今回の練習を始めるにあたって設定した課題をクリアできたのか、振り返ってみたいと思います。(マニアックな技術論です。ぼくのダイナミック・ポジショニング・ターンに固有の問題もあるのであまり参考にならないかもしれません)

 

(1)どんなこぶでも滑れるようにすること

 

 エア台を作成した兎平新コースの上部から谷側に向けて、自然こぶの並びとは関係なく、仮想の一本の直線上を滑って下りるようにしました。兎平新コースの上部にはリフト降り場から中間部に向けて谷川のような自然こぶのラインが何本も斜めに伸びているので、仮想の一本線は幾筋もの谷川を斜めに横切ることになります。谷川を横切るときには、がくんと落ち込むので吸収動作の練習になります。谷川を横切った後は谷川と谷川の間の比較的フラットな部分を横切ります。こぶの間隔が狭いところは大きなターン弧でこぶを飛ばすのでは、クイックターンを入れながらすべてのこぶを乗り越えて滑っていきます。自分でラインを探しながらあくまで直線上を滑っていく練習です。

 

 しかし、これだけでは一列にきれいに並んだこぶが滑れるのかどうかわかりません。2日目の月曜になって兎平新コースの人が極端に少なくなったと思ったら、黒菱の緩斜面には人が集まっていました。広い緩斜面の半分ほどに、さまざまな大きさのこぶのラインが何本も縄のれんのように並んでいるのです。

 

 2日目、そのうちの1本を滑ってみました。横幅の広いこぶのラインなので、スキーを横に回しながらですが、ダイナミック・ポジショニング・ターンでこぶを乗り越えながら滑ることができました。今シーズン、ストックをつく位置がわかったことで、今まで乗り越えることができずに苦労していた横長のこぶを完全接雪しながらスムーズに乗り越えていくことができるようになりました。

 

 3日目は雨で気温が下がったので、前日までのざくざくの緩んだ雪が少し締まって、普通のスピードが出るバーンになりました。兎平の自然こぶも滑ってみました。横滑りを入れてできた大きなターン弧のこぶなので、横滑りした分だけこぶとこぶの間隔が空いています。スキーをまっすぐにして縦に滑ろうとすると接雪できず、接雪すればスキーが左右に振られるのに合わせて体も横に移動しがちです。今まで、ダイナミック・ポジショニング・ターンではこぶを乗り越えることができず、苦労していましたが、スキーが真横になるくらい大きく角度を変えながらも、体の位置は動かさずに真っすぐ滑り下りることができました。

 

 黒菱の急斜面のこぶも久しぶりに滑ってみました。スキーのトップがツイスターをしているように右に左にと動きますが、横滑りをすることなく、丸いターン弧を描きながら進んでいきました。

 

 リフトの近くにモーグルコースのような短いピッチのラインがあったので挑戦してみました。前日までの暑さで雪が溶けて深くえぐれたまま、気温が下がって締まっています。左右不均等で、右側はこぶとこぶの間が深く沈み込んでいるのに対し、左はほとんど掘れずに高くなっています。左が高く、右が低いので、理屈としては、左脚をより大きく曲げ、右脚は伸ばさないといけないことになりますが、どうしても右の深いところにはまって左の高いところで外に飛び出してしまいます。5本くらい滑りましたが、最初から最後まで通して滑ることはできませんでした。脚を曲げて腰を落とすタイミングに問題があるのかと思います。

 

 黒菱の緩斜面に縄のれんのように並んだこぶのラインの中に、モーグル向きの短いピッチのこぶがありました。スピードが出てくるとターンが間に合わずに弾かれがちです。1本目は中ほどで中断しましたが、2本目は最初から最後まで完璧にコントロールして滑ることができました。昨シーズンまでなら、スピードが上がったところで、ダンダンダンダンとこぶをたたくような滑りになっていたと思います。

 

 季節柄、アイスバーンはありませんでしたが、大きいこぶ、小さいこぶと、たいていのこぶは完全接雪で乗り越えていく自信がつきました。

 

(2)エア台への進入とエアの着地後のターンへの復帰

 

 結論を言うと、この課題は今回も宿題として残りました。雪が緩んだ2日目は、ジャンプの着地の衝撃も少なく、減速も簡単にできたので、着地後、すぐにターンに入ることができましたが、3日目、エア台が硬くなってジャンプが高くなると、着地の後、体が遅れるのか、どうしてもスキーが横を向いてしまいます。

 

 もっと問題なのは、キッカーに体がつぶされているのか、まともなジャンプになっていなくて、体の軸がきれいにできません。急斜面の「かっくん台」(下り坂と登り坂の間の水平部分が短く、横から見ると「V」字になっている台)ということはありますが、ハチ北の緩斜面のエア台でも同じように軸のとれないジャンプになっていので、着地に至るまでのジャンプそのものに原因がありそうです。

 

 軸のとれたジャンプをするには、最後のこぶを吸収してから、アプローチ(下り坂)、トランジション(水平部分)、キッカー(登り坂)のすべてをリップ(先端)に至るまでまんべんなく踏み続けなければなりません。それぞれの斜面に対して、体(重心とブーツを結ぶ直線)は常に垂直です。アプローチが下り30度であれば体は前傾30度、キッカーの飛び出し角度が30度であれば体は後傾30度です。大きく飛べば落差が5mにもなるような台で、後傾30度は正直言って怖いです。かといってキッカーで両スキーを「ハ」の字にしたりすると、確実に失敗ジャンプになります。

 

1)最後のこぶを吸収した後、アプローチ(下り坂)に入るときにどういう動作をするか

2)アプローチでどのような姿勢をとり、どのように体重をかけるか

3)トランジション(水平部分)、キッカー(登り坂)の姿勢をどうするか。

 

 3)はおそらくじっとしているだけです。問題は1)から2)にかけてどう動くかだと思います。ダイナミック・ポジショニング・ターンは普通のターンとすべての動作が逆になるので、アプローチの踏み方も普通のターンとは逆になりそうな気がします。来シーズンの課題です。

 

(3)スピードアップ

(4)減速の方法

 

 この二つの課題は表裏一体なのでまとめて書きます。

 

 スキーの速度を増すには、雪面に大きな力を加え続けなければなりません。地球上の物体は重力加速度(g)という一定の力で地球の中心に向かって引っ張られています。何も抵抗がなければ下に向かって進む速度は重力加速度を受けてどんどんと速くなっていきます。雪は摩擦抵抗が少ないので、じっとしていても下り坂であればだんだん速度が速くなっていきます。しかし、速くなりすぎると、スキーが進む方向を制御できなくなるので、スキーヤーは何らかの方法で減速することが必要です。

 

 減速には二つの方法があります。一つは進行方向の摩擦抵抗を増やす方法、もう一つは雪面に加える力を減らす方法です。

 

 一つ目の摩擦抵抗を増やす方法はわかりやすいと思います。スキーは縦には滑りやすいですが、横には滑りにくくなっています。進行方向に対してスキーを横に向けると速度を落とすことができます。

 

 もう一つの雪面に加わる力を減らす方法は「抜重」です。スキーの古典的な技術である抜重には、伸身抜重と屈身抜重の2種類があります。伸身抜重とは体を伸ばすことによってスキーを雪面から浮かせる技術、屈身抜重とは体を縮めることによってスキーを雪面から浮かせる技術です。

 

 伸身動作は脚を伸ばして雪面を蹴るのと同じ動きなので、雪面に加わる力が大きくなりそうです。屈身動作は雪面を踏み込むときと同じ動きなのでこれもまた雪面に加わる力が大きくなりそうです。

 

 脚を伸ばすにしても、曲げるにしても、どちらの動作もやり方次第で雪面に加わる力を大きくすることもあるし、小さくすることもあるということです。これは作用反作用の法則とともにダイナミック・ポジショニング・ターンの理論の核心になります。

 

 伸身抜重、屈身抜重によって雪面に加わる力を減らし、スキーの進む速度を落とすことができます。トランポリンのチェックという動作があります。トランポリンの選手は地上8mの高さのジャンプをしていても、最後は一瞬でぴたりとベッドの上で静止します。ベッドを踏み込んだ反作用で、ベッドによって体が持ち上げられる力を脚を曲げることによって一瞬で吸収しています。

 

 スキーでも同じように脚を素早く曲げ伸ばしすることによって一瞬ですが無重力状態を作り出し、スキーが雪面を押さえる力をゼロに近づけることができます。スキーは雪面を押しつける力の反作用で雪面から押し返されて進むので、雪面に加わる力が少なくなることによって減速するのです。

 

 いったん動き始めた物体は同じ速度で進み続けようとします(慣性力)。そこに重力加速度が加わって、だんだんと速度を増します。その力を脚の曲げ伸ばしによって一瞬で相殺します。

 

 兎平新コースの仮想の直線上を勢いをつけて滑っているとき、たまたまですが、1回の脚の曲げ伸ばしで、一瞬にしてほとんど止まるところまで減速したことがあります。今後は、この動作を自覚的に行えるように練習する必要があります。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンは完成しましたが、頭の中で考えただけではわからないこと、練習をして初めて気づくことが、まだまだありそうです。