<入局43年、衆院の「法の職人」 安保法制論議を支えた師の教え>

毎日新聞2026/2/15 06:00(最終更新 2/15 06:00)

 

 

この記事には安倍元首相の悲願である集団的自衛権の行使を限定的にではあれ可能にするため、安全保障関連法(安保法制)の成立に向けて公明党が「憲法の穴」を探していたことが書かれています。

安保法案は2015年(平成27年)9月17日、参院の我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会で可決。参院本会議で9月19日に自民、公明などの賛成で可決して成立しました。

これに先立つ9月14日の参院特別委員会で行われた当時の公明党の山口那津男代表と安倍晋三首相、横畠裕介内閣法制局長官のやり取りは、安保法案に歯止めをかけるものでした。

*「歯止めをかける」は公明の言い分で、安保法制に反対する立場からは「成立の手助けをした」となります。

2025年11月7日衆院予算委員会での高市首相の台湾有事発言は、この経緯を踏まえる必要があります。

以下、11月7日の議事録より抜粋

 

 

岡田委員の質問に対する岩尾信行内閣法制局長官の答弁

------------------------------

○岩尾政府特別補佐人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、平成二十七年九月十四日、参議院、我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会におきまして、当時、横畠内閣法制局長官はこのように述べました。

  新三要件の下で認められる武力の行使は、これまでどおり、自衛隊法第八十八条に規定された我が国防衛のための必要最小限度の武力の行使にとどまるものであり、他国防衛の権利として観念される国際法上の集団的自衛権一般の行使を認めるものではなく、また、我が国防衛のための必要最小限度を超える、被害国を含めた他国にまで行って戦うなどといういわゆる海外での武力の行使を認めることになるといったものではございません。

また、さらに、

 いわゆるホルムズ海峡の事例のように、他国に対する武力攻撃それ自体によって国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことになるという例外的な場合が考えられるということは否定できませんが、実際に起こり得る事態というものを考えますと、存立危機事態に該当するのにかかわらず武力攻撃事態等に該当しないということはまずないのではないかと考えられる

と述べております。

 このように承知しておりますが、これらの答弁で述べられました見解に変わりはございません。

------------------------------

続いて高市首相の答弁

-----------------

○高市内閣総理大臣 法制局長官が述べられたとおり、平成二十七年九月十四日の委員会で当時の長官が述べられた見解について、変わりはございません。

-----------------

高市首相はここまでの答弁で、わが国の安保法制では

・わが国防衛のための必要最小限度の武力行使(自衛隊法第88条)にとどまる

・集団的自衛権一般の行使を認めるものではない

・海外での武力行使を認めるものではない

・存立危機事態に該当するのにもかかわらず武力攻撃事態等に該当しないうということはまずない

→わが国が武力攻撃を受けないかぎりは(または、明らかに武力攻撃を受ける危険がないかぎりは)存立危機事態に該当しない

と認めていました。

その後、問題になった高市首相の答弁

----------------

○高市内閣総理大臣 (略)例えば、台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。(略)それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。

----------------

(1)中国が台湾に対して武力行使をすること

(2)わが国が武力攻撃を受けること=存立危機事態

高市首相は直前に、わが国に対する武力攻撃(あるいはその明白な危険)がないかぎりは存立危機事態に該当しないと答弁していました。中国が台湾に対してどのような武力行使をしようと、日本を武力攻撃しなければ(またはその明白な危険がなければ)存立危機事態にはなりえません。

(1)と(2)がイコールであると考えると答弁した高市首相は、この2つの間に大きな飛躍があることを理解していないのでしょうか。

安倍元首相が集団的自衛権の行使という悲願を実現するために考えた「存立危機事態」という概念(隣家の火事が自宅に延焼しそうになったら消火に行かなければならないと模型を使って説明)は、法制化された時点で意味をなさなくなっていました(隣家が火事になっても自宅に延焼しなければ消火に行くことはできない)。

現在の日本の安保法制では、武力攻撃事態等にならなければ(日本が武力攻撃を受けなければ)、海外での武力行使はできません。

台湾有事が存立危機事態であるというためには、台湾有事に自衛隊が出動するためには、法律の改正が必要で、そのためには憲法の改正が必要です。

ぼくはその必要はないし、してはいけないと思います。