白馬八方尾根リーゼンスラローム大会が終わった後の23日~25日の3連休は、白馬に居残り、モーグルとスキークロスの猛特訓をしました。

 

 23日は濃霧で視界が悪い中、八方尾根のいつものゲレンデで、パトロールの許可をもらってエア練習。2時間余りでエア台が完成し、エアの前後にそれぞれ2本のネトロンパイプを立てて、ターンからエア台への進入と、着地後の直滑降からこぶのターンへの入り方の練習をしました。

 

 リーゼンスラローム大会第1日の雨で濡れたバーンが凍って急斜面のゲレンデは一面のアイスバーンです。滑って降りるとそれだけで体力を消耗してしまうので、ハイクアップしながら、スタートの直滑降→ターン→アプローチの直滑降→ジャンプ→着地→ランディングバーンの直滑降→ターンの練習をしました。

 

 翌24日も晴れていたのは朝のうちだけで、すぐに濃霧に覆われてしまい、終日、エア台の前後の練習。、霧の中のアイスバーンのこぶでけがをするのもばかばかしいので、ひたすらハイクアップしました。

 

 3連休の中日とあってスキー場はにぎわっているのに、ぼくが練習しているゲレンデにはほとんど人が来ません。孤独な修行のように、ああだこうだと試行錯誤しましたが、わかりかけているようで、わかっていなくて、満足のいくジャンプも、着地後のターンもできずじまいとなりました。

 

 23~25日は白馬乗鞍スキー場でSAJ公認B級のモーグル大会が開催されていました。定員オーバーで出場できませんでしたが、仮に出場していたとしても、いつものように第1エアの着地後のターンに入れず、完走者中の最下位に近い成績になっていたと思います。

 

 3連休最終日の25日は雪降り。前日までのモーグルとは打って変わって、白馬さのさかスキー場でスキークロスの無料体験レッスンに参加しました。主催は白馬村スキークラブ。講師はさのさかスキー場の常設クロスコースで大会を開いたり、レッスンをしたりしているSnowM(スノーム)代表の森山文彦さんと、長野県連コーチの塚田大介さん。

 

 森山さんはかつてヨーロッパカップなどのコンチネンタルカップ(大陸別選手権)を転戦していた現役のスキークロスレーサー。塚田大介さんはモーグル、アルペン、スキークロスで活躍したオールラウンドレーサー。2人とも昨年の全日本選手権で会って顔なじみです。

 

 緩斜面にウェーブやキッカーが設けられた会場には、クロスコースを滑ってみようというおじさん、おばさんや子どもたちが続々と集まり、コーチの説明を聞きながら、どんどん滑っていきます。

 

 ぼくがコースを滑って抱いた疑問は、最後のキッカーの手前で、大きく横に振られた2つの旗門でスキーが横滑りして失速しないようにするにはどうすればいいのか。2人のコーチに尋ねました。

 

 その答えは、最後から2つ目の旗門に近づいて急いで回ろうとせずに、ぎりぎりまでがまんして大きく回る。スキークロスのターンは、モーグルや大回転(GS)と違って、ダウンヒル(DH、滑降)やスーパー大回転(SG)のような高速系のターンなので、大きな弧を描いて深く回らないといけないということでした。

 

 具体的なターンの方法も教えてもらったのですが、それはここでは置いておいて、素人考えかもしれませんが、自分なりの理論的考察を述べることにします。

 

 物理学に入射角と反射角の法則というのがあります。鏡に斜めから当たった光線と鏡の間の角度と、反射する光線と鏡の間の角度は等しいということです。壁に斜めにボールをぶつけたとき、ボールが壁に当たった角度と、ボールが壁から跳ね返る角度は等しいということです。

 

 これは作用反作用の法則の変化系と考えることもできます。壁に正面からボールをぶつけたとき、ボールを強くぶつければぶつけるほど強く跳ね返ります。ボールの変形による衝撃の吸収や空気抵抗などを無視すれば、ボールが壁にぶつかる力(作用)と、ボールが壁から跳ね返る力(反作用)は同じです。

 

 ボールを斜めに壁にぶつけた場合、壁に正面から加わる力は、斜めになった分だけ少なくなります。壁に当たったボールは正面からの反発が少なくなった分だけ斜めになって跳ね返ります。こういう理由で入射角と反射角は等しくなるのです。

 

 モーグルではスキーヤーは常にフォールライン(スタートとゴールを最短で結ぶ直線)の上を移動しなければなりません。ターン弧はフォールラインに沿って波線を描きます。波線の出っ張ったところの手前半分がターンの後半(山回り)、その次の半分が次のターンの前半(谷回り)になります。

 

 波線の一番出っ張ったところにスキーが来たとき、スキーのトップはフォールラインと平行でゴール(谷方向)を向いていなければなりません。左右のこぶの大きさが違うとき、小さなこぶのターン弧は小さく、大きなこぶのターン弧は大きくして、常にスキーのトップを下に向けておかなければなりません。

 

 ところが、旗門のセットがSGに近い八方尾根リーゼンスラローム大会や、スキークロスでは、スキーヤーは体全体を左右に向けながら旗門を通過していきます。体が谷方向を向いたままで旗門を回り込もうとすると、スキーが横ずれして減速してしまいます。

 

 谷方向の直滑降からスキーの向きを90度変えて、真横にターンしなければならない場合について、図を描いて考えてみました。

 

 まず、直角のコーナーに入射角30度で進入した場合。スキーがコーナーに来たとき30度、横を向いています。このスキーをボールがぶつかる壁と考えると、反射角は30度で、ボールに相当するスキーヤーがスキーに跳ね返されて進もうとする方向(反射角の方向)と進みたい方向である真横とは30度の開きができます。さらにスキーヤーには、それまで進んで来た方向に進み続けようとする力(慣性力)と、谷方向への重力加速度がかかります。その力をスキーのエッジングで食い止めようとしても、スキーの向きはいっぺんには変わりません。

 

 スキーが描くターン弧に近いと考えられる円を描いてみると、スキーヤーは大きく下に落とされ、通りたいラインに復帰するにはかなり時間がかかることがわかります。

 

 次に入射角が45度になるようにスキーを向けた場合。反射角は45度で、進みたい方向である真横との開きは45度になります。ここに谷方向への慣性力と重力加速度が加わって、スキーヤーが真横に進むようになるのは、旗門よりかなり下になることがわかります。

 

 最後に入射角を60度にした場合。旗門までのふくらみが大きくなりますが、スキーヤーが真横に進むまでの時間はこの中では最も短くなります。カーレースで言うアウト・イン・アウトですね。コーナーで急に曲がろうとして急ハンドルを切ると、車が尻を振って横滑りやスピンをしてしまうので、あらかじめ膨らんでおいて、緩やかで大きなカーブを描くということです。

 

 

 ただし、旗門の手前で大きく膨らむには、それだけのコース幅が必要で、旗門の位置によっては山側に向かって斜面を登らなければならないこともあります。スキークロスでは、旗門の通過後に膨らむでけでなく、手前でも膨らみすぎると後続の選手に内側を突かれることにもなるそうなので、コーナーの角度、大きさ、バーンの傾きなどをよく見て、臨機応援にライン取りをしなければならないようです。

 

 この日のスキークロスレッスンでは、もう一つ、クロスで難しいと言われるスタートの方法を教えてもらいました。ぼくのスキークロス大会出場は昨年の全日本選手権と、今年の氷ノ山国際ドリームクロスだけですが、本番前の公開練習でけっこう滑りました。

 

 スタートはいつも失敗。全日本の公開練習で4人同時にスタートしたときも、ぼくがスタートセクションでまごまごしていて、前を見ると、他の3人ははるか前方の見えないところにまで滑り去っていました。いくら相手が歴戦の勇士ぞろいとはいえ、これでは話になりません。スタートの遅れをなんとかしたいと思っていたところだったので願ったりかなったりのレッスンでした。

 

 手作りのスタートゲートが設置され、両側にあるバーを握って、両腕を引いて勢いよくスタート。しかし失速。飛び出す力がうまく推進力につながっていないようです。

 

 ぼくが練習しているダイナミック・ポジショニング・ターン(DPT、ディプト)は、ヒマラヤの高山にいて、急斜面の岩場を猛スピードで駆け下りるユキヒョウの走りのコピーです。モ-グルのターンはユキヒョウが速歩またはゆっくり走っているときの動作、直滑降はユキヒョウが全力疾走するときの動作をコピーすればいいのではないかというのが、最近考えていることです。スキークロスのスタートはまだ練習を始めたばかりなのでよくわかっていませんが、ユキヒョウが獲物目がけて全力で駆け出すときの動作になるのかもしれません。

 

 このようなことを帰りの車中で考えているとき、モーグルの直滑降とターンの切り替えもユキヒョウのようにすればいいのではないかということを思いつきました。両方の前足を前に出しながら、両方の後足で地面を蹴って飛び出すのが直滑降のスタート。エアの着地後の直滑降からターンへの入りは、ユキヒョウのように全力疾走から、前足、後足を交互に動かす速歩に切り替えればいいのではないかということです。

 

 ユキヒョウの速歩の動きはとても複雑で、頭で考えてもなかなか理解できません。しかし、人間も同じ脊椎動物なので、ユキヒョウにできて人間にできないはずがありません(たぶん)。

 

 スキークロスのレッスンを受けたおかげで、永遠に不可能かと思われたディプトの直滑降とターンの切り替え、ターンと直滑降の切り替えという難問の解決に一筋の光明が差してきたように思います。

 

 さのさかのクロスコースでは今週末の3月2日、3日、初心者も参加できる大会が開催されます。

https://lit.link/snowm

 

 ぼくは同じ日に、菅平高原ハーレスキーリゾートで開催される長野県スキー連盟主催の初心者も参加できるスキークロス体験会(無料)で、3月13日~15日の全日本ならびにFISレースに向けた強化練習をしようと思います。

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