駐日イラン大使館(@IraninJapan)が25日、イランのブシェール原発敷地に飛翔体が着弾したことについて、Xに抗議する投稿をしました。

https://x.com/IraninJapan/status/2036664895861879204?s=20

 

その中で、カタールのシェイク・ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニー首相兼外相(H.E. Sheikh Mohammed bin Abdulrahman Al-Thani)(*1)がタッカー・カールソン氏(*2)とのインタビューで語った懸念を引用しています。

 

「我々の国民が使用する水は、海水淡水化プラントによって供給されています。我が国には川もなければ、水資源の備蓄もありません。もし供給が止まれば、わずか3日以内に国全体が完全な水不足に直面することになります。これはカタールだけでなく、クウェートやアラブ首長国連邦にとっても同じ現実です。

もしあの原子力施設(ブーシェフル)が標的となり、放射性物質が海水に混入すれば、これらの国々から水が失われます。水も、魚も、何もかもが失われ、事実上、生命の営みそのものが破壊されてしまうのです」

 

このインタビューは1年前の2025年3月7日ごろにタッカー・カールソン・ショー(*3)で配信され、YouTubeのチャンネル「Tucker Carlson」でも3月8日に公開されています。(無料視聴可)

 

YouTubeの映像では、32:15からの第9章 How Close Is Iran to Getting a Nuclear Weapon?が該当箇所です。

https://www.youtube.com/watch?v=kut47PODRSs&t=1935s

 

米国イスラエルのイラン攻撃の1年前のインタビューですが、今日の事態を予見するような内容が含まれています。

 

カタール首相の発言の要点

 

・イランの核施設は周辺地域にとって大きなリスクがあり、国際基準に則った平和利用でなければならない

・イランの核兵器開発について、その意図もないと明確に全面否定

・武力による解決策は中東地域全体に大きな被害をもたらす

・核施設から核物質が漏れた場合、カタールだけでなく湾岸諸国は3日で水が途絶える

・イラン政府は話し合いによる解決に前向きであり、外交による解決は可能

 

トランプ大統領就任直後の1年前のこの時点では、解決に向かっていたのに、イスラエルと米国の狂気の攻撃がすべてをぶち壊してしまいました。

 

*1 カタールは親米のサウジアラビアと反米のイランに挟まれた小国。「中東の仲介者」を自認し、「全方位・中立」を外交の中核としている。米軍基地を擁する親米国でありながら、イラン、トルコとも良好な関係を保ち、タリバンと米国の和平交渉、ハマスとイスラエルの人質解放交渉の仲介役ともなった。衛星テレビ局アルジャジーラの運営やスポーツの世界大会の開催でも知られ、紛争が続く中東で国際的な影響力を高めている。

LNG(液化天然ガス)の主要産出国だが、3月18日、イスラエルがイランのガス田を攻撃した報復として、イランがカタールの天然ガス施設を攻撃して壊滅的な被害を与えた際、アール・サーニー首相はXへの投稿で「我々は一度もあなた方の敵であったことはない。だが、今日あなた方が行ったことは到底受け入れられず、正当化もできない行為だ」と述べ、イランによるカタールへの攻撃はイスラエルの目標を「助け」、「達成」させるものであり、この地域を「狂気の戦争の深淵へと突き落とす」脅威になると述べた。(Forbes日本版2026.03.20 12:00)

 

*2 タッカー・カールソン(Tucker Carlson)は、米国で最も影響力のある保守派メディア・パーソナリティの一人。従来の共和党主流派(ネオコンなど)とは一線を画すMAGA(Make America Great Again)派(トランプ主義)の旗手で、共和党を、かつての「介入主義的なビジネス政党」から「孤立主義的な労働者のポピュリズム政党」へと作り替えるための理論的・扇動的リーダー役を担っている。外交では反介入主義・孤立主義の立場をとり、米国のウクライナ支援や対イラン戦争を痛烈に批判している。2023年に、当時全米視聴率1位だったFox Newsの番組『Tucker Carlson Tonight』を降板(事実上の解任)し、ネット配信を中心とする独立メディア「タッカー・カールソン・ネットワーク」(TCN)で各界の要人とのインタビューを配信している。最近は米国の政策がイスラエル・ロビーの影響を受けすぎていると批判。英誌『エコノミスト』編集長との対談で、編集長がガザ地区の現状について「イスラエルの将来にとってひどい状態になっていた」と発言したことに、「ガザの子どもたちが大勢死んでいるのに、なぜそれを言わずにイスラエルのことを言うのか」と猛然と反発する場面がSNSで拡散された。

 

以下、タッカー・カールソン・ショーのカタール首相インタビューの抄訳。

 

<イラン核開発のリスク>

カールソン:イランの核兵器開発に反対するのがカタール政府の方針ですね。近隣諸国も反対を表明しています。イランは核兵器の保有、製造にどれくらい近づいていますか。

 

カタール首相:核兵器はイランにかぎらずどの国でも有害です。地域周辺で核開発計画によってもたらされるのは、軍事的な懸念だけでなく、安全保障上の懸念、安全上の懸念があります。イランの原子力施設はカタールの対岸にあります。イランの首都のテヘランよりもカタールの首都のドーハに近いのです。水が汚染された場合のリスクはカタールと湾岸諸国に及びます。原子力施設を管理する明確な基準がなかったり、平和利用であることの保証がなかったりする場合、地域全体が大きなリスクにさらされることになります。

 

カールソン:どちらが正しくて、どちらが間違っているかを私は判断することができません。

 

カタール首相:私たちが望むのは、国際基準に準拠した核開発計画です。私たちは常にイランに対して、それらの基準が守られていることを確かめるために、私たちが国際原子力機関(IAEA)とともに作業することが必要であると話しています。

 

<イランの核兵器開発疑惑を否定>

カールソン:イランが核兵器に近づいているというニュースをよく見かけます。

 

カタール首相:これは私たちが聞いたこともなく、見たこともなく、経験したこともないことです。

イランの指導者との対話でも、最高指導者の対話でも、イランは決して核爆弾に向かうことはないというファトワ(宗教令)や宣言を出してきたと非常にはっきりと言いました。また、基本的にこれはイランの道徳的地位でもあります。ですから外交的解決に到達できることを望んでいます。地域の繁栄があり、制裁が解除され、核開発が平和的であり、地域全体に確信がもたらされます。そしてこれ(外交的解決)は地域の発展と繁栄の促進剤となるでしょう。

 

<イランの核施設が攻撃を受けた場合>

カールソン:ワシントンでは、ホワイトハウスと議会に対し、イランの核施設への攻撃、空爆への参加または承認に非常に強い圧力がかかっています。もしそうなったら、どのような結果になるでしょうか。

 

カタール首相:地域全体に広がる戦争の始まりになるだけだと思います。基本的に、どの国にも攻撃を受けて沈黙を守ることを期待できるでしょうか。必ず反応があります。その反応と報復は、地域内で起こるでしょう。まず第一に私たちの安全保障に影響を与え、アメリカのような国にとっても自国の安全保障に影響を与えるでしょう。多くの国がこの地域に大きな利害関係を持っています。軍事基地であろうと、イラン革命防衛隊(IRG)の施設であろうと、経済的な利益であろうと、教育施設であろうと、あらゆる利害関係が関係しています。

万が一この地域で何かが勃発すれば、これらの利害関係すべてが影響を受けるでしょう。私たちには、どうすることもできません。カタールは、この地域におけるいかなる軍事行動も支持しません。そして、アメリカとイランの間で外交的解決が実現するまで、私たちは決して諦めません。

 

<核汚染の恐怖>

カールソン:カタールの対岸にあるイランの核施設が爆発して核物質が海に流出したらどうなるでしょうか。

 

カタール首相:完全に汚染されるでしょう。私たちはこの国のリスク評価をしてきました。数年前に貯蔵施設を建設するまでは、国民が利用できるのは海水淡水化施設の水だけでした。川もなければ水のたくわえもありません。つまり、国全体の水が3日でかれるということです。貯水施設の建設後、その容量を増やし続けています。

これはカタールに限った話ではなく、クウェート、UAE、この地域全体の問題です。

 

カールソン:核施設が爆発して、核物質が流出したら、これらの国々は水がなくなるということですか。

 

カタール首相:水がなくなり、魚もいなくなり、すべてなくなって、生命がないようになります。だから、地図上のカタールの位置とこの地域とイランとの関係を話しているのです。多くの人はそのことを理解していません。

 

<イラン政府の態度>

カールソン:イラン政府が、核施設になんらかの国際査察を受け入れて、私たちがインターネットで毎日目にしているような、真偽はともかく、2週間もたたずに核爆弾を得るという状況にないことを世界に安心させるために、段階的縮小の交渉に応じると思いますか。

 

カタール首相:可能だと思います。実際、数日前、イラン当局の大統領、最高指導者、外相と外交的解決に向けて話し合ったところです。基本的に彼らは対話に前向きで、誰もが安心するレベルにたどりつくことに意欲的です。最も重要なのは、彼らが(アラブ)地域との関係修復を重視していることです。イランとあらゆる交渉局面で大きな進展がありそうです。よい機会だと信じています。