15日は前日の全日本選手権大会に続いて、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)公認大会が開催されました。

 

 FIS公認大会での成績によって各選手が保有するFISポイントが決まります。今シーズンの2大会のポイントの平均がシーズンポイントとなって来シーズンのベースポイントに持ち越されます。1大会しか出場しなかった場合は、そのポイントの60%が来シーズンのベースポイントになるので、FIS公認大会である全日本選手権とFIS大会の両方でポイントを獲得しておく必要があります。

 

 今年のFIS大会の予選ラウンドは全日本選手権と同様、4人1組または3人1組で3回滑って、それぞれの順位点の合計点数が多い順に男子は上位8人が決勝ラウンドに進出する方式で行われました。

 

 ぼくは3回とも4人1組で滑ることになりました。まず第1回。スタートそのものは去年よりはうまくできるようになりましたが、最初のこぶを乗り越えるところから差が付き始め、でこぼこのスタートセクションを滑り終えたときには、他の3人は前方に滑り去っていました。

 

<今回の大会コースのレイアウト>

 

 ところが、競り合っていた3人のうちの1人が、スタートセクションの後の最初のバンクに入るところで転倒しました。ラッキー! 生まれて初めて、前の選手を抜けそうです。最初のバンクは右カーブ。右側のイン(内側)を突くか、左側のアウト(外側)から回り込むか。転倒した選手がすぐに立ち上がり、インからスケーティングして再スタートしそうなので、大事をとってアウトから大きく回り込みました。

 

 やったあ、生まれて初めての追い越しが成功しました。ところが、続く第2バンク、第3バンクを抜けて、その次のでこぼこが5つ並ぶ5連ロール(ウェーブ)に入るところで、後ろから人影が見えたと思ったら、あっさり抜き返されてしまいました。追い越すために回り込んだところに雪が掃き寄せられてたまっていたので、減速してしまっていたようです。

 

 転倒した選手に抜き返されるとは、なんという屈辱。しかも、ウェーブの吸収、加圧動作がぼくよりうまく、差がどんどん開いていきます。結局、先頭の2人と転倒した3人目の選手との差と同じくらいの大差を付けられて4着でゴールイン。いつもの4着よりも悔しい結果となりました。

 

 国際競技規則(ICR)によると、完全に停止した場合はDNF(不完走、途中棄権)となり、最終着よりも低い点数になりますが、コースの要所要所にいるレフリーは、転倒した選手がすぐに体勢を立て直して動きを止めずに滑り続けたので、完全停止とはみなさなかったようです。

 

 続く第2回。スタートグリップに左のストックのストラップが引っかかって、ストックが置き去りになってしまいました。初日の公開練習で同じようにストラップが引っかかったことがあり、ストラップが緩いと引っかかるので、しっかり締めておくようにアドバイスをもらったのですが、同じミスをしてしまいました。体は既にスタートゲートから飛び出しています。ストックを取りに引き返せば大きなタイムロスで、転倒した選手を抜くことさえできないでしょう。しかたがないので1本のストックを両手で握ってスタートセクションのでこぼこをなんとかこなしましたが、大差をつけられての4着でした。

 

 レース中にストックを落とした場合、失格になるのか心配でしたが、国際競技規則にはストックのことは何も書かれておらず、問題はなかったようです。わざとストックを落として後続の選手の妨害をした場合は違反行為になるでしょう。スキーは片方でも外れると、その時点でDNFになります。ただし、フィニッシュラインの手前など、片足でも安全に滑ることができると判断された場所で外れた場合は、片スキーでもゴールすれば完走になります。

 

 最後の第3回。泣いても笑っても今シーズンの公式戦はこれが最後。前日の全日本で優勝した高橋大成選手と同じ組になりました。高橋選手は2020年、スーパー大回転(SG)の全日本チャンピオン。昨年、スキークロスに彗星のごとく現れ、いきなりヨーロッパカップに参戦し、初めての全日本で9位。今シーズンもヨーロッパカップを転戦して、デビュー2年目で全日本チャンピオンになりました。トップ3がワールドカップ出場のために不在とはいえ、26歳にしてベテラン、若手の強豪を抑えての初優勝でした。

 

 ぼくは今回も大差を付けられて4着でゴールし、先にゴールして待っていた3人と健闘をたたえ合うグータッチ。予選ラウンドの3回とも4着で、最終リザルトは出走15人中15位でしたが、笑顔で今シーズンの戦いを終えることができました。

 

 2大会の公開練習とレース本番で、難しいコースを思う存分滑ることができて、課題が明確になりました。

 

(1)吸収と加圧

 スタートセクションの細かいでこぼこは、下り坂の加圧動作だけでなく、上り坂の吸収動作を大きく素速くしなければならないようです。こぶの頂点でタイミングを合わせて体をいかに素速く小さくできるかでしょうか。

 

 ウェーブも有力選手はアクセルをふかすように加速していきます。ぼくより脚力がないと思われる女子選手やジュニア選手も速いので、やはりタイミングを合わせた素速い動きができるかどうかが問題のようです。

 

(2)滑走速度

 転倒した選手に抜き返されたことで、全力で飛ばしているときのスピードがあまりにも遅いことが証明されました。クローチングがしっかり組めていないことが第一に考えられます。スキーのトップ側に体重をかけすぎて、前を押さえるようにして滑っているのも減速要因になっているかもしれません。大きなカーブで体を先に曲がる方向に向けず、スキーの方向と一致させたままでターンすることも心がけなければならないでしょう。

 

 細かい凹凸にスキーを同調させなければならないスタートセクションや、ハイスピードで進入するウェーブでは、素速い動きが必要です。年を取るとどうしても敏捷性が衰えます。シーズンの残り、大会での教訓を生かすことを念頭に練習するとともに、オフシーズンには敏捷性トレーニングにも取り組みたいと思います。

 

 24日、長野県の菅平高原ハーレスキーリゾートで、SAJ(全日本スキー連盟)主催により、無料のスキークロス体験会があり、日本代表コーチの指導を受けることができます。

http://www.ski-japan.or.jp/game/62174/