたとき、減速して体勢を立て直すことができないのです。

 こぶに振られることなくスムーズに、かつスピードをコントロールして滑るには、左右の動き(ターン)が不可欠です。ダイナミック・ポジショニング・ターンでは足をいっさい動かしません。従来のターンでスピードコントロールをするのに使われている動作、例えばスキーを左右に振るピボットずらしや、テールを持ち上げてこぶの腹をこする縦ずらしといった動作をしないのです。

 足を動かすのではない方法で、縦の動きに合わせて横の動きをしなければなりません。しかも、体をフォールライン上でまっすぐゴールに向けたまま、細かく、深いこぶに合わせる動きです。その方法が、連休の合宿最終日に見つけたもう一つの鍵でした。