※11月1日のFacebook投稿を転載

 

(※この投稿は鈴木憲和農相批判ではなく、鈴木農相批判の批判です)

10月31日、農水省が「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」を発表しました。

https://www.maff.go.jp/.../beikok.../attach/pdf/index-22.pdf

第2 米穀の需給の見通しに関する事項

 1 令和6/7年の需要実績

 2 令和7/8年の需要見通し(推計値)

 3 令和7年産主食用米等の生産量の見通し(推計値)

 4 令和7/8年の需給見通し

毎日新聞に掲載された記事では<2026年産の主食用米の(略)生産量の目安は需要見通しの最大値に合わせ711万トンで、25年産の収穫見込みの748万トンと比べると減産になる。石破前政権が掲げたコメ「増産」を事実上撤回し、従来の「需要に応じた生産」に戻す高市政権の方針を反映した。(略)増産方針を表明してからわずか数カ月で見直し、市場に需給引き締めのメッセージを発信する形で、市販価格の高止まりが常態化しないか懸念される>と伝えています。

https://mainichi.jp/articles/20251101/ddm/002/020/116000c

「増産を撤回」とか「増産方針を見直し」と言っているのが理解できません。

農水省が発表した「基本指針」は、令和6年産米が主に流通する令和6年秋〜令和7年夏の需要実績(玄米711万トン)をもとに算出した令和7年産米の需要(令和7年秋〜令和8年夏)見通しが697万トン〜711万トンになることと、令和7年産米(令和7年秋〜令和8年夏に流通)の生産量の見通しが728万トン〜745万トンになることを示しているに過ぎません。

※記事に<25年産の収穫見込みの748万トン>とあるのが、何をもとにした数字なのかわかりません。745万トンの間違いではないでしょうか。

増産、減産を決めるのは農家です。農水省が発表する「基本指針」はそのための目安です。農家が米の作付を増やすか、減らすかの目安としてこの需給見通しが提供されています。令和7年産米の需要見通しが最大でも711万トンであるということを踏まえて、農家が令和8年産米の生産量を決めてくださいというのが、この「基本方針」が伝えているメッセージです。

米の生産量については政府は基本的に何もしません。米をどれだけ作るかを決めるのは農家です。政府は需給見通しを示すだけで、生産量の増減には関与しません。2018年からそうなりました。石破さんがかつて「農家が米を作りたいだけ作れるようにすべきだ」と言っていたことが、ライバルの安倍政権が進めたアベノミクスで実現したのです。

ぼくが会社を定年退職して実家に帰って本格的に米作りをするようになったのがたまたま減反政策が廃止された2018年です。

2018年に綾部市農業再生協議会から配布された「平成30年産 綾部市の水田農業に関するパンフレット」にはこう書かれています。

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○平成30年産から、行政(国や府、綾部市)による主食用米の生産数量目標配分は無くなります。

○今後は、あらかじめ自分の生産する米の販売可能数量を把握し、自主的に判断して作付面積を決定する必要があります。

○平成30年産の生産に関する情報をまとめましたので、参考にしてください。

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毎年、配布される「綾部市の水田情報に関するパンフレット」には、農水省が発表する「基本指針」の需給見通しと、京都府、綾部市の状況が示されています。「需要が見込める」というような表現はあっても、増産、減産を指示する表現はいっさいありません。パンフレットの表現を借りれば<平成30年に主食用米の生産数量目標配分がなくなって以降、農業者はあらかじめ自分の生産する米の販売可能数量を把握し、自主的に作付面積を決定することが必要となっています>。増産、減産は行政ではなく農家が決めるのが2018年からのシステムです。

そもそもが石破政権が米の増産にかじを切ったという前提が間違っています。確かに大臣がそう言い、ニュースでもそう伝えていましたが、具体的に掲げられた政策は大規模化、機械化などそれまでから行われていたことばかりで、政府が新たに何かをするということはありませんでした。生産量を農家が決めるという2018年以降のシステムを変えるという話もありませんでした。アベノミクスでは農地の集約化を進めるために農地バンクが創設されました。それがよいか悪いかは別にして、新たな政策が実行されましたが、石破政権では「米を増産する」と言っただけで新しい政策は何一つ実行されていません。

石破さんが米5kgの店頭価格について「3000円台でなければならない」と言ったことを鈴木憲和農相が「首相が発言すべきことではない」と批判したことが話題になっています。

https://news.yahoo.co.jp/.../201f8b10c4d787e3756d76c77d20...

まさに鈴木農相の言う通りだと思います。農業以外の産業で企業が需要があるとみれば増産し、需要がないとみれば減産するように、農家が市場の動向を見極めて生産量を決めるのが今のシステムです。農家が需要に見合う生産ができなければ価格が高騰し、需要を上回る生産をしてしまえば米が余って価格が下落します。首相には米の価格を決める能力も権限もありません。

鈴木農相は将来を見据えた農業政策を実行したいと言っているそうです。今のシステムがいいか悪いかも含めて、良質の米を安定的に生産、販売、購入できるあり方を考えてもらえるのではないかと期待しています。